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緑葉は太陽と出会い

「では早速、このグルニエール家の仕来りというものを説明致しますね」


グルニエール公爵夫人が、エリーを自分の部屋へと案内するなりそういった。


エリーは羊の毛のようにモコモコなシングルソファに座った。


「貴族にはそれぞれの家に仕来りがあるんですか?」


「そうね、上流貴族だと大抵はそうよ。私は下級貴族の方からここへ来たのだけれど。でもほとんどの家は同じような仕来りだから、一つでも覚えておくといいわ。」


夫人は大きな書斎机の椅子に座った。


エリーは夫人を見据えた。


「えっと、あの ・・・」


夫人はゆっくりと微笑んだ。


「私のことは、あなたの好きなように呼んでくださいな。」


「・・・では、お母様。 私に国一番の教育をしてください!」


エリーの言葉に<母>は驚いた。


「国一番?あなたはそこまでして何を求めるの?」


「貴女は最高の教育をして下さると言いわれました。そして私は、それを求めます。」


母はまさかそこまで娘が求めるとは思っていなかったので、目を見開いたが、やがて立ち上がると本棚から何冊かの古そうな分厚い本を取り出し、エリーに渡した。


「・・・この何冊かは私も読んだ本でね、これは『ヴィアナ王国紀』、こっちは『王族の暮らし』ね。どちらも面白いし、貴族の暮らしとしても勉強になるわ。

 まずは基本的マナーと仕来り、それから貴族の暮らし方を勉強しましょう。」


エリーはうずうずしてきた。


「はい!がんばります、お母様。」


「ええ。今日の午前はとりあえずこの宮殿の間取りを覚えたり、本を読んだりして過ごしてちょうだい。

 明日からは教材が届くからそれでやりましょう。午後からはダンスや歌、お料理のレッスンをしますよ。

 それから、あなたに専属の侍女をつけておくから、宮殿を回るとき道案内してもらってね。

 私はお昼まででかけているから。」


「分かりました。・・・あの、この本全部読み終えたら次に読む本をいただいてもいいですか?」


母はエリーの表情を見て頬を緩めた。


「いいですよ。では、さっそくいって来なさいな。」


「はい。いってきます!」


エリーは本を抱えて走り出した。


ドアの閉まる音を聞いた母は、一瞬表情を厳しくしたが、すぐ緩んだ。


「・・・本当、リリアンに似てないわ。大丈夫かしら、エリー・・・」


その言葉が表す意味をエリーが知るのは、もう少し後のこと・・・






「うーん・・・、いいお天気!宮殿の庭で読書ってすごく気持ちいのね。」


エリーは宮殿の庭の芝生でうーんと伸びをした。


そこへ、誰かがやってきた。                                                                         淡い東雲色しののめいろの膝までのドレス・・・と言うよりワンピースを身にまとった、茶色の瞳を輝かせ、豊かな卯花色うのはないろの髪を頭の上で束ねる少女。


いかにも貴族っぽくない。


「あんた?エリーって」


その少女は、エリーの前にどかっと座り込んだ。


「?」


ん?なに、この少女ひと。こんな人も貴族なの・・・?


しかし、そんなエリーの表情を読む間もなく、少女は話し続ける。


「私は、ミーフェ。リリアンの専属騎士だったわ。ま、今日からあんたの専属だけど」


「・・・・・もしかしなくても、あなたが侍女さんですか?」


「は?」


「え、だってお母様は専属の侍女をつけてくださると。」


真面目に話すエリーを見て、少女はため息をついた。


「あのねえ、この格好が侍女になんかみえないでしょ!?」


「そうなのですか。私、いままで侍女を見たことがなくてですね、ごめんなさい間違えました。」


「え!そーなの?」


「はい・・・」


なぜかこんな所で謝ることになろうとは。


しかしミーフェの底知れぬ気迫を感じ取った者ならば、無論謝っただろう。


「じゃあ、あなたは・・・?」


「今いったでしょ。専属騎士・・・・のミーフェ。きっと夫人が間違えて言っちゃったんだわ。あれ程言っておいたのに」


エリーは本に栞を挟んだ。


「専属って、私にずっと付いてるんですか?」


「ま、そんな所ね。私は命ある限り、もしくはこの役目から外されない限りあんたが死ぬまでこの命を捧げることになってるわ。ま、めんどいけど」


「まあ、でもなんで私に?」


エリーは明るく輝く太陽を見上げた。


ミーフェも芝生にねっころがって太陽を見据えた。


「決まってるわ、それはあんたがリリアンの代わりの養子だからよ」


「リリアン?」


「あっ、夫人に言うなっていわれてるんだった。リリアンはここ、グルニエール家の愛娘だった人であんたが来る前に死んだのよ。重い病気でね、まあ仕方なかったんだけど」


「私が来る前にってことは・・・」


「そう。あんたが来る前、私はリリアンの専属騎士をしてたのよ」


「そうだったんですか・・でも、仕方なかったって」


「ああ、その事?リリアンはね、実は恋をしたから。」


「恋??」


「そう。でもあんまり喋っちゃうと夫人のお説教をくらうからまた今度よ。それより、あんた剣は使える?」


「剣は少し父に習ったことがありますが、それが?」


きょとんとするエリーをよそに、ミーフェはうきうきし始めた。


「ほんと?私も剣使うんだけど、今まで相手がいなくって!よろしくね」


「え!?でもほんっの少ししか」


「いいじゃない!やりましょ!!」


剣・・・思い出したくもない、私のポリシーに反する存在。


いや、いや、いや〜〜!!


剣なんて嫌い!






何はともあれ、ここからエリーの貴族生活が始まるのです。









皆様のご意見、お待ちしております!!

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