膝の上の聖魔獣
「……」
あれから一週間
私はわりと厚待遇されていた。
ご飯は謎の肉とか謎の果物だけど美味しいし、服はアイツセレクトだけど沢山貰ったしお風呂も大きな大浴場がある。流石魔王の城。凄いわね。
でも…
「なんで普段はずーっとアンタの膝の上な訳!?」
「む?」
「むじゃないわよ!なんでアンタが仕事してる間も私は膝の上に居なきゃいけないわけ!?」
「そのほうがつねに安全を確認出来てよいだろう?」
「はぁ!?」
ヴァルカードはニヤっと笑い私に言った
「ただでさえ貴様…リリスは元聖女の聖魔獣だ。人間達がお前を取り戻すか始末するかしにいつかはやってくるだろう?」
…え?
「し、始末…?」
「あぁそうだ。自分達の力にならない聖女なぞ、アイツら人間側にとっては都合が悪い。なら敵の力になる前に始末するのが向こうにとっては最適とも言える」
「…っ!」
思わず私はゾッとした。魔獣となった聖女を人間はどうするか。かつて世界史の授業で学んだジャンヌダルクという聖女は最後はどうなった?そうだ、敵に捕まって守っていた民に見捨てられ最期は魔女として処刑されていたではないか。
ただでさえ姿の変異していない人間の娘がそうなったのだから今の私は人間に捕まったらいつかジャンヌダルクのように殺されるのか。
「あぁ、怯えさせる訳ではなかったのだが。すまなかったな。だが我の側に居れば安心だ。逆に言えば我にとっては目の届くところに居て欲しい、そういう事だ」
「な、なるほど…?」
ここでひとつ疑問が出来た。
「…もし、もしよ?私が賭けに勝って…人間に戻ったら、アンタは私を殺すの?」
ヴァルカードは一瞬ポカンとした顔になって、そして大笑いした。
「フハハハハハハハハ!!!面白い事を言う!」
「なっ、何よ!もしもの話でしょ!?」
「フフフ、いや、突然そのような事を言うからな…」
「語尾に (笑) が付いてるのわかるわよ!?」
「いやスマンスマン…そうだな…例え人間の聖女になったとしても、我は貴様を殺める事は無いだろう」
「…な、なんで…?」
「それは愛した相手を殺せと貴様は言うのか?」
「だっ…だって聖魔獣じゃなくなるのよ?人間に…敵になるのよ?」
「それは関係ない。我は好いた相手を殺める事は今後は無い。絶対だ」
ヴァルカードの顔は真剣そのものだった。しかし、どこか憂いを感じる。
「そ、そう…」
その憂いの訳を、私は聞けなかった。
「…なんだ?我の事が好きになったか?」
「まだ出会って一週間でそれはないでしょお馬鹿!!!」
リリスちゃんは流されやすいタイプ