11話〜時計の中の女神様(2)〜
俺は盛大に困惑していた。
目の前にいる刻女神スクルド。その見目麗しい女神様に契約を迫られていたからだ。
いやそれもそうだけど!聞きたいことはもっとあるんですって!
「あのー、悪いんですけど、質問だけさせて貰えません?」
『契約しなさいって言ってるのはわたしの方なんだけど……しょうがないわね。何について聞きたいの?』
……よし。なら聞くとするか。
「それじゃあ……えっと。スクルドさんは……」
『スクルドでいいわよ別に。呼び方くらいで機嫌損ねたりはしないから』
「んじゃあ、お言葉に甘えて。スクルド、聞いていいかな?」
『いいわよ。で?聞きたいことって?』
この女神様を目にして最初に思ったのは、
『自分の能力は本当に武器に変形させるタイプの能力だったのか?』という部分である。
この状態に近いものはおそらく天原さんの『アマテラス召喚』だろうと思ったのだ。(それ以外のケースを見てないだけとも言うが)
なら、自分の能力はスクルドを召喚する能力だったのでは?
そうだとすると先程の『契約』という言葉は『召喚』とは別の形をとったものでは無いだろうかと言う疑問である。
「スクルドとは契約をしないと力を貸して貰えないってことか?」
『そうよ。あんたと同じく呼び出された女の子の召喚する……アマテラスって言ったわよね?あれとは違うの』
「となると、なんで今出てきたの?」
『わたしの『神眼』を使ったのが確認できたからよ。それも正常にスキルを使う事が出来たのが分かったから、わたしと契約するほどの資質があると判断したの』
資質ねぇ……資質あってもCランクですけどねー。
とりあえず、『召喚』って訳では無いと。デバイスは正常。では次。
「この腕時計から出てきたってことだけど、最初から腕時計にいたの?それとも途中から?」
この質問の意図だが、最初からだとすると能力に関して認識を改めなきゃだし、途中からだとこの女神様が目的とやらのために自分から来た可能性が多いにある。ただ単にあとから二つ目の能力に目覚めることがあるかもしれないかもだけど。答えはいかに!
『最初から。刻女神だから、時間に関係する物とかに宿りやすいってのはあるわね。今回は腕時計だったけど』
「ふーん……関係のあるものに宿ると……」
『そうなるわね』
「そういえば武器、『クロノサイス』って固有名になったけど、これも関係ある?腕時計が変形したのも?」
一応確認だ。クロノって名前の響き的に関係ありそうだもの。
『腕時計が変形したのは違うわ。その時のわたしは目覚めてないもの。言ったでしょ?『神眼』使ったのが分かったから出てきたって。能力の方向性はわたしの方に引っ張られたかもしれないけど』
「そうなんだ……」
オーケー。大体知りたいことは聞くことが出来たしこれでいいだろう。
契約すること自体もむしろ有難い。もしかしたらCランクから抜け出せるかもしれないのだ。デメリットは無いように見える。
むしろ死んでフィグメントになるよりは絶対にマシだ!死ぬなんて勘弁だからちょっとでも力は欲しい。
「分かった。契約するよ、スクルド」
『じゃあ手を出して。契約の証を手に刻むわ』
素直に手を差し出す。すると、手の甲に円形状の紋様が刻まれた。内側に六角形のペンタグラムが見える。
『これで契約は完了、これからよろしく頼むわよ』
そう言って刻女神スクルドは微笑んだのだった。