③⑦ 親しい二人
コーリーはクリスティン同様、見た目も中身も大きな変化を遂げている。
自分に自信がなく人の顔色を伺い、常に縮こまっていたコーリーは、ハッキリと自分の意見を言えるようになり、笑顔が輝く爽やかな好青年に生まれ変わった。
コーリーが店に出れば、ドレスを選んで欲しいと貴婦人達が群がる程の人気振りである。
以前はコーリーがハイラーに張り合っていたことで常にギスギスしていた空気も、コーリーが変わるにつれて自然となくなったそうだ。
「兄に追いつきたい」という焦った気持ちもなくなり、今はハイラーと違った部分を伸ばしている為、互いを尊重し合える良い関係を築けているようだ。
コーリーの幼馴染であるアリアもさぞ驚き、自分の発言に後悔しているのかと思いきや、見た目も中身も大きく変わったコーリーに対して「今の貴方なら婚約者候補にしてあげてもいいわよ」と上から目線で言い放ったそうだ。
しかしサラリと笑顔で躱してから「僕にはもう将来を共にしたい大切な人が居るから、君との結婚なんて絶対に考えられないよ!ごめんね」と爽やかに答えたらしい。
その時のアリアの驚いた顔が忘れられないと少し悪い顔で言っていた。
それを聞いて同じく少し悪い顔で、アリアに対してざまぁみろの気持ちを込めて鼻で笑ってやったのだった。
恐らくジョエルを手に入れられなかった時のキープにでもしようと思ったコーリーにアッサリと振られて、アリアもビックリしたことだろう。
そしてアリアはジョエルを射止めようと必死に己を磨いているらしい。
ヴェーバー伯爵家全体でアリアを推して、ルカーナ公爵家に媚を売っているそうだ。
そんなジョエルは柔かな笑顔を浮かべて目の前に座っている。
コーリーとの親密な様子を見て、ジョエルはどんな反応を示すのだろうか。
(気になるところね…)
「失礼しました!コーリー・オクターバと申します」
「ああ、オクターバ商会の。父も母もお世話になってるよ。ジョエル・ルカーナだ」
「……!此方こそいつも有難うございます!ジョエル様!ルカーナ公爵と公爵夫人には…っ」
「ここでは堅苦しいのは無しにしよう。コーリー」
「はい、ですが…!」
「それよりもクリスティンに何か急ぎの用があるのではなかったかな?僕の事は気にしなくてもいいから話してくれ」
「申し訳ありません、ジョエル様…!ありがとうございます」
「ありがとう、ジョエル」
コーリーは手元の資料を広げて、隣へと肩を寄せる。
「この生地がどうしても今日中でないと卸せなくて」
「あら、素敵ね!」
「良いレース生地がなくて悩んでるって言っていたでしょう?」
「覚えていてくれたのね…!」
「クリスティンの為だからね」
「ありがとう、コーリー!助かるわ」
「色が数種類あるんだ。どれにする?」
「うーん、そうね……コレとコレが気になるわ」
「そう言うと思ってサンプル持ってきたんだ」
「……本当に!?流石だわ、コーリー」
「ふふ、そうだろう?存分に敬ってくれ」
「あはは、コーリーったら!」
親しげに話す二人を見て、ジョエルは静かにカップを持ち上げる。
(……特に変化なし、か)
しかしクリスティンはこの時、知るよしもなかった。
ジョエルがクリスティンとコーリーをどんな目で見ていたのかを…。
「ふぅ、良かった…これで大丈夫そうだ」
「そうね!」
「急ぎだったから居ても立っても居られなくて…!」
「ありがとう、コーリー!お陰で助かったわ」
大体の方向が決まった為、二人が息を吐き出してから顔を上げると…。
「ご、ごめん…クリスティン」
唇が触れてしまいそうな距離にコーリーの頬が赤く染まる。




