ノハルの息子
「もうすぐ町へ通じる道が現れますよ」
カシムが言うと同時に前方に右へ曲がる道が現れた。
僕達の車は前方に表われた右の道へ曲がる。
カシムが言っていた言葉の意味が分かった。
そういう事だったんだ。
そして右の道に入った瞬間に、先程まで生えていなかった右側の沿道の木が生えて来て、通ってきた道路から、僕達が進んだ道が見えなくなった。
更に、僕達の車が走った後は、道は無くなり、次々と木が生えてくる。
小さな草も生えてくるので、後ろの景色はただの森に変わって行く。
前の窓は道が見えて、後の窓は森林が見える。
本当に魔法の国にでも来ているかの様な光景に、ただただ驚くばかりである。
「お~」
僕とモイナが後部方向を見て驚く。
モイナは後部座席に正座して後方をずーっと眺めている。
「マコトも座ったら?」
とモイナが僕に微笑みながら話しかけてくる。
さすがに子供ではあるまいし遠慮する。
しかし不思議だ
「何でこんな事をするの?」
「さっき走っていた道の左側の森に、1か月ほど前から人食い竜が住み始めたのです。」
「人食い竜?」
「はい、元は光国の住民だったのでしょうけど、3家族が川と道の間に住んでいるのです。」
光国の住民?
アイナとカイナみたいな容姿なのか?
でもこの星での竜とは、僕のイメージとは違うかも知れない。
「人食竜ってどんな容姿をしているのですか?」
「そうですね。何ていうか、トカゲを大きくした容姿で、体には蛇の様な鱗があるんです。更に魔力が強くて、魔法が効かないんです。」
「魔力があるトカゲ?」
するとコサイが
「そうよ。基本的に光国の人は、動物や虫の容姿をしているのよ。だけど、魔力がある者は人間の容姿に変わる事も出来るらしいわ」
確かにアイナもカイナも人間の容姿に変われた事を思い出す。
「でも何で光国の住民がこんな所で住んでいるの?」
「どうやら、2ヶ月程前から光国で内乱が起こっているみたいで、光国から追い出された住民達が各国に散らばっているみたいなのよ」
コサイが真剣な表情で僕達に話した。
「あっ!もう着きますよ」
キワ町の入り口で車が止まった。
全員が車を降りて、キワ町に入って行く。
キワ・ハル家(木)の当主コハルは5年前にカシムの両親とリオキの母親と同じ時期に亡くなっている。コハルの妻であるノハルがキワ町を治めている。
僕達はノハルが住む屋敷に足を急いだ。
屋敷が見える所まで歩いていくと、門の所に真っ赤な髪の女の子の姿が目に入る。
ルタンだ。
ルタンの居る場所まで近づくと
「みなさん、お疲れ様です。」
と笑顔で僕達を迎えてくれた。
目の前の大きな門は開いており、僕達7人は門を通り過ぎ、屋敷の玄関までの50mぐらいある庭を通り過ぎて屋敷に辿り着いた。
すると玄関の木のドアが自動的に開く。
すると、もう70歳近いお婆さんが車いすに座って、玄関の前で僕達を向かい入れた。
「カシムちゃんもコサイちゃんも中に入って」
ノハルに連れられて、玄関の近くにある部屋に入ると、豪勢な居間が広がっている。
中央には大きな木製のシャンデリア、そして大きな木製テーブルが置かれている。
それを囲む様に木のソファー?
えっ?木のソファーって固そうだな
いざソファーに座ると、何と木が柔らかい。フワフワまでとはいかないが、程よく柔らかく座りやすい。
僕達は木のソファーに座った。
それにしても、カシムとの親交が深いのは分かるが、コサイとも親交があるんだ。
同じトワ・タン国だからか?
それならば、ルタンにも話し掛ける筈だ。
ルタンがノハルに
「ノハル様、お久しぶりです。ルタンです。」
微笑みながら挨拶をする。
「ルタンかい?久しぶりだね。」
「はい、ご部沙汰しています。」
「カシムちゃん達は、何の用があるのかい?」
カシムが今までの経緯を話し、トワ・タン国の施設に入っていただく様にお願いした。
それを聞いてノハルが答える。
「私はもう70歳のおばあさんだから、ここで過ごすわ。それに私がトワ・タン国に行くのを息子が嫌がるでしょうから」
息子?




