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第一話

ポトッ

...

ポトッ

..

ポトッ

.

「うっ、ううう」

ここはどこだ?確かベットの上で死んだはずだがどうなっている?

横になっているようだが...背中が冷たい。

手で触ってみると石のような手触りだ。

ゆっくりと目を開くも目覚めたばかりでよく見えない。

俺はゆっくりと体を起こし、靄のかかった頭を振って覚醒を促す。

徐々に焦点の合い始めた目でゆっくり周りを見渡す。

周囲は薄暗く下は石畳。壁は一部が崩れているが、石垣のように積み上げたような

作りが見える。

若干だが壁自体が若干発光しておりこのため真っ暗にならずに済んでいるようだ。

部屋の広さは40坪程度、奥には木製の扉が見える。

右を見れば崩れた壁の大きな石のくぼみに水がたまっているのが見える。

先ほどから聞こえている音は、崩れた壁から染み出た水の雫が落ちている音のようだ。

左手には、くたびれた大きな木製の箱と中ぐらいの箱が数個無造作に置かれている。

自分の手足をみてみると年老いた皮膚ではなく色つやがよく張りがあり、

力を入れるとしっかりと力が入る。

ゆっくりと立ち上がり、水の溜まっている石に移動してのぞくと、

そこに映る俺の姿は骨と皮の老衰した顔ではなく壮年頃の姿。

髪型は後世でしていた肩より少し長めでオールバックにして後ろで縛ったものだ。

髭も生やしてはいたが、今映っている顔の髭は戦国時代に生やしていた形だ。

よく見れば着ている夜着は、本能寺の変時に来ていたものと同じ型。

「また転生か?いや、戦国と昭和時代が混じったずいぶんとちぐはぐな姿だから、

あえて言うなら転移か。1回目の転生もそうだがどうしてまたこうなるんだ?」

悩んでもしかたがない。ここが何処なのかすら分からん。

苦笑しながら、木箱に近付いて手掛かりがないかをしらべてみる事にする。

ずいぶんと古びれた木箱だが、朽ちてはいない。単純に板を組み合わせただけで

よく小説やゲーム出てくる宝箱のような仕掛けができるレベルの代物ではない。

「ん?少し蓋がずれてるな。」

ずれた蓋を慎重に開けるが、もちろん何も起こらずなにかが出てくる様子もない。

中をのぞくとそこには、壊れた木の器やぼろ布、何かのパーツなど

無造作に入っている。

中を漁ると袋と瓢箪、革製のポーチなどが目に留まる。

見覚えのある袋と瓢箪を手に取りよく見てみる。

「フッ、ずいぶんと懐かしいものがでてきたな。」

袋は柄のついた、巾着程度の大きさの袋。

袋を開けてみると中には、火打石などの火を起こす道具が入っている。

瓢箪は黒くくすんでいるがよく磨かれたもので、

くびれに紐がかかっており蓋がしてある。

瓢箪を振るが音はしない。蓋を取り傾けてみるが何も出てこない。

やはり中は空のようだ。

袋の柄といい、瓢箪といい両方ともうつけと呼ばれていたころに持ち歩いていたもの

そっくりだ。

もう一つの革製ポーチも手に取り見てみる。

「革製のポーチか。大戦従軍中に身に着けていた弾盒だんごう

同じような形だな。」

開けて中を見てみるが、何も入っていない。

「瓢箪は濯げば水入れで使えそうだな。火打石も使える。ポーチも物入れとして

十分使えるな。ほかに使えそうなものは無いか?」

まだ木箱には無造作に物がはいっているので出してより分けていく。

大半が壊れていたりしているものばかりだったが、使えそうなものが数点入っていた。

・ポーチ(前盒2箇、後盒1箇/ベルト)

・火打袋(火打ち道具一式)

・瓢箪

・狩猟の解体で使うような小型のナイフ

・革の小袋×3

 (見たこともない硬貨:銀色×9、銅色×7枚、絵柄が違う銀色×5枚)

 (宝石とは違う1cm程度の紫水晶のような石×9、2cm程の琥珀色の石×2)

 (こぶし大の岩塩が二つ)

「さて、すこし喉が渇いたな。」

俺は欠けた木のカップと銀貨を持って先ほどの水のたまっている場所まで向かう。

「水は澄んでいるが...」

カップに水をすくい銀貨入れてそのまま置く。

「まあ気休めだがな」

そう言いつつ木箱の元に戻りもうひとつの木箱の調査に取り掛かる。

先ほどの蓋の若干開いていた木箱に比べ1回り大きく、蓋は閉じたままだ。

「着るものと武器になるようなものが入っていればよいが。」

独りごちて慎重に上蓋を開けていく。こちらも開けてもやはり何も起きない。

中にはつぎはぎだらけの木綿のような服や古びた布、

何かの金属でできた手甲らしきもの、革鎧の一部など見え隠れしている。

「見たところ防具類が無造作に詰められた感じだな。」

先ほどとは反対側に使用できそうなものとそうでないものを分けていく。

3分の1程度取り出したところで一旦止め、瓢箪を持ちカップを置いてある石に向かう。

銀貨をを見てみるが、変色等はしていない。

「染み出た水には硫黄などは含まれていないようだな。」

カップの水を汲み直し指を水につけてなめてみる。舌にしびれは感じない。

そのまま一口飲んでみる。変な匂いもおかしな味もせず冷たい。

「体に変化はないか、一口飲んだからしばらく様子を見るか。」

石の水だまりはそれなりの量がたまっているが、瓢箪を沈められるほどの深さがない。

中を洗うため瓢箪の蓋を開け、くぼみにたまった水をカップですくい入れて、

瓢箪に入れて蓋をして振る。蓋を開けて水を捨てもう一度行ってから、

雫の落ちる位置に口が来るように瓢箪の位置を固定して、

背を向けて作業に戻るため歩き出す。

その瞬間、瓢箪は鼓動のように一瞬淡い光を放つ。

気配を感じ振りかえりあたりを窺うが先ほど感じた気配はすでに無くなっている。

あるのは雫を受け止めている瓢箪だけだ。

「一瞬だが気配を感じたと思ったのだが...気のせいか?」

止めた足を再び動かし始め、木箱まで戻り中身の取り出しにかかる。

ボロボロな衣類や防具の一部が出てくるがなかなか武器の類は出てこない。

「今のところ向こうの木箱にあったナイフぐらいしか武器は無いが...

できればもう少しまとものがあると良いが。」

そう言いつつ使えそうなものとそうでないものを

より分けながらなかのものを取り出して行く。

底の一部が見え始めたその時、布でまかれた長い形の一部が見えた。

上に乗っていたもの取りだして全体をあらわにする。

長さはだいたい1m20-30cm程度か。

底に置かれているそれを取り出して布を剥いでみる。

現れたのは、革の鞘が大分草臥れて、十字形の鍔部分が片方折れ

やや緑青の浮いた剣だ。

「見た目は西洋のロングソードの部類に見えるが、中の刀身はどうなっているか」

鞘から抜いてみると真っ直ぐな刃の身幅が5cm程度の両刃の刃を備えた姿を現す。

一通り刀身を見たあとそのまま、刀を振るう要領で感触を試してみる。

「鍔の欠けや多少刃こぼれは見られるが十分使えるだろう。柄部分が滑りやすいから

少しいじる必要があるな。」

鞘にしまい、他の使えそうなものと同様に使えそうなものの方において、

残り分も取り出してより分けてしまう。

「これでこの箱に入っていたもので使えそうなものの全部か。

結局武器はこのロングソードと先ほどの小型ナイフだけだな」

この箱からは、ややくたびれているが十分使えそうな木綿のような生地のズボン。

多少傷んでいるもののまだ履けそうな状態の紐がないブーツ一揃え。

左わき腹部分が切り裂かれており少々難はあるが防具としては使えそうな革製の鎧。

古びて裾がところどころほどけた腿あたりまでの長さをしたマントだ。

使用できるものを見て改善点を考慮しながら手直しして装備を整えていく。

夜着はそのまま。その上からズボンを着用。

襤褸を引き裂いてひも状に縒ってブーツの穴に通して履き、

ブーツの脛の部分で巻脚絆の要領でボロ布をグルグル巻いて固定する。

胸当ては切り裂かれてささくれ立った部分が邪魔にならないようナイフ削って着用。

ロングソードの柄部分にもボロ帯を巻いて滑りにくくしておく。

「そういえばずいぶん時間がすぎたが、特に変調も見られないな。

これなら先ほどの水は飲んでも問題ないだろう。」

再び喉の渇きを覚えた俺は瓢箪のあるほうへ向かう。

「5~6杯程度しか入らなそうだが瓢箪だから、落ちてる雫のスピードを考えると

水があふれてそうだな。」

瓢箪に近づき見てみると、口から外れた雫が少し瓢箪を濡らす程度で

あふれている様子は見られない。

一度手に取り振ってみるとまだまだ入りそうだ。

「容量はどれほどか分からぬが、見た目に反して大分入るようだな。魔道具の類か?

まあいい、水はなくては生きられないからな。」

一口飲んだ後は瓢箪の蓋を閉め、代わりに大きめの器を置いて先ほどの荷物の

置いた場所に戻る。

「この不思議な瓢箪や見知らぬ硬貨、石から推測するにライノベでよくある異世界とやらだろうな。ならまずはここがどこか確認だな。さて鬼が出るか蛇が出るか。ゲームなら魔物だな。」

身に着けたポーチの中に先ほどの小物を収めて準備を整えた俺は、

扉のノブに手をかけて扉を開けるのだった。

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