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④⓪ 高嶺の花




「僕は君が好きだよ。ずっと昔から……」



ジョエルは真剣な表情で、此方を見ていた。

徐に手を取り、そっと指を絡めた。


また上手く誤魔化すと思っていたが観念したのかあっさりと気持ちを吐き出した。

「ずっと昔から」というワードが気になるところではあるが、それは子供の時からずっと、ということだろうか。



「この際だからハッキリ言わせてもらうよ」


「えぇ…」


「クリスティンは、誰のものにもなって欲しくない」


「……!!」


「僕以外を選ばないで…」



先程とは一転して熱烈にアピールするジョエルの姿を見て目を細めた。



「初めは僕の気持ちに気付かない振りをしているのかと思っていた。君は優しいから僕を傷付けないようにしているのかと……」


「………」


「クリスティンの好きなものを毎回持っていったり、毎月必ず会いに行っていたのに、僕を男として意識してくれないのは何故なのだろうって……ずっと気になってたけど怖くて聞けなかったんだ」


「………」


「だから君の大好きな絵本の王子様に近付けるように必死に努力した。けれど得られるのは君からの好意じゃなくて、他の令嬢達からの熱い視線ばかり…」



ジョエルの告白に思わず目を丸くした。

想像していた意図とは違い、ジョエルは至って普通にクリスティンにアピールしていただけだったようだ。


(深読みしすぎたのかしら…)



「でっ、でもわたくし、貴方にハッキリと"好き"だと言われた事はないわ」



しかしクリスティンの記憶の中にはハッキリと告白された覚えはない。

焦って問いかけると、ジョエルは大きな目を見開いて唖然としている。



「………嘘だろう?」


「???」


「勘弁してよ、クリスティン」


「……?」


「僕はずっと昔から君に"好きだ"と気持ちを伝えてたじゃないか!」


「へ……!?」


「クリスティンは全部笑って受け流していたけど……まさか、そんな」


「そう、でしたっけ?」


「何も伝わっていないなんて…!」


「ご、ごめんなさい…!昔の事はあまり記憶になくて。オホホホ、何でかしら」


「……」



ジョエルから送られる視線が痛い。


どうやら一歩踏み込んで来ないのは、以前のクリスティンの対応が原因だったようだ。

昔の記憶を一生懸命絞り出す。


『ねぇ、クリスティン…君の事が気になってるんだ』

『そうなの?何でも答えるわ!その代わり体重以外にしてね』


『クリスティン、君が好きだよ』

『ありがとう、ジョエル…!こんなわたくしにも優しくしてくれて』


『あの男は見る目が無いんだよ!僕なら絶対にそんな思いをさせないのに』

『気を遣ってくれてありがとう!わたくしなら大丈夫!ジョエルはかっこいいんだから、わたくしなんかと一緒にいたら、折角のチャンスを逃しちゃうわよ?』


『僕がこの絵本の王子様みたいになったら、君は僕の事好きになってくれるのかな…』

『ジョエルはそのままでもとっても素敵よ!自信を持って!』



(クリスティン……恐るべし)


確かに昔から好きだと伝えていたのに、軽く受け流され続けたら何も言えなくなる。

ジョエルの心も捻くれて、ポキッと折れてしまうことだろう。

思わず同情してしまう。


(ジョエル……なんて不憫なの)


これだけ熱烈な言葉に靡かないクリスティンも、ある意味すごい。


(初めから自分とは釣り合わないって決め付けていたのかしら)


ジョエルは幼馴染のような存在ではあったが、以前のクリスティンにとっては手の届かない別のところに住んでいる人だったのだろうか。


もしかしたら「こんな私が」「私なんか」と一線を張っていたのかもしれない。


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