消えゆく記憶
「わあ~凄い」
おかしいなあ?モイナを抱っこして跳んでも、同じ感覚で跳べる。
やっぱり、体重は関係ないのか。
では何で?
色々と考えながら、モイナの指示した方向へ進んでいると小さな川が見えた。
「あそこ、あそこよ」
モイナを抱っこして跳んでいた僕たちは、川のほとりで着地した。
川幅は10mぐらいで、川の流れは緩やかであり、川遊びに適した川と言える。
「どうやって魚を捕るの?」
「私が先にやるから見てて」
モイナは川の一辺を集中して見つめている。
すると、見つめている場所の直径1mぐらいの円が水面から水底まで円柱のように、1mぐらい上に持ち上げられる。そして、その円柱様に川から切り抜かれた水の塊が、僕たちがいる場所の前まで運ばれて、モイナが力を抜くと水が落下した。
水しぶきがあがる。水滴が僕の頬に当たる。
「うわあ~冷てえ!」
冷たい川の水を手で拭いながら、水が落ちた場所を見ると、1匹だけ魚がバタバタと地面に打ち上げられていた。
モイナが残念そうに
「1匹だけだった。」と頬を膨らませ、納得いかない表情を浮かべる。
「いやいや、モイナ凄いよ。川の水を切り取るような事、よく出来るね。びっくりしたよ」
「次はマコトやってみてよ」
「僕はそんな事出来ないよ」
「そうかな?マコトには能力を感じるんだけど」
確かにちょっと気になっている事はあった。
崖から飛び降りた時、アイナを運ぶ時に体が青白く光った時に、何やら体の中から何か出て行った感覚を感じていた。
「じゃあ、ちょっとやってみようかな」
「うん。やってみて、マコトなら川ごと移動させちゃいそうね」
その言葉には苦笑いを浮かべる。
とりあえず、水を持ち上げるイメージを持ちながら、川の真ん中を見つめて、声を出す。
「浮き上がれ!」
すると川の手前から向こう岸まで2mぐらいの幅の水が上に浮き上がった。
勢いよく持ち上げるイメージしたので、川の水は2,30m上空まで浮き上がり、僕達の上で弾けた。
大きな水の塊が僕達の上で下に落下し始めた。
「あぶない!」
急いでモイナをお姫様抱っこで抱えて、少し離れたところまでジャンプした。
直地して、僕達が居た場所を眺める。
まるでダンプカーの荷台いっぱいに溜まっている水を、空から地面へ向けて一気に溢した感じであった。
「あんなのを被ったらケガする所だったね」
しかしモイナは、落ちて来た大量の魚に目がいき、僕の言葉は聞いていない様子だった。
それにしても、この力は一体なんなんだ?
大量に捕れた魚にモイナが魚の血を求めて、急いで魚が打ち上げられた場所に走った。
昨日の煮干しではなくて、魚の新鮮な肉を食べたい僕は
「モイナ、2匹だけ血を吸わないで」
「うん。分かった」
とモイナは笑顔で魚の血をすすりながら答えた。
モイナが魚の血をすすっている間、この状況を解明しようと地面に腰を掛け考える。
ふう~
しばらく考えたが、出るのはため息ばかりである。
ただ、屈託のない笑顔を見せるモイナの表情を見ていると、いくらかその不安も取り除かれた。
そう言えばモイナの本当の両親は何処にいるのだろう?
あんなに可愛い娘を捨てるなんて、信じられない。
何か理由があるのかな?
モイナが充分に血を飲み終えて、僕の所に来て地面に座った。
「お腹いっぱい」
「そうか、良かったね」
僕は本当の両親の事について、聞こうか迷ったが、思い切って聞いてみた。
「モイナを産んだ両親は、今どうしてるの?」
「生まれてすぐ捨てられたみたいなので、全然分からないの。ただ、容姿から人とだけしか分からないんだ。
「マコトの両親はどんな人?」
「僕の両親?」
「うん」
えっ!両親の顔が思い浮かばない。僕を見て微笑む母の顔も、酔いつぶれて居間に寝ている父親の顔も思い出せない。それも顔だけが、ぼやけていて他の手や足、身体は思い浮かべる事が出来る。
いくら考えても思い浮かばない。
「マコトごめんね。色々あったから記憶が混乱しているのかもね」
「う・・・うん」
その後も両親の顔を思い出そうとするが、思い出す事は無かった。




