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芽は濡れて

                                                                                           馬車に揺られること一時間。


ようやくエリーとジェイガンは、高級住宅街の一角にたたずむグルニエール家にたどり着いた。


「ここが、グルニエール家・・・すごく大きいお邸ね」


エリーは感心した様子で呟いた。


「本当だ・・・うちとは比べ物にならないなあ」


「ふふ、そうだね」


二人して門の前で佇んでいると、門番がやって来た。


「エリー・マリヴェナさんとジェイガン・マリヴェナさんですか?」


二人は改めて姿勢を正した。






「本日は、わざわざ此方こちらまで来ていただいて誠に有難う御座います。

 私の願いを聞いてくださった事は一生忘れません。」


グルニエール公爵夫人こと、リーブ・マフィー・グルニエールはエリーとジェイガンに深くお辞儀した。


夫人は初めて見るだけでも相当の気品と教養が感じられるとても美しい人であり、同時に何処か亡くなった娘を思うような影を帯びた眼差しがあった。


ジェイガンは夫人のお辞儀に慌てた。


「そんな、グルニエール夫人、顔をお上げください。エリーはもう貴女あなたの家族なのですから」


エリーも高級ソファの上で身をよじった。


「そうです、リーブさん。私はあなたの娘になるんです。」


夫人は顔をゆっくりと上げると、ジェイガンとエリーを交互に見据えた。


「・・・いいのですか?これから貴方達は家族ではなくなるのですよ」


エリーはうなずく。


「もう覚悟はしています。これで父様が出世してくれるなら、安いものですし」


「・・・本当に素直で正直なのですね・・・分かりました。貴女に最高の教育と場所を与えます。貴女が幸せになれる様に、最大限の手をつくしましょう。」


夫人は柔らかな笑みを浮かべた。


「有難うございます、夫人。これでエリーも幸せです。」


ジェイガンは深いお辞儀をした。本当の気持ちを隠すかのように。


「では、私はこれにて・・・エリーを宜しくお願いいたします。」


ジェイガンは顔をあげるとエリーに笑いかけ、執事に連れられて客間を出た。






エリーはその間、立ちすくんでいた。






それから四年の間の月日、最愛の父に会えなくなるとも知らずに・・・





ジェイガンは馬車に揺られながら、額を覆った。

いつも強いその瞳からは、ただ只管ひたすら涙が溢れた。


「・・・っつ・・・!!」


もう少し、もう少しだけエリーが傍に居てくれたならどんなに心強かっただろう。


しかし、自分は言えなかった。


言えば、吉都きっと愛する娘が悩むから。


エリーの夢を、奪ってしまうから。


だから、こうするしかなかった。






ジェイガンはただ、涙を流した。


















皆様のご意見、お待ちしております!!

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