1話〜召喚された日〜
初投稿です。
暖かい目で見て貰えると嬉しいです
―前門の虎、後門の狼―
そんなことわざをご存知だろうか?まさしく、今の自分の状況がそれ。
そして、そんな俺の目の前には大勢の人々。後ろには何か紫色に輝く変な門。まさに前も後ろも逃げ場無し。
え? 使い方が違うって?
なら説明させてくれ。異世界に来てしまう少し前のことを。
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時は二十一世紀。東京。
現在2020年。東京オリンピック、絶賛開催中!
そんな中、家族と一緒に東京に来た俺『下地 刻矢』。
地方から家族総出のオリンピックの観戦(地獄)に付き合わされていた。
「ほら、早く行くよ!」
母がそう言ってずんずんと前に進んでいく。その様子はさながら草むらを掻き分けて突進し続けるイノシシのようだ。
恐らくだが、某アイドルの姿を拝みたいだけだろうけど。
「母さん? 張り切り過ぎじゃありません?」
(張り切り過ぎじゃありませんかねー……)
そして思った事を口に出す父親、出さない息子。似たもの同士ですねぇ、うん。
とにかくはぐれないようについて行くのが大変だった。
その途中、人混みの多さゆえに人にぶつかってしまった。ごった返しているのだから必然みたいなものだ。しょうがないのだ。
「あ、すみません」
謝罪はしたものの、返事は無し。都会の冷たさを感じる。
そして気づいた。徐々に流れに巻き込まれるような感覚。そう、人の濁流に流されていたのだ!
「あっれぇ? ヤバくない?」
みるみるうちに引き離される家族と自分。あぁ、もう家族が人混みのようだ! ちょっと混乱してるなぁ。
そしてさらに流されること数十分。完全にはぐれた。
もしかしなくても、これは……!
(これはあれだ、迷子ですわ!)
そりゃそうだよね! ここがどこかなんて分からんのよ!
そして酔う! 人の多さが尋常じゃないんだもの。
普段からぼっちの俺に対して何たる仕打ち!
んな事言ってもまぁ俺が悪いんだけど。
とりあえず、落ち着ける場所を探したさ。そうしたら神社を見つけたんで境内に向かった。
「うげっ……やっぱり人だらけ……」
流石のオリンピック開催国。境内にも外国人が溢れてた。日本人もだけど。
迂回して裏に行ったさ。読み通り人はあんまりいなかった。よしっ、やっと落ち着けるっ!
(ここが……俺の憩いの場や!)
お気に入りの小説本を取り出して、一息つこうとしたんだ。
「続き読むかー」
なんて言って、本を開いたくらいで一瞬だけど意識が飛んだ。
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そして気づいたら、前には人おるし、後ろには訳分からん輝く門みたいなやつ。
な? あのことわざも大体あってるでしょ?
人混みに流されるのも、変なところに今いるのも、災いのダブルパンチってわけですよ!
そんな感じで現状確認終了!
とか思ってたら、目の前の男が手を差し出してこう言ったんだ。
「ようこそ、アタラキシアへ! 異世界人の皆さん」
それを聞いて俺は思ったさ。
(異世界ってホントにあるんだなー)
ほんと他人事の様に感じてはいたが、これが異世界でのファーストコンタクトだった。