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路地裏の雑貨屋さん  作者: まる
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王国での一幕

5.王国での一幕




国王は、国の重鎮たちが集まる会議での報告に、眉を顰めて怒りを露にする。


「たかが平民の分際で、誇り高き貴族に文句を言うとは!」

「その通りです、陛下」


報告には、平民たちの不平不満が、日々高まっていると言うものだった。


「偉大なる魔法使いである我らが、国を導いておるのだ。民は粉骨砕身、黙って我らのために働けば良いものを!」


ドンッと、目の前のテーブルに、拳を叩きつける。


「その通りです、陛下」


天地開闢以来、この世界はダンジョンと言う恐怖に、常に付きまとわれていた。


ダンジョンとは、森であったり、洞窟であったり、火山であったり、廃城であったりと、様々な場所に、ボスと呼ばれる強力なモンスターが現れたものだ。


モンスターは、人を襲い、食らう事を主目的とした動植物の一群を指す。


多少の例外を除けば、植物が人を害する事は全くないし、動物とてテリトリーに踏み込みさえしなければ、殆ど襲われる事はない。


しかしモンスターは、人間を求めて、攻め寄せてくるのだ。

そう軍勢を率いて、人間と言う食料を求めて、ダンジョンから溢れ出てくるのである。


そのモンスターたちを倒したのが、魔法使いたちであり、最後には勇者と呼ばれる者たちを召喚し、一度はすべてのダンジョンを破壊した。


その勇者たちが国を興し、勇者の末裔たちこそ、今の王族である・・と言う史実だ。


仕組みは未だ分かっていないが、ボスと呼ばれる存在は、時間が経つと再び現れる。

更にモンスターを倒し続けないと、突如モンスターがあふれ出てくる事も分かっている。


しかしダンジョンは、デメリットだけではない。

ダンジョンには金銀財宝が見つかり、モンスターからは色々な素材が取れる。


故に古の魔法使いたちは、ダンジョンに力と富を求めて潜っていった。

特にダンジョンのモンスターに大して、魔法は非常に有効だった。


魔法を使える事は、力の象徴であり、富の象徴となる。

やがて幾つもの魔法使いたちの国は、魔法を使えない者たちを虐げ始める。


魔法を使える者を王や貴族、使えぬ者を平民として奴隷のように扱う国家。


魔法を使えない者たち庶民として、ダンジョンの恐怖から守ってもらうために、王族、貴族に黙って従うしかなかった。


ダンジョンの他に、国同士の戦争、奴隷解放・・やがて一つの国として纏まる・・これが真実。


脅すだけで動かぬ国に対して、平民がダンジョンに潜り始めた時から変わり始めた。

攻略はできなくても、モンスターが溢れ出す事は阻止できる。


更に魔法使い同士による権力争いが、魔法使いたちをダンジョンから遠ざける。

その結果、平民による王族や貴族への反乱と言う動きが起き、国は乱れていく。


「平民どもの先兵として、ダンジョンを日々攻略しておると言うのに!」

「その通りです、陛下」


残念ながら、国王の叫びは遠い遠い過去の話であった。

一つの国となったこの世界では、王族や貴族たちは見栄で己の力を誇示するようになった。


それは対ダンジョン攻略税だ、モンスターによって襲われた町の復興税だと、ありもしない高額の税が課せて、自分たちの贅沢な生活を支えさるようになった。

危険を伴うダンジョンの金銀財宝より、平民から絞れば良いと気づいたから・・


そのため平民は自力でのダンジョン攻略は、自分たちの命と生活を守る、無くてはならないものとなっていた。


これでは民から文句が出ないはずがない。


「とは言え、あまり平民どもの不平不満が高まって、他の魔法使いたちに機運を与えるのも如何なものかと・・」

「ふむっ・・、確かに」


しかし別の貴族が、そのように国王に上申する。


他の魔法使いとは、国王派の王族や貴族以外の、王族や貴族の事を指す。

俗に言う勇者の傍系に当たると言い張る血筋で、黙っていれば一生浮かび上がる事ができない者たちである。


その者たちが表面上は善政を敷き、平民のレジスタンスを煽っていると言う噂される。


「如何すべきか・・」

「陛下、勇者を召喚されては如何でしょうか?」

「勇者じゃと?」


出来もしない勇者召喚を行ってどうするのだ?と言う表情を国王は浮かべる。


「召喚した事にして、一旦、全力ですべてのダンジョンを破壊いたします」

「・・それで?」


ダンジョンを破壊すれば、まあ平民たちの不満も僅かには下がるだろう。

それ相応の金銀財宝も手に入るが、自分の勢力も減らしかねない。


魔法使い同士の争いで、無駄な魔法使いたちを割く余力はないとは言え、ダンジョンを破壊するだけで良いなら、何も勇者を召喚した振りをする必要はない。


「平民たちの不満解消はもとより、他の魔法使いたちへの牽制とします」

「・・ほぉ」


ダンジョンを破壊し、行く先々で国はちゃんと仕事をしていると見せつける。

それはすべて国王の威光であり、他の魔法使いとは格が違うと平民たちに示すのだ。


「良かろう。すぐに勇者召喚・・の振りに取り掛かれ」

「はっ」


このようにして国王派の王族、貴族は形だけの勇者召喚へと動き始めたのである。






真っ白い空間から、いきなり地上へ落された当人にとっては、まさに瞬く間の出来事であったに違いない。


しかし眺める世界管理者にとっては、まだ落ち始めたばかりの状態であり、しかもかなりゆっくりと落ちている。


「さてと・・、あの愚王どもが、勇者召喚の真似事を始めたようじゃな」


勇者召喚など実際には一度もないが、国の史実としてはそのように残っている。

となれば勇者召喚の体裁を保つはず・・、で資料に細工しておいたのだ。


幼女が何もない空間に手をかざすと、透明な板が何枚も現れる。


一枚は、先程の王たちの会議の様子。

別の板は、文官たちが色々な書物や資料を調べている様子。

他の板は、床や壁天井に幾何学模様を描いている様子。

また別のはマッヘンが落ちている様子。

真っ白な空間に眠る、三人の男女の映るもの。

国王や貴族が幾何学模様の部屋に集まっているもの。


それぞれの板には、過去から現在までの時間に関係なく映しだされているようだ。


「あっ、これはいらんか」


落下中のマッヘンが映る板は、今は関係ないからと消されてしまう・・憐れ。


「で、今使うのはこっちっと」


二人の男性と、一人の女性が映る板を手元に持ってくる。


板を左右の手でで開くように触れると、三つの板に分かれて、それぞれが映る。


「さて、お主たちにも役割を与えよう」


彼らは平民であり、ダンジョンで死んだ者たちであった。


ダンジョンは、富と力を手に入れらる一方で、人を食らうモンスターの巣窟でもある。


魔法を使う者たちは、頭でっかちで身体が弱いが、とてつもない力を身に着ける。

魔法を使えない者たちは、身体を鍛え強くし生活を支える。


お互いが支えあって、助け合って生活できるようにするために。


魔法を使えない者たちも、武装を整え、その力を使えばモンスターと対等に渡り合える。

尤もダンジョンを奥深くへ潜り、攻略するにはどうしても魔法の力が必要になる。


そのため死亡率は、決して低くはない。

魔法による攻撃力、破壊力、殲滅力の差は如何ともしがたいのだ。


まあその魔法使いも体力や耐久力が低いので、魔法使いだけではなかなか深く潜れず、ダンジョン攻略するためには、かなりの被害を覚悟しなくてはならない。


「そなたには光の魔法を与え、勇者としよう」


一人の男性の画面を操作する。


「そなたには聖の魔法を与え聖女に、そなたには複合魔法を与え賢者としよう」


女性と、残りの男性の画面を操作する。


「マッヘンを疎ましく思った国王たちは、彼に直接手を出すやもしれん。そなたたちの役割は、最終的にマッヘンを守る事じゃ」


三枚の板を再び一つに纏めると脇に寄せ、幾何学模様の部屋に王族、貴族が集まった板を手元に引き寄せる。


「さぁーて、やるとするのじゃ・・とっとっといかんいかん、忘れるところじゃった」


もう一度脇に寄せ、別の透明な板を開き操作を始める。


「マッヘンをはじめ、四人には肉体がないからのぉ。これを創らねば。人は土の塵から創ったので、人は土の塵に帰る。故に土の塵から再び人を創れば良い」


四人分の肉体を創り終えると、満足そうに笑顔を浮かべる。


そして幼女は目を細め、顔から表情を消して、王族や貴族の映る板を手にする。


透明な板を操作すると、不思議な事に声が聞こえてくる。


『偉大なる神よ・・、我らに勇者を賜りたく・・』


自分への呼びかけと、勇者を求める声だ。


目が見開かれ、口角が吊り上がり、無表情が狂気の笑みとなる。


「何故お前たちは、勇者が必要なのじゃ?」


できるだけ感情を押し殺して、透明な板に向かって話しかける。






国王が勇者召喚を命じてから、しばらくして準備ができたと報告を受ける。


「そうか。では迎えに行くとするか」

「はっ」


貴族やその部下たちが、昔の資料や書物を紐解いて、一部屋を丸々召喚の部屋に作り替えたと聞く。


「陛下。この幾何学模様、魔法陣と呼びますが、部下たちが魔法の源である魔力を流して起動します」

「ふむ」

「その後、陛下に神への呼びかけをお願い致します」

「余が・・か?」

「はい。資料によれば、神への呼びかけは、民の代表が行ったとありますので、陛下が相応しと思われます」

「相分かった」


やがて魔法陣に魔力が流され、光り輝き始める。

すると傍の貴族が、国王に頷いて合図を送る。


「偉大なる神よ・・、我らに勇者を賜りたく・・」


両手を広げ、天を仰ぎ見て、まるで祈るかのように話しかける。


『我を呼ぶ者は誰か? 我に祈る者は誰か? 我を求める者は誰か?』

「なっ、何じゃ今の声は!?」


国王は驚き怪しみ、周囲の貴族たちも驚き戸惑い、お互いの顔を見合わせている。

それはそうだ、知っている者たちは、こんな事が起きるとは思いもしない。


『我は世を創りし者にして、世を管理せし者。何故、勇者を必要とするのか?』


もしかして偽りの史実は本物だった?と、瞬時に考える。

これ幸いと全員が頷きあい、最後に国王に頷けば、国王も頷いて返す。


「再びダンジョンが増え、モンスターが溢れ、人々が苦しんでおります。されど魔法使いは身体が弱く、ダンジョンを破壊するには至っておりません。どうか勇者を賜り、世に平和をもたらして下さいませ!」


国王は両手を天に差し出し、神に届けと言わんばかりに大声で叫び求める。


『魔法を使える者と魔法を使えぬ者が力を合わせよ。さすればダンジョンは滅ぼせよう』


今の平民が力を付け始めている報告を受けている国王は、途端に渋い顔をして咄嗟に言い訳を並べ立てる。


「・・魔法を使えぬ者は、戦いから離れております。どうか魔法を使える者だけで、ダンジョンを攻略する術をお与え下さい!」

『我は世の人々の苦しみを悲しむ。汝らの求めに応じよう』

「ありがたき幸せ!」


思いのほか簡単に勇者が手に入る事に、思わず喜びが表に出てしまう。


『与えし者は我が代理、決して疎かにせぬよう厳命す』

「ははっ! 勿論でございます」


国王や貴族、その場にいたすべての者たちは平伏し、従順を誓う。


『約束を違えし時、我はこの国を司る者たちに裁きを与えよう』

「全ては御言葉の通りに・・」


神からの強烈な脅迫に、冷や汗を流すも、勇者を蔑ろにするつもりはなく、寧ろ自分たちの大切な駒として使えば大丈夫だろうと考える。


その後、全員魔法陣の上から退くように命じられる。

すぐさま部屋が、目を開けていられないほど光に満たされる。


「うおぉぉ!?」


全員が驚きの声を上げ、両手で目を庇う。

やがて光が収まり、恐る恐る目を開ければ、部屋の真ん中に男女四人が、呆然と立ち尽くしていた。






幼女は顔を顰め、左手で透明な板を抑え、できるだけ顔を離し、右手で左の耳を塞ぐ。


「そんなに怒鳴らなくても、十分に聞こえるのじゃ・・」


この透明な板、色々と便利ではあるのだが、若干融通の利かないところもある。


相手との会話が最たる物で、人間との会話はより臨場感を出すためにと、ボリュームの調整をしてくれないし、調整もさせてくれない。


そのままだと自分の目の前に来るので、こうやって手で押さえなければ、自分の前に戻ってきてしまうのである・・無駄に優れた機能である。


「ここいら辺をもう少し何とか改良してくれれば良いのじゃが・・。まあ あの方 がお認めになっている以上、文句は言えんしのぉ・・」


仕方なく文句は、この板の発案者ではなく、地上へと向けられる。


「良いからとっとと魔法陣から退くのじゃ! 送れんじゃろうが!」


未だがなり立てる国王に向かって、そう言うが早いか三人の映る板を操作し始める。


「三人とも頼んだのじゃ、必ずやマッヘンの力になっておくれ」


魔法陣の上に誰も居ない事を確認すると、部屋を光で満たし、最初に先程作った四つの肉体を送る。

続けて勇者設定した三人を地上へと送り出す。


マッヘンと他三人を命の息として肉体に入れ、タイミングを合わせて、四人が同時に地上に降り立つようにする。


「ふぅー・・」


無事に四人が地上、魔法陣の上へと降り立たのを確認すると、額を一拭いして、深く詰めていた息を吐きだす。





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