マワ家は何処?
それにしても、僕は何でここにいるのだろう?
それに段々と地球の記憶が無くなっていく。このまま全て記憶が無くなってしまうのだろうか?
特に人の顔は、ここに来て妻以外は記憶が無くなっている。娘でさえも顔が思い浮かばない。
ただ、娘の結婚式や学校行事などの、その場の情景は思い描けるのだが、人物の顔が黒い霧で覆われた様になっている。
ただ唯一の救いは死んだ妻の記憶だけは、まだ失われていない事だった。
街を探索すると服屋が目に入る。
「服屋かぁ」
そういえば服は、妻との新婚生活の時は、お互いに服に興味があったので、よく買い物に出掛けた事を思い出す。
妻が亡くなってからは、子育てに追われて服を楽しむ余裕も無くなっていたので、久しぶりに服を買おうと店に入る。
店屋に入ると、ちょび髭を生やした店主だろう中年男性スタッフが声を掛けて来た。
「どんな服を探していますか?」
「これから旅に出るので、何着か欲しいんですけど。流行の服ってありますか?」
一瞬にやけた表情を浮かべ
「それならば、今用意してきます。お店の物を見てお待ちください。」
僕がカッコいいと思っても、この星の人々がいいとは思わないかもしれないので、店員に任せるのが無難だろう。
でもサイズを聞かなかったけど、大丈夫かな?
店主が服を見に行っている間、僕は店の服を見て回る。それにしても、ここの服は全て糸に色がついている。一般的な白い糸は、あまり無いみたいだが、ここの星の人は派手な服が好きなのだろうか?
でも、クリカの両親や店に来ていた人達は、そんなに派手に見えなかったが・・・
すると店員がA4サイズが入るアタッシュケースを持ってきた。
?
あれ?服は?
店員がアタッシュケースを開けると、手のひらサイズの服が一杯入っていた。
ミニチュア?
アタッシュケースから店員が一つの服を取り出すと、アタッシュケースから離れた瞬間、実物大の服に変化する。
「お~面白い」
全体的に白がベースの服が多いかったが、僕の好みの商品ばかりだ。
糸の色も白い方が、もっとスッキリしている様に思えるが・・・
「糸は白いのは無いんですか?」
「お客さん、この魔法服を買うのは初めてですか?青い糸は水の攻撃を弱めて、自分の放つ水の攻撃を強める効力があるんですよ。」
「そういう事なのか。あれ?この金色の糸は?」
この服だけ妙に派手である。
「この服は呪いを寄せ付けない服なんです。かなりレアな服なんですよ。ただ呪いを受けてから使用しないと意味が無いんです。この服を着ている時に呪いをかけられたら効力が無くなるので気を付けて下さい」
そして小さい声で「この服は貴重なので、ちょっと高いんですよ」
かなり派手で、普段は着れないだろうけど、もしかしたら必要になる時もあるだろうから金色の服も入れてもらう。
「サイズは測らないでいいんですか?」
「この服は全て伸びる素材で、一度着れば固定されます。一度洗えば元通りになるので、誰かと服を交換してもサイズはその人の大きさに変わるんです。ただ、お客様にお出ししている商品は一般の大きさの商品なので、体が極端に大きい人は着れませんので、気を付けて下さい。」
形状記憶のシャツみたいだな。
「分かりました。ではこれでお願いします。」
「アタッシュケースも購入でよろしいでしょうか?」
「うん。お願いします。」
すると、申し訳なさそうに
「赤貨1枚になります。」
しかし店員の心の声を読み取ると
(本当は緑貨1枚ぐらいなんだけど・・・)
そういう事か、でも、あんまり揉めたくはないので、
「分かった、赤貨1枚だすよ。ただ、同じぐらいの量の女性服を2個アタッシュケースで用意してくれますか?」
「えっ?お金は追加になってもいいのですか?」
「いや、赤貨1枚でお願いしたい。嫌ならば他の店に行きます。」
すると店主は慌てて、僕を引き止める
「ま、待って下さい。分かりました、分かりましたので売らせて下さい。」
高くて緑貨1枚のアタッシュケースを3個買って、緑貨10枚の価値がある赤貨1枚の方が充分に得をするのは明白だ。
店主が服を探しに、店に消えて行く。
しばらくすると戻ってきて、アタッシュケースを開けて服を見せてくれた。
「お~。僕より量が多いね。」
まるで舞踏会にでるような服や、普段着るスカートやズボン、そして水着まで用意してある。僕は上下セットで10着程度に対して、女性の服は20着程入っていた。」
何かあるな?
「この服も魔法効力はあるんですか?」
「勿論、お客様のより強い魔法を施しています。」
と言った後に口を塞ぐ。
店主の心の声を聞く
(女性は、またうちの店を選んでくれる筈)
そうか、そう言う事か。リピーター狙いって事なのか。
この店主は、確かに悪知恵が働くが、確かな商品を出してくれる店である事は分かった。
「ではこの商品全て買います。」
「あっ女性用の服だけど、130cmぐらいの女の子と160cmぐらいの女の子だけど、大丈夫ですか?」
「全然、問題無いですよ。スカートの長さも、1か所伸ばせば、全部同じ長さになるので、自分で好きな長さに調整して下さい。」
僕は色々と一生懸命教えてくれる店主に、赤貨1枚と緑貨5枚を渡した。
「えっ?いいのですか?」
「うん。また、これからもお願いします。」
店主の顔から笑みがこぼれる。
「あっそうだ、お客様、ちょっと待っててくださいね」
と言って店の中を通りすぎ、スタッフルームらしきドアを開けて、中に入って行った。
そして、店主が何かを持って出てきた。
ブレスレット?
お客様、これをお譲りします。
と、3個のブレスレットを手渡してきた。
「これは?」
「1回しか使えないとされている代物で、心を操作する魔法を防ぐ事が出来る代物です。ただ、1回しか使用できないので、本当なのか分からないんです。ただ、これをお持ちになったお客様は嘘をつく方では無いので、間違いは無いと思います。」
何で嘘をつく客では無いと思ったのだろう?
「本当に信用できるのかな?」
「はい。これをお持ちになったのはマワ家の当主様ですから」
「マワ家?」
まさにモイナと探そうとしていた人物である。
「ごめんなさい。このマワ家の当主は何処に行かれると言っていたかご存知ですか?」
「ここで、水着を買われていましたので、スワの町に行かれたと思います。」
確かクリカのお母さんの出身国だ。どうやら今では国ではなくて町と呼ばれているらしい。
この情報は、今の僕達には何よりも欲しい情報であった。
「あ、ありがとう。本当に助かります。」
僕は店主に赤貨を追加で1枚渡した。
さすがに店主も、貰いすぎだと思ったのか、最初は遠慮したが結局受け取った。」
僕は店を出て、一旦、クリカの店に向かった。




