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路地裏の雑貨屋さん  作者: まる
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捨てられる魔法なし

6.捨てられる魔法なし




世界管理者(幼女)が、危険な匂いをさせる箱に取り付けられたT字型の棒を、何の躊躇いもなく押し込んで、空中に放り出された。


「何、中途半端な知識を持ってるんだ、あの世界管理者たちは!」


真っ逆さまに落ちて、どうなるか分からない恐怖・・

いつまでも何も起きない恐怖に負けて、首や体を捩じって、落ちて行く方を見てしまう。


「ひぃぃぃぃー!?」


眼前には、城と思しき建物が迫っていた。


避けるとか、腕で庇うとか、目を閉じるなんて事はできず、逆に目を見開いてしまう。


建物に激突・・する事なく、そのまま通り過ぎる。

そして光に満ち溢れる部屋に入った瞬間、急ブレーキがかかり、まるで走馬灯のようにゆっくりと落ちて行く。


「な、何だ!?」


光の中に、四人が立っているのが見える。


「ちょ、ちょっと待って! 退いて! ぶつかる!?」


しかし何かの力が加わって、僕の身体が、四人の内の一人の身体に重なり合うような姿勢になる。


「えっ!?」


ギューッと押し込まれるような感覚の後、部屋を満たしていた光が失せたのだ。






目をパチパチと瞬かせ、手を握ったり開いたりして自分の手足を確認し、ぐるっと周囲を見回す。


壁に張り付くように何人かの人々がおり、自分の傍には、先ほど見えた四人のうちの三人が、僕と同じような事をしている。


「(・・・三人? もう一人は何処へ?)」


そんな事を考えていると、壁の方から何やら会話が聞こえてくる。


「史実では、勇者パーティは三人のはずでは? 何故四人おるのじゃ?」

「分かりません、陛下・・」

「如何すべきか・・」

「まずは勇者の能力を確認すべきかと・・」

「そうじゃな・・」


頷きあっている内の一人、一番偉そう・・、そして一番豪華な服を着た人物が僕たちの前に出てくる。


「良くぞ我が呼びかけに応えてれた勇者たちよ! 我こそがこの国を治める王である」


偉そうな男、この国の王が両手を広げ、僕たちに話しかけてくる。


「勇者・・? 私たちがですか? 王様・・」

「うむ、この世界を創りし神にこの世界の窮状を訴え、勇者を送って欲しいと願い、そなたたちが今この場所に現れたのだ」


傍に居た三人の一人が、代表して話をしてくれる。


「(そう言えば、世界管理者は勇者召喚の中に紛れさせるって言っていたな。大丈夫ってこういう事か・・)」


勇者召喚については、向こうで話し合ってもらっている間に、こちらの状況を確認しよう。


「勇者であれば、特別な力、魔法と言うものが使えるのだが、自分がどんな魔法を使えるかは、頭に思い浮かべる事ができる。やってもらえるか?」

「えーっと、ボクは・・光? 光の魔法?」

「おおぉっ! 光の魔法! 史実にあるまさに昔の勇者が使われていた魔法! 勇者殿で間違いない!」

「(この部屋に来た時には、四人居たはずだけど、今は三人しかいない・・)」


国王は他の二人の方にも、能力の確認をさせている。


「私は・・聖? 聖の魔法・・人々に癒しをもたらす?」

「俺は・・氷と雷? 複合魔法っていうのかな? あと支援?」

「素晴らしい! 聖の魔法は聖者の証! 女性じゃから聖女である。複合魔法は賢者の証! それぞれ呼び名は違うが、共に勇者に含まれる!」

「(あの時、四人の内の一人の身体に押し込まれた感じがあった・・)」


周囲の人たちも、国王の言葉に興奮して騒ぎ始めている。


「勇者に、聖女と賢者! これで我が国も、陛下も安泰ですぞ!」

「しかもこの度は勇者が四人も与えられるとは! かつてなき偉業! 陛下は神に愛されていらっしゃるのだ!」

「(と言う事は、四人の内の一人が、僕と言う事になるんだけど・・何でだ?)」


興奮した人の流れは、僕を取り囲んでくる。


「・・もし。もし?」

「(・・押し込まれた? あっ! もしかして死んだから肉体は当然ない。魂だけだったから、この世界で活動する肉体が必要だった・・。それがあの人たちだった?)」

「もし、もし、・・もし! 勇者殿!」

「えっ!? あ、はいはい・・。何でしょうか?」


最初は優しく声を掛けられていただけなので、誰に言われているか分からなかった。

肩を叩かれて初めて僕に声をかけているのだと気づく。


「よろしければ、お名前と、どのような魔法が使えるか教えていただけませぬか?」

「名前ね、名前は・・マッヘンと言います。魔法・・ですか?」

「そうです。使える魔法は頭に思い浮かべる事ができます」

「使える魔法ですね。使える魔法、使える魔法・・使える」


しばらく考えても何も思い浮かばず、何とか捻り出そうとするが、何も出てこない。


「えーっと、何も浮かびませんね」

「・・・はい? 何も浮かばない? そ、そんな馬鹿な!?」


僕の周囲にいた人々の熱が一気に下がり、どういう事だと騒ぎ始める。


「で、では、自分に使える力とか、能力とか考えていただけますか?」

「自分の能力ですね、分かりました」


魔法に限定しない、自分の能力と思った途端、頭に色々な情報が浮かんでくる。



ギフト:アイテムクリエーション《魔道具限定》


タラント:星野巡り合わせ

     神様のお駄賃(一日一枚の銀貨)


アビリティ:災い転じて福となす

      無病息災(物理攻撃無効、魔法攻撃無効、病気や衛生面の守り)



前に居た世界と、こっち世界のの神様(世界管理者)からもらった能力である。


「(下手な事は言わない方が身のためだよね・・)」


余計な事を言って変な事に巻き込まれるのは御免だ。

一番説明しやすくて、一番分かりやすいのはアイテムクリエーションだろう。


「えーっと、アイテムクリエーションと言う能力があります」

「アイテム・・クリエーション? どのような能力でしょうか?」

「道具作りに関する能力のようです」

「・・道具作り、ですか」


周囲の人々の視線と態度が、急に冷たいものに変わったかと思うと、さーっと居なくなってしまい、一人がこっちをチラチラ見ながら国王と話している。


「あの者、道具作り、生産系の能力のみのようです・・。もしや勇者用の装備を・・?」

「勇者が・・道具作りの能力じゃと? 何と余計な事を・・」

「しかし下手に処分すれば、神の怒りを・・」

「何とか追い出す手立てを・・」


こそこそ話なのに、不穏な会話が耳に入ってくる。






やがて国王と側近?の怪しい頷きの後、僕たち四人は別行動をする事になる。

一言で言ってしまうと、勇者の三人と、僕は別々に分けられた。


「はてさて・・、一体どうなる事やら」


さっきのこそこそ話から考えれば、魔法を使える別の三人は賓客として迎え入れられるのだろう。

そして勇者パーティとして、国王の予定通り、この国の窮状を救うために勇者として働くに違いない。


僕の方はと言えば、魔法を使えない者として、何とか城から追い出そうと画策してくると思われる。

神の怒りがなんちゃらかんちゃらと言っていたから、すぐに殺される事はないと思うけど。


そんな事を考えていると、一人の男性が入ってくる。


「大変お待たせして申し訳ない、マッヘン殿」

「いいえ、色々と考える時間が持てましたので」

「そうでしょうな・・」


僕の答えに、さもありなんと頷いている。


「マッヘン殿には、少々厳しいお話をしなくてはなりません」

「厳しい話ですか?」

「はい。今回召喚しました理由は、再びダンジョンが増え始めているためなのです」

「ダンジョンが増える?」


首を傾げると、説明役の人は異世界の事なのでと、この世界のダンジョンについて簡単に纏めてくれた。


ダンジョンは、自然発生して、大量のモンスターを溢れさせる事。

モンスターは、人間を襲い喰らう事を主目的としている事。

そのダンジョンが再び増え始め、人命の被害が増える事が予想される事。

ダンジョンの最深部まで達して、ボスを倒せるのは勇者である事。


などなど・・、この世界が再び未曽有の危機に見舞われている事を説明してくる。


「なる程、この世界の現状は大体分かりました。それと厳しい話との繋がりは?」

「モンスターと戦うには、それ相応の力と言うものが必要となります」

「戦う・・、力・・」

「はい。しかしマッヘン殿は、生産系の能力しか持たれておらず・・」

「勇者として、他の三人と一緒に戦うのには無理があると?」

「有り体に言えば、そうなります」


戦力外通告をして、僕自ら出ていくように仕向けたい訳ね。

ははぁん、もしかしたら世界管理者から何か言われているのかもしれない。


「それは・・困りました。戦わないようにどうしたら良いのでしょうか?」

「危険なのはダンジョンだけですので、町やその周辺であれば危険はありません」

「であれば、町の中で暮らせれば問題ないのですね」

「その通りです!」


説明役の人は、上手く誘導できたと言った表情を浮かべる。


「しかしいきなり異世界に放り出されても・・」

「尤もです。マッヘン殿は生産系の能力を持っておられますので、その能力で身を立てるのがよろしいかと考えます」

「でも僕は何も持っていないんですよ? この身一つでこの世界に呼ばれて、店を開くにしても、日々の生活費にしても」


暗に城を出ていくから、金を寄こせと言ってみる。


「そうですなぁ・・、分かりました。王都では難しいでしょうが、他の町であれば、店を開ける資金と、一年程度の生活費をご用意いたしましょう!」

「そうですか! それはありがたい、助かります!」


後は、とんとん拍子に話が纏まっていく。






しばらくして、先程の説明役と衛兵が入ってきて、掌より一回り小さな金属の板と、掌に載るほどの小さな革袋を手渡してくれる。


「これらは?」

「資金としては結構な大金となります。いきなりそれを持って歩くのはよろしくないと思いまして」

「なる程、尤もですね」


右左すら分からない世界だ、大金を持っていればどうなる事か・・


「この金属の板には、魔法で約定が書いてあり、これを持ってきた者に幾ら幾ら支払うと言う仕組みになっています」

「どこに持っていけば?」

「そうですね・・。マッヘン殿はご自分の能力を生かした仕事に就かれるのでしょうから、商業ギルドへ行く事になるでしょう。そこで換金もしてもらうえます」

「商業・・ギルド・・」

「ギルドと言うのは、同じ職人同志の集まり、お互い助け合ったり、技術の秘匿や向上する組織の総称です」


ギルドと思わず言葉に出すと、これまた親切かつ簡潔に説明してくれる。


「こちらの小さな袋には、当座の少量のお金が入っています」

「ご丁寧にありがとうございます。まずは商業ギルドに向かってみます」

「そうするのが良いでしょう。城の外までは、この者が案内します」


説明役が連れてきた衛兵を紹介してくれる。

お金は渡したんだから、とっとと出て行けと暗に言っているのかもしれない・・




衛兵の道案内に従って、城の中を進みながら考える。


「(世界管理者の神様のお駄賃以外にも、資金の調達ができたぞ)」


ホクホク顔の僕の顔をチラリと見て、衛兵が呟く。


「お前・・、運が良いな」

「えっ!?」

「お前、魔法が使えないのだろう?」

「その通りですが、何故分かったのですか?」

「城の者の対応だ・・」


魔法を使えない者には、魔法を使える者たちは冷たいと言う。


「それと運が良いとの関係は?」

「本来なら、魔法が使えないと分かれば、俺たち衛兵によって、力尽くで城の外に放り出されるだろう・・、いや下手をすれば牢屋に放り込まれていた」

「なる程・・」

「それなのにお前は金までもらって、丁寧に案内までされて城を出れる」


確かにその程度の事は当たり前にやりそうな世界とは、事前に世界管理者から聞いていた。


ただこの衛兵の言うように運が良い・・、本当に運が良い


物わかりの良い説明役の人に当たったのは、『星の巡り合わせ』によるものか。

衛兵によって牢にも入れらえず、放り出されもせず、お金までもらって城をでるのは、『災い転じて福となす』によるものか。


早速、世界管理者から貰ったアビリティやタラントが発動されたのかもしれない。


もしかしたら、さっきも考えたが、神様(世界管理者)から、かなり厳しく粗相がないようにと、言い含められているのかもしれない。


まあ、いくら考えてもどれが正しいかなんて分かるはずもなく、城の出口、使用人たちが使う裏口に案内された。


「(まあ流石に偉い人や貴族が使う正門には案内されないか・・)」


苦笑いを浮かべで、案内してくれた衛兵に礼を言って別れる。


この衛兵もぶっきらぼうではあるが、決して悪い人ではなさそうだ。

考えてみれば、これも『星の巡り合わせ』の影響とも言える。


「(まあ好意的にとって、前の世界の世界管理者には感謝すべきかな)」


そんな事を考えながら、城下町の方へと歩き出す。





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