②⑤ 燃え尽きた
やはり心の底では変わりたいと願っていたようだ。
そしてコーリーとアインホルン邸に来てもらうように、約束を交わしてから別れたのだった。
もう一つの大きな任務を無事終える事が出来て安心していた。
こうしてアインホルン家の怒涛の舞踏会は幕を閉じた。
ルンルンと浮かれた気持ちで馬車に乗り込んだ。
アインホルン家の役に立ってくれそうな人達と繋がりを作り、見返すべき相手にも狙いを定めたからだ。
何となくではあるが、この国の置かれている状況も把握できた。
この舞踏会は素晴らしい結果をもたらしてくれた。
此方の手を取るかどうかは相手次第ではあるが、良い結果をもたらしてくれると信じて待つだけだ。
エンジェルは警戒して、すぐに動かないだろう。
しかしヘルマン公爵夫人と接触できたのも、記憶に残れたのも大きい。
公爵夫人の影響を強く受けているエンジェルならば、クリスティンの元を訪れる可能性は高い。
もし来なくとも、まだチャンスはあるので諦めたりはしない。
ジョエルとは程よく距離を取りつつ、煩いイワンを追い払う事にも成功した。
噂が落ち着くまでは、暫く何かしてくることはないだろう。
とりあえず邪魔者は排除して、利用できるものは全て利用する。
最後まで舞踏会に残った甲斐があったというものだ。
沢山の情報を早く家に帰って書き込みたくて、うずうずしていた。
(大収穫よ!!あとは相手の出方次第ね)
楽しそうにしている此方に反してトビアス、エラ、オスカーは馬車に寄りかかりながら真っ白に力尽きていた。
馬車が揺れるたびにゴンゴンと頭をぶつけているが、お構いなしである。
恐らく、予想通り精神的に追い詰められていることだろう。
今まで逃げてばかりで無意識に避けていた部分が浮き彫りになり、辛い現実に直面した。
抱えた問題に真っ直ぐに立ち向かった為、心は傷付いてささくれていることだろう。
視線を逸らしていた痛い部分を突かれ、嬲られて、逃げられもせずに、ただ受け入れるのは相当神経を擦り減らしたはずだ。
けれど、それくらい劇薬でなければ溜め込んだ脂肪には効果がない。
今から人生をひっくり返すような事を起こすのだから、多少の痛みは必要である。
どこか上の空で、窓の外を見ているオスカーは口端から涎を垂らしている。
エラは別れた後に一体何があったのか、ずっと俯いてブツブツと何かを呟いている。
トビアスに至っては目が死んでいて無の境地である。
(ここまで落ちてしまえば、もう何も怖いものなんて無いわ!!)
そんな放心状態のアインホルン家に笑みを深めたのだった。
邸に着いたのを確認して、いつまでもボーっとして動こうとしない家族達を順々に馬車から下ろしていく。
一旦、ダイニングテーブルに集まってもらい、服の隙間に詰め込んだタオルを取り出してから侍女に渡すと、侍従が直様、紙と万年筆を渡す。
そして椅子に座っているエラやトビアス、オスカーに配っていく。
アインホルン邸で働く人たちは大変優秀……になったのである。
信頼を勝ち取る為に随分と苦労させられた。
だらけきっていた屋敷の中にも容赦なくメスを入れた。
そのお陰か、人数は減ったが優秀な人材が手元に残り万々歳である。
エラも仕事に関しては得意だが、家のことは任せきりだった為、人ばかりが増えて無駄な部分が多かったのだ。
余計なものを削り、残った人達の待遇を手厚くする事でやる気もアップ。
おかげで屋敷の中は、今までにないくらいに活気づいている。




