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mission.003 敵侵攻部隊阻止Ⅱ

ちょっとあっさりテイストです。もちっと何とかならなかったかなぁ

 


 地球-月間ラグランジュポイント2 防衛線

 後方六五〇〇キロメートル

 予備戦闘部隊 各国混成航空団


『敵の快速戦闘部隊だ!懐に入られるな、その前に撃沈しろ!』『ワープアウトの電磁波障害でミサイルが撃てない・・・こんな近距離にワープされたのは初めてだぞ!』『友軍が射線上にいる!システムが砲撃を許可しない!』『馬鹿、何のためのマニュアルだ!直接狙って撃て‼︎』『敵の巡洋艦が撃ってきたぞ!応戦しろ!』


 敵の巡洋艦を中心とした艦隊の数は八〇隻に上っている。

 ディフトラ軍戦艦の超エネルギー流砲撃により艦隊を分断された地球艦隊は、直後に奇襲ワープを敢行した快速戦闘部隊により混乱を極めた。

 最短ルートでデブリ群から脱出した為に、各国艦隊は入り乱れた上に、至近距離でのワープアウト障害によって一時的に電子機器の一部がダウンしていた。

 奇襲を成功させたディフトラ軍の快速戦闘部隊は未だ目立った動きは見せていない。ワープ直後のエネルギー希薄状態が故だ。しかしそれも時間の問題。巡洋艦の一部はすでに地球艦隊と砲撃戦になっている。


公開土大王(クァンゲトデワン)撃沈!』『プリンス・オブ・ウェールズとレパルスが大破、航行不能!』『敵の戦艦隊が砲撃を再開、駆逐艦と巡洋艦は下がれ‼︎』『第五戦隊との通信途絶!』『うわ、味方の駆逐艦が吹っ飛んだ!誰の艦だ⁉︎』


 時間と共に友軍の被害は拡大の一途を辿った。主戦域から六五〇〇キロメートル離れたここでも、両軍の交じえる砲火が視認できる。

「こちらワイヴァン・リーダー、これより戦線に介入し友軍の援護に当たる!」

 いよいよ我慢の限界ときたか、英次は興奮気味の声で言った。

『まてワイヴァン・リーダー!戦闘への介入は許可できない。今行けば乱戦になる!』

「ネガティヴ!今行かなければ予備戦闘部隊の意味がない!」

 英次の言う通り、各国混成航空団からなる予備戦闘部隊は友軍の戦線維持を支援する為に後方待機していた。その友軍が今まさに戦線を瓦解させ、危機に陥っている。今行かずして、どうしろと言うのか⁉︎

 しかし英次の望む応えはAWACSコスモアイからではなく、基地指令部から達せられた。


『こちら指令部!月面より対艦ミサイル群が発射された。弾着と同時に混成航空団は対艦攻撃を以て敵艦隊を分断。艦隊はこれを各個撃破、殲滅せよ‼︎』


 IDCにカウントダウンが表示される。ミサイルの着弾時刻、混成航空団の襲撃のタイミングを示すものだ。

 表示は二〇秒を切っていた。コックピットから真っ黒な宇宙空間に視線を投じると、月を眺められるそこから伸びる幾多の毛糸のような物をを辛うじて見る事ができた。

 先の通信にあったように、月面の各基地から大量に撃ち出された対艦ミサイル群。人間が入っていたら間違いなく死ぬであろう程の恐ろしい程の加速を以て、十数秒後には彼らの混成航空団のいる宙域を追い越した。

『着弾まで三、二、・・・着弾いま‼︎』

 ミサイル群の曳く噴煙も見えなくなった頃、カウントが〇になる。同時に、前方には輝く無数の光球が出現した。IDCに続々と示される敵艦撃沈破の表示。友軍艦隊の通信もそれを裏付けていた。

『こちらコスモアイ。全機突入して対艦攻撃を敢行、敵艦隊を分断せよ!』

「了解っ!」

 ズドン!とF-9Aの猛烈な加速に伴うGが英次の身体を襲うのと、その返答はほぼ同時だった。


 ★


 地球-月間ラグランジュポイント2 防衛線

 国連地球防衛軍 混成艦隊 第三情報ハブ艦

 月面日本艦隊(日本航宙軍第二艦隊) 扶桑型航宙打撃母艦 ヒュウガ


『いいぞ。敵の快速戦闘部隊の陣形が崩れた!』『敵戦艦に側面を向けるな!狙い撃ちにされるぞ!』『戦艦は前に出て砲撃を続けろ!駆逐艦と巡洋艦は魚雷で援護を‼︎』『HQ!ミサイルの二次攻撃を要請する!』『第二艦隊は本艦に続け。敵艦隊の中心を穿つ‼︎』


 米戦艦サウスダコタと同じく情報ハブ艦である日本艦艇ヒュウガにも、隷下艦艇群からの情報が舞い混んでいた。月面基地からの数百を数える量の対艦ミサイルの飽和攻撃により一時的に混乱状態に陥っている。

 それを好機とばかりに、日本艦隊は縦陣を取り始める。日本艦隊だけでなく、地球艦隊の多くが、すでに混乱から立ち直り、連携を取りながら反撃の砲火を浴びせていた。

「速力を上げろ。連中に体制を立て直させるな!主砲は全力射撃を以って敵艦隊を攻撃‼︎」

 日本航宙軍艦艇は元来前面に大火力を投射できる様に設計されている。縦陣突撃戦術は日本航宙軍艦艇の最も基本的かつ得意とする戦法だ。


 扶桑型航宙打撃母艦はその名に相応しく、ド級戦艦相当の砲戦力を保有している。三二セルのVLSと六門の魚雷発射管を備え、有力なミサイル戦能力を保持。主砲の三六〇ミリ連装パーティカルカノン、計八門は全て前方に投射できる設計になっていた。その三番艦たるヒュウガも、当然また同様。

 扶桑型は艦体の側面部分に航空機発着艦用の甲板が二段張り出していて、正面の被弾面積が大きいが、飛行甲板への被弾は艦そのものの継戦力に支障無く、甲板が使用不能になっても時間をかければ艦載機の収容は出来るのでさしたる問題とはされていなかった。


 増速し、縦陣隊形をとりディフトラ軍艦隊に突撃する第二艦隊。前衛を務める三隻の扶桑型の主砲は、既に敵の巡洋艦をその光芒とともに撃ち砕いていた。

「全砲門自由射撃!照準完了次第各自砲撃せよ!」

 戦艦の主砲ともなると、一〇〇パーセントの出力で砲撃すると、巡洋艦クラスならば一撃で撃沈破に追い込むこともあった。駆逐艦、巡洋艦主体のディフトラ軍快速戦闘部隊相手には主砲の斉射よりも、各砲門の自由意思によって撃ってもらった方が効率がよい。前方の敵は、魚雷でどうとでもできた。

 主砲の三六〇ミリ粒子砲が砲撃。直撃を受けた防宙駆逐艦はその一撃のもとに爆散する。破片が別の攻撃駆逐艦に命中し、その駆逐艦が放った魚雷も誘爆した。

 敵艦隊との距離は一〇〇〇キロ以下の接近戦だ。一瞬の判断が生死を分ける。ヒュウガ艦長、秋田あきだ) 千松しまつ)大佐はその判断を一瞬も間違えまいと、全神経を集中させていた。

「敵巡洋艦、本艦前方に!距離三〇〇!」

「魚雷一番、二番!」「艦首魚雷、発射用意よろし‼︎」

 撃て!と、号令と同時にヒュウガへ振動を残しながら必殺の魚雷が打ち出される。二秒後、敵巡洋艦撃沈の報告。同時に艦橋の窓に真白い火球が見てとれた。

 艦長席に身を埋めたまま、秋田大佐はさらなる命令を下す。

「面舵一〇!敵艦隊の右翼を突っ切り、乱戦中の友軍艦を救援する!」

「おもーかーじッ、一〇!ようそろーっ!」

 ごうん、とヒュウガの艦体が揺れる。面舵をとったヒュウガに続き、第二艦隊は転進した。しかし相変わらず、敵は正面にいる。正面に敵を見据えたままの砲撃は日本艦の本領である。側面にも敵艦隊はいるが、高速で機動する第二艦隊にだけ狙いを絞っていたら別の地球艦隊から砲撃を受ける。正面からの砲火は凄まじいが、日本艦艇はそれを前提で建造されている。同クラスの砲撃など正面からであれば日本艦艇にはどうという事はない。

 正面突撃突破破砕戦法という大変アグレッシブなネーミングのこの戦術は、しかしその名の通り確実にディフトラ軍快速戦闘部隊の隊列を突破し、破砕していった。

 先頭の扶桑型が砲撃を仕掛け敵艦隊の防空網に穴を作る。後続する巡洋艦の主砲がその穴を広げ、更に後続する駆逐艦と共に必殺の魚雷を放り込んだ。生じた火球の数だけ、敵艦隊はその数を減らしている。

 躍起になって反転し第二艦隊を砲撃する巡洋艦は、背後から米戦艦の砲撃を食らって轟沈すた。突撃する第二艦隊に突撃で返そうとする攻撃駆逐艦は扶桑型の主砲と、全く別方向から飛来したミサイルによって粉微塵に打ち砕かれる。

 第二艦隊の突撃を支援する、という目的のもとに地球艦隊の連携は既に取り戻されつつあった。三五万キロの距離を隔てて砲撃を繰り返すディフトラ軍戦艦隊には、月面基地からの第二波、第三波のミサイル攻撃が敢行され、その迎撃に手間取っている。無事な地球戦艦も半数はディフトラ軍戦艦との砲撃戦を展開している。


 ヒュウガの粒子砲が再び巡洋艦を仕留めた時、ズドン!とヒュウガの艦体を大きく揺らす衝撃があった。

『左舷飛行甲板損壊、使用不能!』

「構うな!重心を補正し、交戦に傾注せよ!」

 ヒュウガの飛行甲板は二段式の全通甲板となっていて、ほかの構造物とは殆ど接続されていない、ただの甲板に過ぎない。飛行甲板が吹き飛ぼうが穴だらけになろうが、ヒュウガの戦闘力にほぼ変わりはない。せいぜい、数基のCIWS(近接防御火器)が使用不能になり重心が僅かにズレることぐらいだ。当然、その程度の重心補正能力をヒュウガは持ち合わせている。

 一瞬で態勢を立て直すや、吹き飛んだ飛行甲板など知った事かとばかりにヒュウガの主砲が亜光速の粒子の束を噴き出す。それは瞬時に防宙駆逐艦の真正面に圧入し、そのまま艦尾まで貫いた。攻撃駆逐艦は瞬く間に白煙と破片を飛び散らせながら爆沈する。

「いいぞ、敵艦右翼の芯を突いている。速度そのまま、取舵五!」

「とぉりーかーじっ五!」


 第二艦隊がディフトラ軍艦隊の右翼を叩いているのには、理由があった。左翼の敵艦隊を、友軍航空団に叩かせるためである。

「友軍航空隊、戦闘に介入!対艦ミサイルを発射した模様!」

 主戦場より六五〇〇キロ離れた宙域に待機していた、各国混成航空団が遂に戦線へ介入した。その総機数は一〇〇〇機に迫る。


 大瀑布の如き量の対艦ミサイル群が、ディフトラ軍快速戦闘部隊を襲った。その数は五〇〇〇に達する。本来のディフトラ軍艦隊ならば防宙駆逐艦が持ち前の圧倒的な防空力でこれを捌くが、その防宙駆逐艦は第二艦隊の突撃の際に優先的に沈められ、数を半減していた。加えて、第二艦隊に翻弄され対処が遅れていた。

 残った防宙駆逐艦や巡洋艦が必死に対空防御網を展開するが、時既にお寿司。三分の二程の対艦ミサイルを火球に変えたところで、遂にディフトラ軍艦隊が火球になる番となる。

 最初に対艦ミサイル群の餌食となるのは、前面に出ていた巡洋艦であった。駆逐艦より大型で頑丈とはいえ、一挙に何基もの対艦ミサイルの直撃に耐えられる訳もなく、片っ端から敢え無く轟沈、爆沈。巡洋艦が盾となり守っていた防宙駆逐艦は、盾を失い弾幕を展開しながら縦に横にと回避機動を取り始めるが、焼け石に水だった。すぐに追い縋られ、炎の塊と化す。

 瞬く間に、ディフトラ軍の快速戦闘部隊と地球艦隊の形勢は逆転する。


 一段と不利になった友軍を支援しようと、ディフトラ軍戦艦が砲撃の手を強める。砲撃の直撃を受け巡洋艦が一瞬で撃沈した。

『敵戦艦の砲撃が激しい、無事な戦艦は牽制してくれ!』『了解した。』

 地球戦艦はディフトラ軍戦艦の動きを封じようと、遂に主戦場から五〇〇〇キロほど離れた宙域まで進出しディフトラ軍戦艦の前に立ちはだかった。月面基地からのミサイル攻撃も引き続き敢行される。

 これで地球駆逐艦、巡洋艦隊はディフトラ軍戦艦の砲撃に晒されることはなくなった。しかし却って、それは友軍戦艦の砲撃支援が受けられないことを意味し、さほど戦局に影響はないだろう。

 寧ろ、戦域を快速戦闘部隊との乱戦状態にある主戦域と、戦艦同士の砲雷撃戦を繰り広げる戦域に分けてしまったことになる。


「構うな。我々はこのまま敵艦隊を撹乱。敵戦艦は、他の戦艦に任せる!」


 ディフトラ軍巡洋艦の対艦高速エネルギー弾が正面装甲帯に直撃する・・・わずかに艦体が震えるがさしたる損害はない。ヒュウガを撃った敵巡洋艦は、後続の吹雪型駆逐艦が放った魚雷によって四散する。

 底なき漆黒の中で無数に生じる火球と敵味方の火線。

 秋田大佐の乗るヒュウガ、そしてその隷下の第二艦隊もまた、そういった光景の一端になろうとしていた。


「間も無く敵右翼を抜けます!」

「よし、両舷減速。艦隊を左右に分けて友軍艦艇と乱戦中の敵艦を各個撃破する。一戦隊と三戦隊は我に続け!二、四戦隊は方位0-8-0へ転進‼︎」

 主砲を撃ちまくりながら、ヒュウガの艦体が傾く。

 宇宙艦艇は宇宙空間を高速で機動するために、二五〇メートルに迫るヒュウガの艦体でも強いGを感じた。

「正面、混戦中のEU第二艦隊。」

「よし、本艦は巡洋艦を仕留める。後続艦は友軍に近接している駆逐艦から攻撃せよ!」

 ドン、ドドンッ‼︎ヒュウガの主砲から放たれた光芒が巡洋艦を貫き、一瞬で焔の塊に変えた。

「こちら日本艦隊。EU第二艦隊、これより戦線に介入する。」『ニッポン艦隊か!すまない助かる!』『ニッポン艦隊のおかげで敵艦隊に隙ができた。各艦陣形を立て直せ!』

 イギリス新鋭戦艦デューク・オブ・ヨーク、その前面に配された二基の四連装主砲がディフトラ軍駆逐艦を二隻まとめて葬った。その破片の煽りを受けた駆逐艦を日本艦が撃沈。

 敵艦隊と交戦中のEU艦隊に流れ弾が飛んではいけないので魚雷で敵艦を叩き、比較的遠距離の敵艦は粒子砲(パーティカルカノン)で撃沈破した。

 突然の後背からの攻撃に、ディフトラ軍艦隊は総崩れとなった。さらに態勢を取り直したEU艦隊の逆撃に遭い、損害は加速度的に膨れ上がっていく。

 日本艦隊の攻撃により、かなりの隻数が撃ち減らされたディフトラ軍快速戦闘部隊は、遂に反転し後退を開始した。各国混成航空団のうち弾薬に余裕がある機体や、月面から発射されるミサイルはこれを追撃したが、艦隊はこの追撃に加わらなかった。まだ敵戦艦の半数は健在であるうえ、地球艦隊の被った損害も相当なものであったからだ。


 地球艦隊が追撃を行わず、後退しながら砲撃を繰り返すため戦力を保持しているディフトラ軍戦艦も、その持ち前の砲戦力を活かせず、更に月面からの長距離ミサイル攻撃を警戒したか、快速戦闘部隊と共に後退を始めた。

 そして、彼我の距離一二〇万キロ。地球艦隊の攻撃はほぼ届かず、月面からの長距離ミサイルの追撃も功を成さなくなる距離。各国混成航空団も弾薬が尽き、追撃機が数を減らし始めていた。

 地球軍の追撃が緩くなった瞬間を突き、ディフトラ軍艦隊はワープしていった。


『作戦中の全部隊に通達。敵艦隊のワープを確認した・・・作戦宙域に敵艦な存在しない。損害確認の後、帰投せよ。』

「了解。」

 各艦の損害状況を集計していると、イギリス艦隊から通信が入った。

『本当に助かった。後で紅茶を奢らせてくれ。』

「いえ、礼には及びませんよ。」

『いいや、今回は奢らせてもらうぞ。飛び切り美味い紅茶を奢らせてもらう。拒否してもダメだぞ。」

「まさか我が艦隊全員にですか?」

『ははは、その通り。英国紳士は恩を忘れんものさ。』

「ではお言葉に甘えさせて頂こう。」


 いくつか言葉を交わし、秋田大佐は通信を切った。そして目線を艦長席に設えられたモニタに移す。艦隊の状況を映すよう設定されたモニタだった。

 [日本第二艦隊(月面日本艦隊):被害状況]と記された画面に、各艦からの被害報告が文字と艦を模した図形と共に連綿と連なっていく。

 現在、第二艦隊の総数は一八隻。その全てが、何らかの損害を負っていた・・・ここに艦名を連ねない艦は、傷付き、バラバラになって沈んでいった(フネ)達だ。第二艦隊以外の情報も統括するヒュウガには、他の艦隊の状況も入ってくる。多くが、第二艦隊よりも多くの損害を被っている。半数が撃沈破された艦隊すらあった。


 ここに名を連ねる事の出来なかった艦を思うたび、秋田大佐は自身の致した策が果たして最善のものだったのかを思惟してしまう。もしかしたら、おれがもっと別の判断をしていれば、吹き飛んだ艦から真空の宇宙へ投げ出され、ただ一人で死ぬ事を強いられる乗員達を減らせたのではないか―――と。

 だがそれが、無為な思考である事を彼は知っていた。

 今後の反省には成りこそすれど、現状を―――殉じていった乗員達の―――過ぎてしまった事実を変える事など不可能なのだから。

「―――こちら第三情報ハブ艦ヒュウガ。我、これより帰投する(RTB)。」


 ズゥン、と音が響いた。艦の各部に備え付けられたスラスターが火を噴き、艦の進路を決めている。先ほどまでの身体を引き千切らんまでの激しいものではない。ほとんど遠心力を感じないまま、ヒュウガは月面基地への進路をとった。

 その途上、白い船体に赤い十字マークを象った船とすれ違った。サイズだけならばこのヒュウガよりも一回り大きい・・・巨大な病院船だった。艦から投げ出されるも宇宙服を着ていてまだ生きながら宇宙を彷徨っている者や、真空の中に散った戦士達の遺体を収容するのが仕事だ。

 秋田は少しでも多くの人命が救われる様に、少しでも多く逝ってしまった者の骸が無事に家族の下に帰れる事を祈った。





 ・・・・・・祈るしか、できなかった。




挿絵(By みてみん)


今回活躍した扶桑型航宙打撃母艦三番艦『ヒュウガ』はこんな感じです。イセも同じ形状。

一、二番艦のフソウ、ヤマシロは後部甲板がV字状です。


右下のは第二艦隊のロゴマーク的なやつです。

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