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④① すれ違いの結果



そして以前のクリスティンの中では"ジョエルが自分を好きになる事は有り得ない"という絶対的な思い込みがあったのだ。

ジョエルは優しい友人だと言い聞かせていた。


(だからこれだけ言われても、恋愛対象にはなり得ないのね)


それに自分から好意を伝えるのは当たり前だったとしても、誰かに好きになってもらうことは前提ではなかった。


それはクリスティンの取り巻く環境や、今まで言われ続けた心ない言葉などが要因としてあったからだろう。


(自分を卑下していた結果のすれ違い……切ないわ)


ジョエルはずっと以前のクリスティンにアピールしていたと言ったが、クリスティンになってからは殆ど顔を合わせていなかった為、疑うばかりで気付くことの無かったジョエルの本当の気持ち。


難しく考え過ぎていただけで、純粋な少年が一人の少女に恋をしている単純な話であった。


(実は純粋だったなんて……可愛いところもあるのね)


クリスティンでなければ応援したいくらいだ。


確か以前のクリスティンはコーリーと仲良くなった舞踏会の後、次の舞踏会のお誘いをジョエルに貰ったのだ。

「パートナーとして僕と一緒に舞踏会に出てくれないか…」と。


しかしコーリーを自分の王子様と定めて、恋に落ちていたクリスティンは、何事もないようにアッサリとジョエルの申し出を断ったのだった。

「ごめんなさい、ジョエル。わたくし好きな人ができたの!!」


(まさか…その時クリスティンに他の男の影が見えたから、急いで舞踏会に誘ったってこと?)


公爵家の令息の誘いを、こうも簡単に断ってしまうのも、さすがクリスティンといったところか。

だからこそジョエルもクリスティンと会っている時は、身分関係なく気楽に過ごしていたのだろう。


コーリーとの出会いをキッカケにクリスティンの頭の中では、ジョエルの存在を忘れてしまうほどに常にコーリーに夢中だったのだ。


当たり前の話ではあるがコーリーと婚約した時から、ジョエルとクリスティンは二人きりで会うことはなくなった。

学園で会った時は普通に会話はしていたが関係は幼馴染のまま何も変わらなかった。


ずっと王子様が迎えに来てくれることに憧れていたクリスティン。

しかしクリスティンの王子様はジョエルでは無かった。

こんなに"王子様"という言葉が似合う人物は他に居ないのに…。


(切ないわね…)


それはジョエルの努力もあるのだろうがジョエルに対して何か特別なモノを感じていた。

それは公爵家の人間だからなのか…詳しくは謎のままだ。


同じ公爵家であるエンジェルも違った意味で高貴で特別感があったので、アインホルン家やコーリーが特段親しみやすいだけで、貴族とはそんなものなのかもしれない。


そして学園でコーリーと子爵令嬢が親密に寄り添う姿をクリスティンが何度か見かけた頃だっただろうか。


悲しみに顔を伏せているクリスティンの肩を掴んで、必死に何かを訴え掛けるジョエルの姿と、涙を浮かべながらも心配させないようにと笑いながら首を振るクリスティンの姿をぼんやりと思い出すことが出来た。

しかし、その時にジョエルが何を言っていたのかまでは分からない。


(もしかして婚約した後も?いや、そんな訳……)



「本当はずっと婚約して欲しかったんだ」


「婚約っ!?」


「けれど……僕ってほら、訳ありでしょう?」



その事が気になって、何度かジョエルに問いかけてはいるが頑なに答えることはなかった。

恐らく公爵家の隠し子だとか、どこかの王族の生き残りと言われている事を指しているのだろう。


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