森の守護神
「その話を詳しく教えてくれませんか?」
「実は私も詳しく知らないのよ」
僕は肩を落としてガッカリする。でも、本当にここは死後の世界では無く、存在する世界なのだと確信した。
とは言え、理解は出来ない。
「もし、僕が言い伝えの人と同じ所から来たとして、僕は何をやればいいんだろう?」
とカイナに聞く。
「私はしばらく人の世界も闇の世界も行ってないから、分からないわ。もしかしてお父さんなら分かるかも知れないわよ」
するとモイナが「マコト、今日も泊まっていきなよ。すぐに行かなくてもいいんでしょ?」
確かに直ぐに出掛ける必要は無いが・・・
するとカイナが
「私達はマコトと話す事が出来るけど、人の世界では話す事は出来ないわよ。モイナは人の世界から来たから、モイナに言葉を教えてもらってから森を出ていけばいいんじゃない?」
「人の世界では話せないんですか?」
「もちろんよ。彼達の中で魔法を使える人が少しいるけど、しゃべらないで会話が出来る人は、本当に少ないわよ。それに変な言葉を使う人を見かけたら、相手にされないわよ。人は同じ人種で、同じ言葉を使わない人には、ものすごく冷たいわよ。」
何となく分かる気がする。僕も外国人に話しかけられても、つい無視してしまう。
特に弱い種族だと余計にその傾向は強い。
「でも何で皆は僕と話す事ができるんですか?」
「私とアイナは神だから、何でも知っているわ。」
「モイナは?」
「モイナは特殊なのよ。だから人の世界から追放されたのよ。」
「追放?いつ追放されたんですか?」
「まだ、自分で歩く事が出来ないぐらい小さい時よ」
いくらなんでも酷い。ここでは警察みたいな組織は無いのだろうか?
モイナを見る限り、この星でも人と呼ばれている者は、僕と同じ容姿だと推測できる。
行動は、ちょっと違うのだが
「そうか、ではしばらくここに居ようかな?」
するとモイナが笑顔で
「うん。モイナが言葉教えてあげる。だからしばらくここに居て」
無邪気に喜ぶ姿を見て、娘が小さい頃を思い出す。子供ならではの嘘の無い笑顔だった。
ただ一つ気になる事がある。
「ねえカイナ?僕を食べたりしない?」
何となく表情が強張った感じがした
「あらいやだ、私は人を食べたりしないわよ。だって神様なんですから」
疑った目でカイナを凝視する。
慌てて昨日の事を正当化する
「もうマコトは疑い深いのね。人を食べたりした事なんて無いわよ」
いやいや、あれは確実に僕を食べようとしていた。
僕はカイナを凝視し続ける。
「大丈夫よ、後でアイナが帰ってきたらマコトを襲えない誓いをするから」
誓うだけだと安心出来ない。
「もう心配性なのね。モイナ見せてあげて」
?
モイナが皮の服を脱いだ。
「えっモイナ、ダメだよ」
僕は慌てて手で目を覆った。
するとカイナが「目を瞑ったら証拠が分からないでしょ!」
証拠?
僕は押さえていた手をどかして、モイナを見た。
するとモイナは背中を向けている。
「あれ?あれ何だろう?」
モイナの背中の真ん中に、直径10cmぐらいの黒い円が書かれている。
やけにおおきい「ほくろ」だな。
カイナが説明する。
「背中の真ん中にある紋章は、私達、神の言葉がぎっしり書かれているのよ。黒いから人の目では見えないわ。」
「これがあるとどうなるんですか?」
「あら、まだ疑ってるの?しょうがないわね」
カイナがアイナの様に、口から炎を近くの木に向かって放った。
木は一気に燃えて、木の原型は跡形も無くなった。
陶器を作る程の炎だ。1000℃は超えているのだろう。
するとカイナがモイナの方を向き、横目で僕に
「じゃあ見てなさいね。」
すると、今度は背中を向けてるモイナに向かって炎を放つ。
えっ
「何やってんだよ!」
?
炎がモイナを避けていく。
「これって?」
「これで納得した?神の誓いを刻まれた者には、動物でも植物でも傷つける事は出来ないのよ」
昨日から信じられない事ばかりだ。
何故そうなるのか不思議だが、カイナが言う神の誓いが刻まれれば、身の心配は無くなる事は理解できた。
モイナは脱いだ服を再び着て、
「マコト、これで心配は無くなった?」
そもそもこの世界に居る事が心配なのだが、この森にいる事の心配は無くなった。
「うん。」
あと、もう一つ疑問がある。
「ねえ、カイナ。この森にはアイナとカイナ以外に誰も居ないの?」
ここから1日歩いた所に大きな川がある。その川の向こう岸の森には、同じ神が何人もいるわよ。
?
「何で、アイナとカイナだけ、こんなに大きな場所が与えられているんですか?」
「私とアイナは、森の守護神だからよ」




