タタン
そして、コミニカが僕達に部屋へ案内される。
僕達以外の客は、全て店を出て行ってもらったそうで、宿屋には僕達しかいない。
部屋も一人一人、個別に割り当てられた。
僕の部屋に入る。
部屋はあまり大きくは無いが、久しぶりの個室である。
ベッドに飛び込み仰向けになって天井を見つめる。
ふう~
何だか開放感より、物足りなさを感じる。
地球に居る時は、一人暮らしに慣れていたのだが、カミンに転生してからは一人で一夜を過ごす事は無かった。
人の温もりとは不思議なものだ。あれだけ一人は慣れていたのに、今は寂しさの方が強い。
コンコン!
ドアの戸を叩く音がする。
僕は部屋のドアを開けると、ドアの前にモイナが立っていた。
「どうした?」
「マコト、一緒に寝てもいい?」
僕はしゃがみ、モイナと目線を合わせる。そして、頭を撫でながら
「いいよ。一緒に寝よう」
するとモイナは満面の笑みを浮かべて、僕に抱き着いてきた。
僕もモイナを両腕で包み込む。
あれ?
何か胸がモヤモヤする。
すると、店長の声が響き渡る。
「夕ご飯が出来ましたよ。1階に降りてきて下さい。」
僕は立ち上がり、モイナと手を繋ぐ
「モイナ、ご飯を食べに行こう!」
「うん!」
と手を繋いで、1階に降りて行った。
1階に降りると既に全員が10人掛けのテーブルを囲んでいた。
そこにコミニカともう一人男性が座っている。60歳ぐらいだろうか?髭が顔を囲む様に伸びていて、まるで昔の海賊の様だ。
その男性が話し掛ける
「初めまして、私は元チワ・リカ国の総騎士長のケロタです。以前に起こった大戦争では一平兵だったのですが、ガタンを見た事があり、その時にガタンが使った能力を伝えておこうと、ここに来ました。」
ケロタって?顔と合わない名前だな。
食事が運ばれてくる。4人は血のグラスを飲み干し、食事を食べ始める。
ケロタが話始める。
「ガタンの能力は、約1mの範囲を一定時間止める事が出来る能力があるんです。
トワ家の独自能力だと思いますが、時を止められると何も出来ません。たとえ異世界人のマコト様でも1m以内の範囲に入ってはいけません。」
するとコサイが
「私は1m以内の範囲に居たけど、時間を止められなかったわよ。ただ、私の両親は、ガタンに触れられたら動けなくなったけど」
「もしかして血族の方には触れないと、時を止める事が出来ないのかも知れません。」
時を止められたら、能力や力は関係ない。
やっかいな能力だな
「それと一つお願いがあります。」
クリカが「何?」
「ルタン様の命は奪わないで下さい。」
「ルタン?」
「はい。実は5年前に一度ガタンがザリカ様に会いに来た時がありました。その時に私の部下が街でガタンとぶつかり、激高して殺されそうになった時、ルタン様が身を挺して部下を守ってくれたのです。ルタン様は心が優しい方なので、出来れば殺さないようにしてもらいたいんです。」
「分かったわ。でもあたし達はガタンを殺しに行く訳ではないのよ。だから安心していいわよ」
「ありがとうございます。でもガタンは殺さなければ、言う事を聞く様な相手では無いですよ」
「だから、さっきから言ってるでしょ!マコトは異世界人なのよ!」
わっ!またハードルが上がった。
ただ異世界人だと言うだけで、過大評価だと思うのだが
カシムがケロタに質問する。
「服従の能力については、何か分かりませんか?」
「一生に一度だけ使えると噂では聞いているが、さすがに情報は無い。タタン様が服従させられたと言っているけど、実際は誰も見ていないので分からないのです。」
「そうですか・・・」
カシムが肩を落とす。
僕の事を心配してくれているのだと感じる。
「カシムさん、本当に大丈夫ですよ。」
モイナがカシムに話す
「モイナも居るから大丈夫だよ」
と笑顔で言った。
モイナが笑顔を見せると誰もが嫌される。
でも本当に20歳なのかな?
食事を食べ終わり、明日の旅立ちに向けて早めに床についた。




