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① とある令嬢



「クリスティン嬢、やはり君との婚約はお断りするよ」


「僕が君と…?アハハハ、冗談だろう!」


「俺に触れるな…この縁談はなかった事にしてくれ」



昔から掛けられてきた言葉は酷いものばかりだった。


それでも前向きでいられたのは、元々ポジティブだったのもあるかもしれないが、いつか自分だけの王子様が迎えに来てくれると信じていたからだ。


クリスティンは、その膨よかすぎる見た目のせいで12歳になるのにも関わらず、一向に婚約者ができなかった。

アインホルン家は比較的、というよりはかなり裕福だった為、度々縁談は来るのだが顔合わせをするとすぐに断りの連絡が来た。


毎回振られて落ち込むクリスティンに、友達であるジョエルは優しい言葉で励ましてくれた。

定期的にお土産を持って会いに来てくれる。

ジョエルとは小さな頃からの付き合いで、幼馴染のようなものだった。



「クリスティンにはクリスティンの良さがあるから」


「ありがとう、ジョエル」



ジョエルはルカーナ公爵家の養子だった。

容姿端麗、運動神経抜群、頭脳明晰とまるで王子様のようである。

兎に角ジョエルに近付きたい、婚約者になりたいと令嬢達から大人気だそうだ。

そんな噂は社交界に余り出ないクリスティンの元にも届いていた。





そんなクリスティンが十三歳の時。

「ありのままの姿が素敵だよ」と言ってくれる婚約者が出来たのだ。


それが侯爵家のコーリー・オクターバだった。


十二歳の時の毎年開催される王家主催の舞踏会でコーリーとクリスティンは出会った。

心優しいコーリーに直ぐに惹かれていった。


クリスティンにとって、コーリーは唯一無二の王子様だった。

念願の婚約者に浮かれていた。

毎日が幸せで、コーリーのことを考えるだけで楽しくて仕方なかった。


二人は順調に愛を育んでいた。




ーーそんな時だった。




十六歳の時に学園に入学した。

周囲には、細くて自分を徹底的に磨き上げた可愛く美しい令嬢達ばかりだった。


一方、クリスティンは一番大きなサイズの制服など到底入らず、オーダーサイズの制服を着ていた。

どんなコルセットも意味をなさなかった。


他の令嬢達との違いをこれでもかと違いを見せつけられたクリスティンは、流石にショックを受けた。

アインホルン家は家族全員が立派な体型をしていた為、学園に行くまでは、そこまで自分の体型に疑問は持たなかったのだ。


そして婚約者のコーリーの為に痩せて綺麗になろうとした。

ダイエットを決意してから、食事制限や今まで一度もした事がない運動に挑戦した。


けれど中々、上手くいかなかった。


ご飯を食べないように、甘い物を食べないようにと気をつけていた。

けれど授業中にはお腹の音が大合唱。

夜中に目を覚まして気付いたら冷蔵庫の前で食べ物を口に運んでいたなんて事が二日に一回は起きたのだ。


気がつくと食べ物を凝視して、食べ物の事ばかり考えてしまう。

そして美味しそうな料理に我慢が出来なくなり、すぐに挫折してしまう。


一口食べたら、もう止まらなくなってしまうのだ。


(きっとコーリーなら大丈夫よ…!ありのままのわたくしが好きだって言って下さったもの!こんな事でわたくしを捨てたりしない筈だわ!)


けれどそんなクリスティンの想いは、コーリーに届く事はなかった。


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