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②⑥ 大爆発


「さぁ、これに思い切り自分の気持ちと、クソ野郎共に言われたことを全てぶち撒けて下さいませ!」


「「「……」」」


「遠慮はいりませんわ…!ここに吐き出してスッキリ爽快ッ!ぜぇーんぶ書いて下さいな」



そう言ったのを合図に、抜け殻のようなエラとトビアスの手がゆっくりと動き出す。

すると徐々に書くスピードが速まっていく。

背後にメラメラと炎が燃え上がっているように見えるのは気のせいだろうか。


特にエラの動きは別格であった。


(流石だわ……お母様)


万年筆が折れそうな程に、ガリガリと力と憎しみが籠った音が聞こえて来る。


夢中で机に向かうエラとトビアスを見て、安心したように息を吐き出した。

紙がいっぱいになるまで無心に書き込んでいる。


(これなら次の段階にも問題なく進めそうね)


この二人については心配ないだろう。



「クリスティン、書けたよ」


「ありがとうございます、お父様」


「はい、クリスティン!!私、考えなくちゃいけない事があるから、もう休むわね」


「おつかれさまでした!今日はゆっくり休んでくださいませ、お母様、お父様」


「おやすみなさいね…クリスティン、今日はありがとう」



エラとトビアスは部屋へと戻る為に立ち上がった。

そして腕を組んで仲良さげに歩いているかと思いきや徐に振り返った。

二人とも目が血走っている。

どうやら溢れ出しそうな苛立ちを我慢しているようだ。



「今日は食欲がないから夜食はいい……部屋に戻って少し話そうか、エラ」


「えぇ、そうですわね……私も寝る前の蜂蜜たっぷりミルクはいらないわ」



(だ、旦那様が夜食を食べないなんて)

(お、奥様が蜂蜜たっぷりミルクを飲まないなんて)


口元を押さえて震える侍女達の心の声が此処まで聞こえて来る。

侍女達は直様シェフに伝える為に走り出した。


部屋にはオスカーが残っていた。


頭に詰め込んだ情報を無心に書き込んでいた。

そんな時、オスカーの手がぴたりと止まる。



「姉上……!」


「……」


「ーーー姉上ッ!!」


「あらオスカー、書き終わったら部屋に戻っていいわよ?」


「……」


「……?あぁ、安心して。貴方の夜食は用意していると思うわよ」


「違う…そうじゃない」


「なら、どうしたの?手早く話して頂戴、時間は有限なの」


「ーーーあのさッ、こんな事して何の意味があるんだよ!!」



オスカーはイライラしているのか、万年筆を握る手に力が篭り、震えている。


どうやら今までの不満が大爆発しているようだ。

逆に、よく今日まで何も言わずに耐えていたな…と感心していた。


だが、オスカーがいつかはこうなることは分かっていた。

予測済みなのである。


これだけ環境の変化があったのにオスカーだけは頑なに動こうとはしなかった。

そして、その事が結果にも態度にも表れている。


基本的に、自分が興味がある事以外は気にしないというスタンスでいるようだ。

今日は流石にハートが傷ついたようで、思い通りにいかない苛立ちや、何も変わらない事への悔しさや八つ当たりも含まれているのかもしれない。


しかし、いくら頭で想像しても憎き相手は勝手に滅びない。

妄想だけで強くなれることもないし、イケメンになれる訳でもない。


(……"自分はこのままでいい"なんて、いつまで意地を張っていられるかしら?)


珍しく思い悩むオスカーをこのまま放置して成長を促してもいいが、変な方向に開き直られてしまえばエラやトビアスに悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。

努力が無駄になる事と、皆のやる気が挫かれることだけは避けたいと思っていた。


(ついに……奥の手を出す日が来たようね)



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