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③⑤ 自分の良さ


「そ、そんなの…無理だよ。どんなに努力しても兄さんには敵わないんだ」


「そうかしら?」


「……何度も自分を変えようとした。でも何も変われない。僕は何もできないままだ」


「ねぇコーリー、オクターバ侯爵家の者は必ず服作りで勝負しなくちゃいけないの?」


「そういう訳ではないよ。父は裏方だけど、母は表で活躍してるし…」


「なら、大丈夫そうね」



ニヤリと笑いながら頷いているのを見て、コーリーが不思議そうに首を傾げる。

何が大丈夫なのか理解出来ないようだ。



「それを聞いて安心したわ」


「安心って…クリスティン、それはどういう事?」


「今から、努力の方向性と頑張り方を変えましょうか!!」


「え……!?」



コーリーはポカンと口を開けたまま動けなくなってしまった。

そんなコーリーに説明するように口を開いた。



「貴方のお兄様の得意な武器と、コーリーが持つ武器は全く別のものかもしれないわ」


「僕の……武器?」


「例えば、魔法が得意な魔法使いが剣を使って強い剣士に勝とうとしているわ!コーリー、どう思う?」


「どうって……何故、魔法使いは魔法を使わないの?強い剣士に剣で敵うわけないだろう?」


「でも魔法使いは必死に剣を握り、剣だけで勝負をしようとしている……そして自分は何もできないって落ち込んでるの。剣士には何をしても敵わないって」


「まさか、それって……もしかして!!」


「そう!魔法使いは自分の得意な魔法を使って剣士に戦いを挑めばいいの…単純な話でしょう?」


「……!!」


「わざわざ相手の土俵に乗り込んで勝負する必要なんてないわ!コーリーはコーリーの得意な武器で勝負をしましょう?」


「ドヒョウ…?」


「……ゴッホン!つまりね、相手が得意な部分と比べるよりもコーリーの良い部分を存分に引き出して伸ばしていきましょう‥ということよ!」



つまり、コーリーはずっとハイラーの出来る事、得意な事と同じ事をして比べていた。

ハイラーが得意なことならば優位に立てるのは当たり前ではないか。

いくら努力したとしても追いつけるかどうかは分からない。


コーリーはハイラーの良い部分と自分の持っている能力を比べて、出来ないと決めつけていたのだ。

しかし、それだけで自分の才能の全てを決めてしまうのは早計である。



「コーリーの得意なことは何かしら?」


「得意かどうかは分かりませんが……色や生地の組み合わせや、体型にあったドレスを選んだりするのは上手いみたいで、母によく褒められますけど…」


「それを知っていたのに、今までは上手く伝える事が出来なかったのね」


「は、はい…そうなんです!会話に苦手意識があったので」


「でも、今は違うわよね?」


「クリスティンのお陰で、以前よりずっと人と話すのが好きになったよ」


「こんなに短い期間で、貴方は成長出来たのね」


「……っ」


「ならコーリーは裏方ではなく、オクターバ侯爵夫人のように表舞台で活躍した方が良さそうね。それはお兄様とは違う貴方だけの、貴方しか持っていない武器になるはずよ!」


「ぁ……」


「それに加えて服作りも出来るのだから、もう最高じゃない!」



それを伝えるとコーリーは目を丸くして此方を見ていた。

そして安心したように笑顔を浮かべた。



「そう、だね…!そんな事を言ってくれたのはクリスティンが初めてだよ」


「えぇ、そうね!わたくしを存分に敬いなさい」


「ははっ!そんな事を言われたのも初めてだ」


「自分の持っている力を信じてあげましょう…?素晴らしい才能を自分で潰してしまうのは勿体無いわ!」


「…クリスティン」


「まずは、ありのままの自分を受け入れて頂戴。悪いところばかり見ていたら前に進めないわ」


「……!」


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