17話〜独りになる決断〜
すみません!更新が遅れてしまいました……
申し訳ないです。
殲滅が終わってすぐ、ようこそさんは他のチームと連絡を取っていた。ケイトも手分けして連絡を行っている。
「ふぅ、少し疲れたな……」
そう言いながら俺は『神眼』を解除する。するとこちらを見ていた天原さんに話しかけられた。
「あの、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「……聞きたいことって何?」
聞き返すと、少しの間ができた。聞くのをためらったのか?
意を決したかのような顔になりこちらを真っ直ぐ見てくる。おおぅ、なんでしょう。こういうの慣れてないんであれなんですけど。
「あの……あのね、さっきまで……っ」
「すまない!連絡は終わったから、フィグメントの回収を手伝ってくれ!」
「ほら、さっさとやりますよ!」
絶妙なタイミングで遮られた。
「あ……えっと、後で!後でにします!」
「はい?」
「後で、聞きたいこと、聞くから……」
そうですか。んじゃ後でにしましょうか。
「分かった。とりあえず、回収に向かおう。待ってるみたいだし」
「はい……」
何故かしゅんとしてるけど、まぁいいや。ちなみにさっきからあやみんのジト目の目線が突き刺さってるのでいたたまれない。移動しましょ、そうしましょ。
そして巣があったところには大量のフィグメント。さっきので一気にこのぐらい倒したってんだから、異能力者はやっぱり戦力なんだなぁって思うね。
まぁ、俺は足を引っ張るやつって思われてますけど。
みんなで拾ったので案外早く回収が終わる。今は最後に拾ったフィグメントをようこそさんに渡しに行くところだ。
「こっちはこれで最後ですね」
「助かるよ。他の人達が二つ目の巣も潰したから、これで殲滅戦は終わりだね。お疲れ様」
「確かに、少し疲れましたね」
「帰ったらゆっくり休んで、それから……ッ!?」
急にようこそさんの声色と目の色が変わる。
まるで戦闘中かのように。
「え――」
そして反応することも出来ずに。横に突き飛ばされた。
そしてその時。黒い何かがようこそさんの肩の肉を抉りながら通り過ぎる。
「大丈夫――かすり傷さ。今のところ問題は……ッ!?」
ようこそさんが呻きを上げた。何が起きたんだ!?
"『神眼』発動しなさい!そしたら自分に『ヘイスト』!早く!!"
(お、おう!)
スクルドに促され二つ同時に発動する。そしてその状態でようこそさんを見ると、
『猛毒』と『麻痺』、この二つに既に侵されていた!
さっきの黒い影はどこだ!?
よく見ると、木の枝に巻きついている異様な蛇が一匹。そいつがスルスルと地面まで降りてきた。
『神眼』によれば個体名は『暗殺小蛇』。名前からしてヤバそうだ。
(逃げるのは無理だな……俺一人ならともかくようこそさんを置いていくわけには――)
そう思っているとアサシンサーペントが尾を横に振った。それと同時に何かが飛んできている!
「ッ!まずいッ!」
『ヘイスト』がかかった状態で即座に移動する。躱す事が出来たが、その何かが刺さった木は紫色に変色していた。その時に見えた表示は『猛毒』。刺さっていたものは鱗だった。
(一個でも当たったらアウトってやつですかい!)
その時、後ろから天原さん達が来た。これはいけない!
「結界張って!早く!!」
「えっ!?」
天原さんはすぐ対応できなかったが、アマテラスがフォローして張ってくれた。
直ぐにようこそさんを支えて結界まで急いで移動する。その間アサシンサーペントが鱗を飛ばしてきたが
クロノサイスで何とか弾き飛ばした。
「……多分、毒だ……それも、強力な――」
「喋らなくていいですから!何があったんです!?」
「……暗殺小蛇?」
天原さんが呟いた。でも今は治療が先だ!
「解毒薬は!?」
ケイトが叫ぶ。見るとあやみんがようこそさんに既に飲ませていた。
「直ぐには動けないと思いますよ?」
「異常個体……だと、思う。討伐……しないと……!」
ようこそさんは無理に動こうとしてる。このままだと無茶をしそうだ。
「唯先輩、そういえば回復スキルの項目、あったって言ってましたよね?」
「それだ!」
俺がようこそさんに渡し損ねたフィグメントを天原さんに渡す。
「使って!」
「う、うん!」
そしてフィグメントを取り込み、スキルを取得させる。
「『快癒の神光』、発動します……!」
すると見る間にようこそさんの状態が元に戻った。流石、神様の回復スキルだ。
『猛毒』も『麻痺』の表示もなくなった。ただすぐにはさっきと同じように動けないだろう。俺達もあの蛇をなんとかしないとな。
回復している間はケイトが応戦してくれていたようだ。ただ、ジリ貧のようだ。
弓を撃っても躱される。相手の速度が速すぎるから。
そしてその合間に鱗を飛ばしてこちらを仕留めようとする。
遠距離同士ではあるが明らかに不利だ。しかも相手は高いところからこちらを狙える上、木々の間を枝をつたって高速で移動してるのでこちらは狙いが付けられない。
なら、罠を張るしかない。
「思いついた作戦があるんだ。天原さん、こういうことって出来る?」
天原さんに軽く説明をした。アマテラスにも聞いてもらう。
「うん、できるよ」
『造作もないぞ』
「んじゃ、タイミングを見てやってくれ」
そう言って結界の外に出て飛ばされた鱗を弾きながらアサシンサーペントに近づく。
『ヘイスト』のおかげで攻撃が見えるから弾くこと自体は何とかなるんだけど、仲間に当たらないように配慮するのが難しいなぁ!これ!
しかも自分も当たっちゃいけないしなぁ!近接以外の攻撃手段って今後できるようになるのかしら。
そして充分近づいたところでクロノサイスを真横に振り抜く!
アサシンサーペントは難なく回避し俺にカウンターをしかけてきた。まずい、噛まれたらアウトだ!
だが、それでいい。これが狙いだったから。
俺に噛み付く寸前に俺の後ろから天原さんとアマテラスに頼んだ、壁のような結界が迫る。
その結界は俺をすり抜け、アサシンサーペントには激突した。宙に舞うアサシンサーペント。ただ、これだけでやつは倒れない。
ぶつかった際にできる一瞬の隙。そこを逃さず、
『ブラックアウト』を発動させたクロノサイスで切り裂いた。
意識を失ったアサシンサーペントが地面に落ちる途中で、ケイトの放った矢がアサシンサーペントの頭を貫き、フィグメントに変わる。
なんとか事なきを得る事が出来た……正直、相手が素早いだけでも厄介だった……
「リーダー……なんでこんな無茶を……」
ケイトが介抱しながらようこそさんを問い詰めた。そう言うってことはいつも無茶してるらしい。
「下地くんを庇ったんだけどね……まさか異常個体がいるとは思ってなかったんだ」
「……なんですって?」
ケイトの声色が変わった。
「なぜあんなやつを庇ったんです?なぜあんな役立たずを?そんな価値、あれにあるわけないでしょう!?」
「ケイト、それは言い過ぎ――」
ようこそさんが嗜めようとするが、ケイトは止まらなかった。
「この役立たずがリーダーを庇うならまだ分かります!でも、逆はナシでしょう!?」
ケイトの糾弾は止まらない。そして決定的な一言が放たれた。
「この役立たずは死んでも構いませんが、リーダーがいなくなるのは困ります!」
「…………死んでも構わない……?」
俺の中の何かが、崩れたような気がした。
「ええ、そうです!なんなら今回のことだって代わりにあなたが『猛毒』と『麻痺』引き受ければよかったでしょう!?」
その言葉を聞いて、悟ってしまった。
ああ、こいつらと。こいつらと一緒にいるなんて事。
ムリなんだって。所詮、能力でしか人を判断しない奴らなんて信じられるわけがないんだって。
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