恐竜との闘い
「わあー」
僕に向かってきたモイナの母を避けるため、とっさに横に避ける。
暗くて、はっきりと見えない。
「暗くて見づらいな」
モイナの母は、僕の居た場所に顔ごと飛び込んできた。
そして立ち上がり、僕を睨む。
僕は木を盾にして、話しかける。
「僕はモイナの知り合いなんだ。だから話を聞いてくれ!」
「いいからじっとしていなさい!」
もう僕の言葉は届かない様子だ。
「じっとしていたら食べられちゃうだろ」
「だから食べると言ったでしょ」
と言いながら、木陰に居る僕の居る場所に飛び込んでくる。
僕はまた横に避けた。
すると盾にしていた木を大きな口で噛んだ。
バキッ!バキバキ
噛んだ木が口型に削られている。
こんなのに噛まれたら、骨ごと噛み砕かれてしまう。
「これはヤバイな。死後の世界で恐竜に食べられるのかよ。ここは地獄だったのか?」
「じっとしていなさいと言ったでしょ!」とすかさず、僕に向かって跳んできた。
「もうヤケクソだ」
僕はボクシングのファイティングポーズをとり、モイナのお母さんが跳んでくるのを待ち構える。
暗闇で見づらい状況だが、モイナの母の姿を集中して眼を凝らす。
すると、体が青白く輝き、大きな口を開けたまま僕に向かって跳んでくるモイナの母の姿がはっきりと見えた。
大きな口はまるでワニの口というか、サメみたいな口だ。歯の形まではっきりと見える。
腕は短いので、正面から口が跳んできている様に見える。僕は寸前まで引き寄せて、思いっきり口の下をアッパーカットの様に思いっきり殴った。
ゴツン!
アッパーカットで僕の拳が口の下に当たると、3mあるモイナの母を体ごと上に突き飛ばした。
5,6m上まで僕のパンチで吹き飛んだ。
モイナのお母さんは白目をむいて、地面に落ちる。
失神している様で、地面に落ちても体が痙攣している。
すると後方から大きな物体が小さい木を吹き飛ばしながら、こっちに向かって突っ込んでくる。
大きな太い声で
「カイナ!大丈夫か?」
この声は、さっきモイナと居た時に聞いた声なので、モイナのお父さんだとすぐに分かった。
何を話しかけても聞き入れてくれる感じでは無い。
段々と足音が近づいてくる。
姿がはっきりと見えて来た。
モイナのお母さんよりも更に大きい。
身長は3mを超えるだろう。
これだけ大きいとアッパーカットで通じるだろうか?
ちょっとでも突っ込まれたら噛まれてしまう。
「やるだけやるしかない」
覚悟を決めて、さっきと同じ様にファイティングポーズをとる。
20m・・10m・・5m・・3m・・2m・・1m
体がまた青白く輝き始める。
ギリギリまで引き付けて、同じように口の下にアッパーカットを打ちつける。
モイナのお父さんの体は宙に浮き、3,4mぐらい上に吹き飛んだ。
モイナのお母さんと同じ様に、白目をむいて地面に落ちて痙攣した。
今度は人の小さい足音が近づいてくる。
「お父さん、お母さん」
モイナだ。
モイナはお父さんとお母さんを心配しながら体を揺する。そして繰り返し両親を呼び続けた。
モイナの心配そうに両親を呼び掛ける姿を見た僕は、罪悪感を抱く。
「モイナごめん。でもこうでもしないと僕が食べられそうだったんだ。」
「ううん。ただ気絶しているだけみたいだから・・・」
両親はしばらく動けそうもない。でもこのまま放置しておくには、他の動物に襲われてしまいそうなので、放っておけない。
重力が軽いから、お父さんを運べるかな?
僕はお父さんを心配そうに呼びかけるモイナに
「ごめんねモイナ。お父さんを何処に運べばいい?」
「運ぶって、お父さん重いわよ?」
「ちょっとやってみるよ。」
モイナ父の体の下に手を差し込み、思いっきり持ち上げる。
その瞬間、また体が青白く光り輝く。
「よいっしょ」と力を入れるとモイナの父の体が宙に1m程浮いた。そして、落ちて来たモイナ父を両手でキャッチした。
思っていた通り、重力が軽いおかげでモイナのお父さんを軽々と持ち上げる事が出来たが、予想以上に軽かった事に驚いた。
僕はモイナのお父さんをお姫様抱っこの様に持ち上げた。
それを見たモイナは驚いていたが、
「家まで運べる?」
ほとんど重さも感じないので大丈夫だろうと考え
「うん。大丈夫そう」
と笑顔で答える。
母親は後で運ぶ事にして、父親をモイナに案内されながら家に向かって歩き始めた。
というよりか、それでも跳びながら運ぶ。
しかし、3m以上あるモイナの父を横にした状態で跳ぶと、どうしても木が邪魔になって運びづらい。
ただ、何故か暗くて見づらかった森の中が、はっきりと見える様になっている。
「目が暗闇に慣れたのかな?」
ゴツン
「あっヤバイ!木にぶつかった」
何度か木にぶつかったが、何とかモイナが案内する家に着いた。
家と言っても、僕が草原から降りた崖に、大きな洞窟が掘られている所を家と呼んでいるらしい。
モイナの指示通り、洞窟の奥まで運んだ。
モイナは申し訳なさそうに
「お母さんも運んでくれる?」
「あ~もちろん」
と承諾して、母親が倒れている所まで戻り、父親と同じ様にお姫様抱っこをして、家まで運んだ。




