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①⑤ 同じ道を



先程からどこかで聞いたことのある名前だと思っていたが、エンジェルを見てハッとする。


エンジェル・ヘルマン


ヘルマン公爵の一人娘であるエンジェル。

父は国を支える大臣で、母は社交界の女帝である。


(松島さんが言っていた悪役令嬢みたいだわ)


最近流行っていて面白いから読んでみなよ、とオススメされた事を思い出す。


エンジェルというよりはクイーンという言葉が似合うゴージャスな美少女である。

兎に角そのグルングルンに巻いた異次元のような髪の毛が気になるところだ。


(ヘアスプレーなんてないわよね…?どういう仕組みなのかしら、あの髪の毛!!)


そしてエンジェルの髪を見ていると何か思い出せそうな気がして暫く考え込んでいた。


クリスティンの婚約破棄された時の記憶の前後は、後悔や悲しみの感情に溢れていて少々思い出し辛いのだ。

そして記憶を辿っていると食べ物ばかりで胃が痛くなる。


エンジェルの「ちょっと貴女大丈夫…?」という言葉に適当に頷いて唸っていると、徐々に蘇る記憶。


(学園にいた時に婚約破棄された令嬢がもう一人いたわ…!)


それがエンジェル・ヘルマンだったはずだ。

確かエンジェルはあのふんぞり返っている馬鹿そうな王太子、ローレンスと婚約していた。


婚約者に婚約破棄されて憔悴しきっていたクリスティンは、エンジェルどころではなかったが、クリスティンが婚約破棄された後に、ローレンスに婚約破棄されたのではなかっただろうか。


エンジェルの婚約破棄は学園中に広まって、ローレンスの動向が注目されていた為、クリスティンが婚約破棄された事は大した噂にもならずに呆気なく忘れ去られてしまったのだ。


そして婚約破棄の理由はクリスティンと同じような感じで、どこぞの子爵令嬢にローレンスを取られてしまったのではなかったか。


学園に行かなくなってしまったクリスティンは詳しい事情は知らないままだったが国中の話題だったらしく「だから誰も姉上の事気にしてないし、どうでもいいと思っているから早く学園に行こうよ」とオスカーに励まされたのだ。


オスカーはクリスティンを元気付けているつもりなのだろうが、微妙に傷付くという現象が心の中で起きたのだった。


そして、今まで我儘だったローレンスが心を入れ替えて、良き王になろうと努力していこうと決意した為、国王と王妃が喜んでいるのだと、引きこもっていたクリスティンの部屋に来たトビアスが教えてくれた。


そしてエンジェルは婚約破棄されたことに耐えられずに、ショックを受けて服毒自殺を謀ったとかどうとかいう噂はエラ経由でクリスティンの元にも届いていた。


ある意味、どこぞの泥棒猫に婚約者を取られた者同士、エンジェルに勝手に親近感を抱いていたのを覚えている。


(エンジェル・ヘルマン、そしてヘルマン公爵夫人……なかなか良い繋がりだわ!ここでエンジェルと関われたのは運が良かったかもしれない)


以前のクリスティンとエンジェルに共通点は特に無かった。

この様子を見る限り、クリスティンとは全く違う道を歩んでいた事だろう。


けれど、行き着く先は全く同じ。

婚約者に振られて、悲しき道を歩んでいくのだ。


(それならば……)



「エンジェル様、少々宜しいですか?」


「…な、なによ?」


「大切なお話があるのです。少しお耳を貸していただけますか…?」



スススっと移動して、エンジェルにしか聞こえないように耳打ちする。



「貴女……気を付けないと将来、破滅するわよ?」




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