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過去のロケットペンダント

エリーが目覚めた次の日の朝。



ミーフェは、王城の端に位置する牢獄で、エリーに矢を放ったスパイを睨みつけていた。




スパイは二人組みで、二人とも黒いマントに、黒い羽根付き帽子、そして何かの紋章が描かれたモニュメントを着けていた。





ミーフェは、その紋章を知っていた。




だからこそ、このスパイがカルビナ帝国だとすぐに分かったのだ。








「・・・・・・この者たちの処理を、私に任せてはもらえませんか?」


牢獄の責任者にそう話したミーフェは、その後、【牢獄投獄者処理任務責任委任許可証】の封筒を握り締めて、再び牢獄へ向かった。




スパイを、確かめるために。





あの人かどうかを、確かめるために。









「やっぱり、あなただったのね・・・・」




ミーフェは、潤みそうになる目に力を入れて、投獄されて弱りきったあの二人組みに呟いた。



「ミ、ミーフェ・・・か?何故ここに居るんだ?早く、助けてくれ・・・・」



「あなたを投獄したのはこの私よ!!!」


ミーフェは叫んだ。


その途端今までミーフェに喋りかけていた一人の中年の黒い男スパイが怯んだ。



「で、でも・・・・・・」



その中年の男は、怯えながらも叫んだ。



「私達は、家族だったじゃないか!!」





ミーフェは、もう泪を堪えられなかった。




ゆっくり瞬きをしても、泪は頬を伝い、首を勢いよく振って、泪を振り切らねばならなかった。



「それは・・・それは、もう昔の話よ。それに、裏切ったのはあなた達のほうじゃない!」


ミーフェはそう叫んでその男ともう一人が容れられている牢獄に飛び込んで、二人の黒いマントを掴み破いた。




マントを破られた二人から、そのやせ細った顔が現れた。



さっきから喋っていた男は白髪交じりの茶髪で、あらゆる方向に伸びた髭が、年をとるごとに刻まれていく皺を覆い隠しているようだった。


もう一人は、ミーフェとそっくりの髪を靡かしている女で、継ぎはぎだらけの村民服に身を包んでいた。





ミーフェは、暫く黙り込んでいた女を見た。



「・・・・・お母さん、なんでお父さんについて行ったりしたの?わ、私と一緒に・・・・私と一緒に家出すれば良かったのに!」



母と呼ばれた女は、お母さんという言葉に一瞬眉をひそめた。



そしてミーフェの母は、服のポケットからロケットペンダントを取り出して、ミーフェに投げた。



「・・・・・・・もう、家庭を壊したくなかった。だけど、あんたは出て行ったんだ。もうあんたは家族じゃないよ・・・」


「じゃあ、これは何だってのよ!?」


ミーフェは投げられたロケットを思い切り叩きつけた。



「それに・・・・・・サラのメッセージが入ってる。読みな。」




母の素っ気無い対応にいらいらしながらも、ミーフェはロケットを取り上げた。


『ミーフェ

 私は、毎日が暗く、希望が見えません。

 ミーフェが居てくれないと、とても心が締め付けられます。

 あなたのような人は、他にまわりに居ないんですもの。

 だから・・・此処に来て。私の元で、私を守って欲しいのよ。

 あなたが来なければ、私自らが、ヴィアナ王国に攻め込んでまで、あなたを取り戻すわよ。

 信じてるから、きっと来てくれるって。ミーフェなら・・・・・

                          サラ・アリエンテイル・カリオナ・デイビス』


「サラ・・・・・」






サラ。それは・・・







かつての・・・・公爵に勤める前に出会った、生まれてはじめての主人の名。






「あんたは、過去から逃げるのか?

 まあ、あたしがあれこれ言えやしないけどね」


母は、きっきっきと奇怪に笑いながら、夫を見た。


「お前はどうなんだい。何とか言ってみな」


妻の言葉に、ミーフェの父はため息をついた。



「わからんよ。まあ、いずれは過去のことも今の主人は知る羽目になる。

 今から伝えておくのもよし、後から王妃直々に知ってしまうのもよしだ。」





「・・・・・・・・・。」



エリーは、いずれ知ってしまう。




ならば、自ら切り開いてみせよう。










運命の扉を。






ミーフェは、動きやすく作られた専属騎士の服裾を翻し、牢獄に鍵をかけてあっという間に走り抜けていった。




その足は、王のいる、執務室へと向かっていた。





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