18話〜そして俺は、帰ることを決めた〜
殲滅戦の後。俺は帰るまでの間、独りで行動した。
誰も近くにいて欲しくなかったので、誰かが同行するのも拒否したのだ。自分からも離れるようにした。
まぁ、声をかけてくる人はいたんだけど。若干一名ほど。聞きたいことあるって言ってたし。
「あの、大丈夫……?」
「……何?」
冷めた声が出るのが自分でも分かった。話しかけてきた天原さんもビクッとした。いつもと違いすぎるからだろう。
「大丈夫かなって、気になって……」
「だから、何に対して?聞きたいことに関して?」
「えっと……それは……」
少しの静寂。正直独りにして欲しいんで、何も無いなら来ないでくれませんかね……
「唯先輩に何してんですか、あんた」
「彩美ちゃん……」
あやみんがこっちに来た。面倒だな……
「唯先輩を困らせてましたよね?やめて貰えません?そういうの」
「そっちから来たんだろ。用がないなら来るなよ」
そう言って背を向けた。だがあやみんはまだこちらに聞いてくる。
「それとも、嫉妬でもしてたんですか?自分の能力が低いからって――」
「……少し、黙れ」
そう言ってクロノサイスを展開し、外側の刃をあやみんに突きつけた。突きつけられた本人は目を白黒させている。
「何です?脅しになるとでも?」
「独りになりたいんだよ。さっさと行ってくれません?お前もあっち側だって分かったから」
「はぁ?何言って――」
「分かった、先に行くね。行こう、彩美ちゃん」
「え?ちょっと唯先輩――」
そうして走っていく二人。充分離れた所で、俺も帰ることにして今に至る。
帰ってからはすぐに部屋に行った。とりあえず疲れがあったから寝たかったのだ。寝ても気分は変わらなかったけど。
翌日。
スイーパー達の間ではようこそさんが庇ったことは知れ渡っていた。戦闘報告書なるものが殲滅戦の後などには提出することになっているからだ。
今回俺のいたチームのリーダーはようこそさんだったが……代わりにケイトが書いたらしく、しかもようこそさんが負傷したことについての内容はこうだった。
『リーダー負傷の原因は新人の下地が油断し、敵の索敵を怠った結果、敵の攻撃を受けた。その際にリーダーが庇った為。解毒薬ですぐに回復しなかったが天原の回復スキルで処置をした』
俺の事は酷く書かれており、状況が全く違っている。
まぁ、もうどうでもいいんだが。
ケイトの事もここでは信用があるようで、この報告が広まってから俺の扱いは『居ないもの』同然だった。
完全な無視。一部例外としてエイミィとようこそさんがいたくらいだ。
とは言っても話しかけるなんてクソ喰らえなので話しかけはしないが。その方が都合がいいくらいだ。
そしてさらに溝を深める出来事が。フィグメントの分配についてだが、ようこそさんが療養してたこともあり誰も止める人がいなかったからもあると思うが、明らかに俺だけ量を少なくされていた。
小フィグメントを五個ほど。他の人達は十倍はあっただろう。差別されていたのだった。
(本当にくだらない連中だってことはよーく分かった。もうここにいる意味ないでしょ、俺)
こいつらと一緒に戦う?冗談じゃない。元の世界の方がマシだ。
(それなら……帰る方法、探そう)
その為には軍資金も必要だし、一人でも問題なく戦えるくらい強くならないと。それまではスイーパーとして稼ぐ。そして充分貯め込んだら、
「こんな所は出ていこう。俺はぼっちでも問題ないから」
こうして。俺は元の世界へ帰還を目指すことにした。
――――――――――――――――――――――――
Another View 『スクルド』
本当に人間って醜いというか、浅ましいというか……
正直ビックリするくらい愚かだと思う。
能力を持ってたって、それをどう使うか。
いかに工夫するかが重要だと思うんだけど。今のわたしの契約者はそこらのスイーパーと同じくらいの実力あると思うのよね。
『更に伸びしろありそうだし、わたしと契約出来る時点でそこらの能力者とは段違いなんだけど。本人が知らないからかしら』
どちらにしてもここを出ていくと決めたようだから、やっとわたしも表立った行動ができる。
『必ず見つけるわ……必ず!』
その前に。そろそろ自分の契約者に目的を伝えないとね。準備が整ったら話をしましょうか。
そう心に決め、その時が来るのを待つことにした。
閲覧してくださってる皆さん、いつもありがとうございます!
『面白かった』
『続きが気になる』
そう思っていただけた方は是非ブックマークや評価をよろしくお願いします!