106話〜三人の襲撃者〜
「「「ご馳走様でしたー!」」」
三人が満足気に声を上げる。俺はと言うと……
「予想の三倍の値段……だと……!?」
たかがクレープと侮った……!この前買った時は三人分くらいだったから、今日は四人分くらいで済むだろう……そう思っていたのだが……!
「やっぱり女の子よねぇ。別腹ってやつよ、お兄さん?」
くうぅ……高くついたが、しょうがあるまい!
普段こういったところに来れない姫様を連れて、こういう時間を作ってあげられたことに意味がある!と思おう。
……それにしても三人ともかなり食べなかったか……?
女の子って甘いものだといくらでも入る異空間でも搭載してるんだろうかってくらい食べたよな……?
"ま、しょうがないんじゃない?別にお金困ってる訳では無いんだし、こういう時間は貴重じゃないかしら?アンタ、アタラキシアから来て以来こんなゆっくりした時間はなかったでしょう?"
確かにな。時間が出来たとしてもあやみんと天原さんの能力強化だったりに付き合ってたわけだから、ほぼほぼそんな暇は無かったね。
それに護衛が無かったとして、今度は帰るための手がかりを探しに行かなきゃいけない。
俺としてはそれが最優先なんだけど……王様の頼みを無下には出来ないだろ。うん。
"さっきのを見ていたら、流石の妾も食事をしてみたくなったのじゃがな……食べなくてもいいこの身体は便利な様でこういう時に困るのじゃ"
アマテラスが独りごちた。ただ、彼女だけではなかったようで。
"ボクもだよー!前にティアナの部屋で食べてた時も羨ましかったんだからね!?"
今のレーヴェ、子供が頬をプクーっと膨らませて駄々をこねてるようなイメージだなぁ……多分微笑ましいけど。
ってか普通にリンク繋げてませんか?スクルドさん?
"皆さん楽しそうですね、マスター。今のところ周りで大きな動きはありませんが、三人ほど怪しい人物がいます。気をつけてくださいね?"
ノルンが警告してくれる。
(了解っと。悪いね、助かる)
"その為のわたしですから。お任せ下さい"
ノルンがそう言い、念話が切れた。ホント頼もしいやつだよ。
さて、そろそろお開きかな。会計を済ませ、城に戻ることにしよう。
「ちょうど頂きます……っと。良かったらまた来てくれるかい?」
「多分ですけど……ユーティリア様は城を抜け出してでも来そうですけどね」
苦笑しながら答える。なんせその姿が簡単に想像できてしまったのだ。
エミリアさんと一緒にお忍びでクレープを食べてる姿が。
「……その時は君が陰から守るんだろう?君を見てたけど、どうやら姫様の動向に気をつけていたようだしね?」
まぁ、流石に気づきますか。
「ま、そんな所です。今日このくらいで引き上げますよ。いい時間になりましたしね?」
「じゃあ、またのご利用をお待ちしてるよ!」
そう言って店主と別れる。奥さんには『送り届けるまでがデートだからね!』と言われたけど。ってか違うっつーの!
そして三人と合流する。ちなみに、あやみんが子供たちと遊ぶ際に具現化させた猫たちは周りにまだいる状態だった。
とは言っても描いたものだからだろうか?動物特有の『獣っぽさ』と言うか……匂いがしないのだ。まぁそこについては後で聞いてみるか……
「よーし、帰りますよー」
「はーい。ふふっ……とても楽しかったですわね!」
「満足して貰えました?姫様?」
「ええ、たまに城を抜け出して来たいと思うくらいです!」
「それはやめときましょうよ……その度にあたしと唯先輩が一緒に行かなきゃいけなさそう……」
あれ?やな予感。その度に俺も引きずられていく感じになったら……
「あ、でもその度に先輩にクレープ奢ってもらえる!」
「もう……そういうのは、メッ!だからね?彩美ちゃん?」
「じょ、冗談ですよ!?冗談ですからね!?」
明らかに焦ったな……あやみんは天原さんにメッ!てされると弱いのか。覚えておこう。
さて、少し歩いた訳だが……例の怪しい奴らはどうだろうか?
(ノルン?)
"やはり一定の距離を保って追ってきてますね。前方と後方、そして右手に一人ずつ。いつ仕掛けてくるかわかりませんが……"
それだけ分かれば充分。
(スクルドとも情報共有しとく。引き続き頼むな?)
"了解です"
よし。じゃあ早速。
(スクルド!気づいてるか?)
するとすぐに返事が来た。
"ええ、三人おかしいのがいるわね。一定の距離、離れてる。ずっとその距離を保ってるから、『簒奪者』じゃないかしら"
(多分当たり。どの辺で仕掛けてくるかね?)
"二つ先の道の角で右手に曲がって、仕掛けやすい状況を作ったら来ると思うわよ。問題は……"
どう仕掛けてくるかだろうな。
(スロウで保険かけるか?それが確実だろ?)
"まぁ、そうね。わたしも表に出ておくわ。その方が――"
(いや、今回は状況を俯瞰して見ててくれ。もしこれに違う意味があるとしたら厄介だし)
"分かったわ、刻矢にまかせる。危ない時は強制的に介入するわよ?それでいいわね?"
(ああ、その時は頼むよ)
"リンクで二人にも伝えておくわ。あと少しで着くし、説明はそれぞれにお願いするから。彩美は……身を守ってもらうしかないわね"
そこんとこはある程度修羅場も経験してるからなんとかなるだろ。いざって時は守るさ。
そうして五分歩いた先で例の曲がり角に入る。
一応念話で伝わってるか顔を見て確認。うん、大丈夫そうだ。すると天原さんが一言。
「彩美ちゃん、お願い、ね?」
「大丈夫ですよ――手は打ってますから」
……?何の事だ?
気にしたのも束の間。正面の一人が刃物を投擲してきた!
「やっぱりな!」
ノルンのサポートにより、的確にスロウフィールドを発生した……のだが。
"左右の二人も投擲系武器で攻撃してきています!"
じゃあ俺が一つを弾く!もう片方は天原さんがやってくれるはずだ!
(前のひとつは……!?)
その時。信じられないものを見た。
「……せっかく描いたのに、ゴメンね」
あやみんが描いた猫が刃物の軌道に入り、身代わりになっていた。身代わりになった猫が空中で露と消える。ただ、それだけでは終わっていなかったのだ。
前方の一人は既に無力化されていた。あやみんの猫たちによって。
組み付かれ、噛まれ、数の暴力で身動きが出来なくなっていた。
問題ないなら、俺は撃って出ますか。右の一人をブラックアウトで意識を落とし、近づいて抑えようとする。ヘイストをかけるのも忘れない。
「……ッ!」
「おわっとぉ!」
意識を取り戻した瞬間、即座に反撃してきた!それをなんとか躱し、クロノサイスに付与したブラックアウトで完全に無力化する。
「あっぶね……ヘイストかかってなかったらと思うと……」
間一髪。少し意識落とせないとはいえ、すぐに復帰した上に反撃するんだから、こいつも手練だったってことだ。
天原さんの方は!?
『ふむ、妾と唯の連携は完璧じゃな。予定どうりじゃ』
「私が守ってアマテラスが倒すって形、上手くいったね」
あの二人も板に付いてきたってとこか。この前の特訓もいい感じに活きてるな。
どうやら刃物は盾の形状の結界で防いで、アマテラスは薙刀形状の結界で相手を制圧したようだ。
「ほんとに皆さん、お強いんですのね……」
最後に姫様が一言。いや俺だけ危なかったんですけどね……
とりあえずショーゴンに連絡して、報告だな。
そうして俺はデバイスで通信を始めるのだった。
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