刺客
リオキが部屋を出て行ったのを見届け
「マコトと言ったか?」
「はい」
「ありがとうな。私の命より大切な者をまた亡くすところだった。」
「僕も命より大事な妻を亡くしましたが、僕達の間に生まれた2人の娘が巣立つまで、一生懸命育てました。何不自由なく育てられたかは分かりませんが、妻が亡くなった事で不幸にしたくは無かった。それが僕に出来る妻への最後の愛情だったからです。」
「愛とは深いものだな」
「はい」
マオキが席を立とうとしたが、すぐに座ってしまう。
「君達は先に食堂に行ってくれ。私はゆっくり食堂に向かうよ」
どうやら、長い間、座り続けていたせいで立ち上がるのがやっとのようだ。
モイナが「ねえ、お姫様抱っこしてあげれば?」
でも元国王をお姫様抱っこして、他の人に見られたら立場が無くなるのではないだろうか?
「マオキ様、食堂はどこにあるのですか?」
「玄関を入った所だよ」
それならば
僕はマオキ様の所に行き
「すいません、少し立ってもらえますか?」
マオキが立ち上がると
「失礼します。」
と言って、お姫様抱っこをした。
そしてすぐにテレポートして、庭に移動する。
「ここからなら、歩けそうですか?もし転びそうになったら僕が何とかしますので、歩いてみましょう」
マオキはテレポートに驚いていたが、
「分かった、歩いてみるよ」
1歩、2歩と歩を進める。
「うわ!」
と躓いて転びそうになったマオキに向かって
「浮け!」
するとマオキの身体が宙に浮いた。
「お~これは凄い」
宙に浮いたマオキは笑顔で言った。
「なあマコト君、このまま食堂に連れて行ってくれないか?」
「えっ大丈夫ですか?」
「いや、これはいい。実に愉快だ」
マオキは宙に浮いたまま、まるで寝ているように横になった。
庭からドアを開けるが
「マオキ様、横になっていてはドアを通れません。」
すると何かを思いついたように、ニヤリと微笑む。
マオキはうつ伏せになり、進行方向に向かって両手を伸ばす。まるでスーパーマンが飛んでいるような姿である。
僕はドアを開けてから、マオキを先にドアをくぐらせる。
正面のマオキの部屋に向かう廊下では無く、横のテラスになっている部屋が食堂の様だ。
「マコト君、このまま食堂に飛ばしてくれないか?」
「はあ・・・」
僕はマオキを、まるで飛んでいる様に食堂へ運んだ。
食堂には先に来ていたリオキが、父が飛んでいる姿に驚く
「お父様、そんな能力をお持ちでしたか?」
「ハッハッハァ~。凄いだろ、マコトの能力だよ」
僕も食堂に入り、マオキが座るだろう中心にある席にマオキを降ろした。
マオキはそのまま椅子に座る。
「マコト、楽しかったぞ」
とご満悦の様子だ。
一気に僕とマオキの距離は近づいた。
少しして、皆も食堂に集まってくる。
使用人達もマオキの復活に喜んだ。中には涙を流す者の姿もあり、本当に皆に心配されていた事が分かった。
真っ赤な血液が僕以外の食卓に置かれる。
マオキの乾杯により、食事が始まった。
血液を飲み終えると、全員にスープが配られる。
その時である。
マオキの前に置かれているスープから、黒い煙が立ち昇る。
「えっ?」
誰もその煙に気づいていないのか?
マオキがスープにスプーンを入れて、口に運ぼうとした時、僕は立ち上がり阻止しようとしたが、体が動かない。
「えっなんで動かない!」
しかし、モイナがこの黒い煙に気付き、マオキに飛びついた。




