意識消失
何人かの町人達が食堂に訪れていて、突如現れた僕達を見て驚く。
「わあ、カシム様!」
みるみる人が群がってくる。
僕は人を掻き分け、目当てのラーメン屋を目指した、
ここの食堂は中央がフードコートの様にテーブルが立ち並んでおり、それぞれの店がテイクアウト形式になっているので、客はトレイに食事を乗せて慎重にテーブルへと運んでいく。
ラーメン屋の手前に着くと、4,5歳だろうか?小さな女の子が、お子様ラーメンをトレイで運んでいる。
母親が心配そうに子供を見守る。
「大丈夫?ママが持とうか?」
「パパの所まで持って行く!」
真剣な表情で零れないようにラーメンを見つめ、あと5,6歩先のテーブルに座る父親が座っているテーブルに足を進める。
あと3歩・・・2歩・・・1歩
無事トレイをテーブルに置くと、父親が子供の頭を撫でながら
「よくやったな。えらいぞ!」
と子供の髪の毛がぐしゃぐしゃになるくらい撫でまわした。
そこに母親も加わり、
「よく出来ました。」
とやさしく頭を撫でた。
子供への愛情が母親の表情から読み取れる。
「あ・・・・」
その母親の顔を見て、なつかしさを感じる。
僕にもこんな時代があったなぁ~
娘達はどうしているのだろう?僕は地球では死んでいるのだろうか?
一度でいいから、もう一度娘に会いたい。
しかし娘の顔が思い出せない。
何で顔以外は思い出せるのに、人の顔だけが思い出せないんだ!
考える事を止めようと思っていたが、何故か気になってしょうがない。
「ふう~」
大きくため息を吐くと、コサイが心配そうに声を掛けてきた。
「マコト、大丈夫?クリカの言動が原因?」
「いや・・いや違うよ。ちょっと地球の事を考えていたんだ」
「地球って、マコトやタタン様が居た異世界の事?」
「うん。自分の娘の顔が思い出せなくて、落ち込んじゃったんだ」
「そうなのね、本当にマコトは異世界では60歳だったの?」
「うん。上の娘は28歳で、下の娘が24歳だった」
「私達より年上なんだ。信じられないわ」
今の僕は20歳ぐらいの容姿なので、信じろと言う方が無理な話だ。
でも、このメンバーは誰も疑う事なく僕の言葉を信じてくれている。
違和感も持たないこのメンバーと出会えて良かったと本気で感じる。
「マコト~」
ラーメン屋の前でモイナが僕を大声で呼んでいる。
「早く来てよ~」
まるで本当の娘の様なモイナの所へ僕は急いだ。
「分かったよ。今行く」
とモイナの所に向かう。
結局、モイナの分も同じトレイに入れて、テーブルまで運んだ。
「さっき、小さい女の子も自分で運んでいたぞ!」
「だって、マコトに運んで欲しかったんだもん。」
まあ、これはこれでいいか
僕達はそれぞれ自分が好きな食べ物をテーブルに持っていき、和気あいあいと食事を楽しんだ。そして食事を食べ終えると、皆でお風呂に入りに行くため、2階の寝室に戻り、着替えを持って風呂場へと向かった。
風呂にはいつもの様にコサイと入ったのだが、コサイはサウナで体を癒すとの事で、僕は先に風呂場を後にしたのであった。
僕は部屋に入ると一直線にベッドへ走り、ヘッドスライディングする様に飛び込む。そして体を反転させて仰向けになり天井を見上げる。
「今日は平和だったなあ~」
しばらく天井を見上げて、今日一日を振り返る。
あれ?
そういえばコサイがまだ帰ってきていない。「やけに長湯だな」
コサイはまだお風呂に入っているのかな?
もしかして風呂場で倒れていないだろうか?
ちょっと風呂場に行ってみよう!
僕は立ち上がろうとするが、身体が動かない
どうして?
意識が遠ざかっていく。
かすかに声が聞こえる
「目を瞑りなさい。」
僕は意識を失った。




