9話〜禁忌事項と動き出す意志〜
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あらかた全員が能力の強化を終えた。
俺は遅延と加速、及び『ブラックアウト』という相手の意識に対する攻撃スキル。
他の四人はどんな強化をしたのだろうか。今は『神眼』を使ってないので分からない。と言うか、別にそこまで知りたいわけじゃないし。
"何で知ってんの?"って言われたが最後、このスキルのことを相手に教える必要が出てくる。
今のところ俺が俺が持てる最高の切り札だしね。こう言うのは最後まで取っておくものだ!
何より勝手に見られてるって思われるのはちょっとなぁ……
(覗きって言われると絶対に冤罪確定じゃないですかー、やーだー……って思うわけですよ!)
ぼっちの処世術その一。
・疑われる事をまずしない。するにしても隠れて問題にならないように!要は空気になりましょう!
(こういう思考をしてることがバレたら不味いんだけどねー)
アホなことを考えてる間にようこそさんが集合をかけた。今度はなんでしょう?
「今から君達に教えることはやってはいけないこと……つまり、禁忌事項に当たる。ちゃんと聞いておいてくれ」
「一緒に見せたいものもあるからァ〜、移動するわよォ〜♪」
移動ですか……じゃあついて行きますかね……
ちなみに俺は一番後ろで他の四人とは距離が少しある。ランクが分かった頃から離れるようにしたのだ。少しばかり自分だけが場違いみたいな感覚があるからだけど。気後れって言うのかもしれないが。
そんな感じで距離感に気を配りながら階段を降りて地下へ。するとフィグメントだらけの部屋が見えてきた。ただ……
ここにあるフィグメントはさっき使ったような青紫色の小さなものとは違ってかなり大きく、また明るい赤紫とでも言う色をしていた。そしてそれぞれに、
文字が刻まれたプレートが傍に置いてある。
これは……
「この赤いフィグメントは……死んでしまったスイーパー達のフィグメントだ。一つあたりの大きさが個々に違うのは、能力の強さが関係しているらしいんだ」
「異能力者はねぇ……死んでしまうとフィグメントになってしまうのぉ……そして、大きさを見てもわかるでしょう?これを取り込むことで一気に能力を強化できてしまうのよ……」
まぁ、大きさから見てさっき使った物の何十倍だろうか?大きさだけでなく、他の要素……純度とか?そういったものでも変わるとしたら一体どれだけの強化が行えるのか……
「伝えたい事は分かってくれたね?赤いフィグメントは取り込まない事。その行為自体が禁忌事項だ」
念を押すかのようなプレッシャーまで感じるんだけど……ようこそさん、やっぱ実力はあるのね。
そしてここは……遺体安置所みたいなもので、
この世界で死んだらフィグメントになってしまうのか……
名前のプレートだけ置かれて、これは誰だったって分かるようにするだけ。正直、嫌ですね。はい。
とりあえず感想は一旦置いておいて。疑問が二つほどあるので聞きたいのだが。
「質問、いいですか?」
ようこそさんが首を縦に振った。なら遠慮なく。
まず一つ目に人の亡骸とでも言うべき赤いフィグメントを取り込むのを禁忌とするということは……それなりの理由があるということ。例えば……
「以前に人同士でフィグメントの奪い合いや殺し合いがあったのでは?それも赤いフィグメント、能力の高い人を殺して出たモノの奪い合いが。違いますか?」
「……当たりだよ。何十年前か前まではそういった争いで、何人もの人達が亡くなったらしい。今の社長がスイーパーを取り纏めて会社を設立し、国に認められてからは激減したんだ」
激減、ということはまだそういった奴らは……
「今だに力を求める過激派は少なからずいるようなのよねぇ〜……嫌になっちゃう」
二つ目の疑問を言うまでもなく答えが聞けた。『異能力者を狙うやつはいるのか?』が二つ目の疑問だったのだ。
「ま、仮に出逢っちまってもオレがぶっ倒すから大丈夫だろ!」
「そうだな。それだけの話だ」
ラインとジェイクは自信過剰すぎる。そんな行為をしてるってことは既に取り込んだ可能性が高いんだぞ?
こっちに来て日の経ってない俺らは戦闘経験も浅いんだから勝つなんて望み薄過ぎるわ!
とにかく、命を脅かす存在はモンスターだけじゃないのね。了解。
そして、最後の講義はここでお開きとなった。次からは戦闘訓練らしい。
ま、なんとか生き延びれるようにはなりましょうかね……
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"スキル『神眼』の発動を検知しました"
"発動者はマスターの能力を使いこなすだけの資質があると思われます"
(よし、やっとね……)
自然と笑みがこぼれる。これでやっと動き出すことができる。わたしの目的のために。
"役目を終えたので機能を停止します。では、さようならマスター"
目の前の分身が消える。自分の姿をした分身が消えるのを見るのは正直複雑な気持ちだった。でも……
(今度こそ、果たしてみせる。必ず!)
意志を新たに、決意を胸に。
そうしてわたしは、またあの世界に挑むのだ。今度こそ帰るために。