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新たなる花の運命





それからの毎日は、飛ぶように過ぎ去っていった。





エリーは夫人からこれまでに習ってきたことを確かめるテストを満点でパスした。夫人は、これ以上の出来は無いと言ってくれた。





そしてエリーは、社交パーティーで王との婚約を、発表した。









「なんか、あっという間だったわよね、エリーがここに来てから」


ミーフェはエリーの後姿を見つめながら、懐かしむように呟いた。


エリーは小さな箱にお気に入りのネックレスや宝石を仕舞いこみ、トランクにはいつも使っているハンカチや、羽ペンと世界地図などを詰め、最後の荷造りを終えようとしていた。



最初は侍女がトランクを持ち出してきたのだが、エリーはそれを見て自分でやりたいと申し出てきたのだ。




エリーは箱の留め金をパチンと閉め、トランクに最後の荷物を詰め終えたとき、ふと手を止めて、上を見た。


「・・・もう、ここには、居られないんだよね。なんか、実感が沸かないんだ・・・今日で、ここを去るなんて」


ミーフェは深呼吸をして、頷いた。


「・・・うん。」




二人は、しばらくじっとエリーの部屋を見つめていたが、突然エリーが言い出した。



「私、庭園に行ってこようかな。木陰で、今までのこと、振り返って見るの。」


ミーフェは笑って立ち上がった。


「あなたらしいじゃない。行きましょっ、さあ、ほら!」


エリーとミーフェは手をつないで、最後の庭園に向かった。









「あなた、悲しい?」


大きなテラスで、手すりに寄り添っていた夫人が、その隣で風に髪を靡かせている公爵に聞いた。


「・・・・・娘を嫁に出すときがくるなんて、思いもしなかったんだよ。それが、こんなにも早くに訪れたんだから、もう何が何だかサッパリだ。」


公爵は、微笑みながら、丁度見える庭園にエリーたちがやって来たことを認めた。


「そうね。私も、驚きと不安を隠せない・・・。でもね、これだけは言える。言うことができる。」


夫人は、遠くで木陰に向かうエリーを見て、そして雲ひとつない天を見た。


「エリーは、きっと国一番の花となるわ。あの子なら、王と協力しヴィアナ王国を最良の道へ導いてくれるに違いないでしょう。」


公爵も天に顔を向けた。


「そうだな。ヨーアンとエリーならば、きっと。」







エリーとミーフェは時間まで様々なことを語り合った。




エリーとミーフェが最初に出会ったときのこと。



夫人の最初の授業。



公爵の軽蔑事件。



乗馬の楽しさ。



王との出会い。




話題は、尽きることが無かった。



やがて、数人の侍女が、あの箱とトランクを持ってやって来た。


「エリーお嬢様、残りのお荷物は此方こちらで宜しいでしょうか?」


「うん、ありがとうセト。あなたにはお世話になったわ。他の皆も、ありがとう。」


エリーは立ち上がってお辞儀をした。


侍女達はとんでもないとばかりに手を振った。


「私、エリーお嬢様といられてとても楽しかったです、こちらこそありがとうと言わせていただきます!」


「私もです!お嬢様が乗馬をしているときの姿はとってもお綺麗でした!!」


「お嬢様はとても勤勉でお淑やかで、社交パーティーではいつも花形でしたもの!」


「私、お嬢様の傍に居られたことを、とても誇りに思っております!」


「私も!」



侍女たちは競うように叫んだ。


エリーは、瞳をうるうるさせて、侍女達に駆け寄った。


「ありがとう、みんな・・・私のこと、忘れないでね・・・!」


侍女たちは涙を拭った。


「はい、絶対に忘れません・・・ではお嬢様、お時間です。参りましょう」


エリーは侍女達に囲まれながら、大広間に移った。






「エリー」


夫人の声がしたので振り返って見ると、窓際に公爵と、公爵夫人の姿があった。


「お父様、お母様。お待たせしました。私の準備は終わりました」


「そうですか、ではもう出発しましょう。」


夫人はそういうと、侍女に帽子とローブを持ってこさせて、エリーにゆっくり着せた。


「もう春はすぐそこといえど、まだ肌寒いですから、ちゃんと着ておかないとね。では、行きましょう」


エリーは、涙を押し隠して、笑った。


「・・・はい。」






グルニエール邸の大きな正面扉が開かれると、外には護衛のため馬に乗った騎兵隊や、王宮に移動するまでの世話係の侍女が乗るための小さな馬車、そしてエリーとミーフェ、公爵、公爵夫人とお付の侍女セトが乗り込む大型の高級馬車が、白馬の馬と共に待機していた。


「すごく大きな馬車・・・これに乗っていくんだわ。」


エリーは感嘆しながら、屋敷に残る侍女や護衛兵、執事に別れを告げて、馬車に乗り込んだ。







エリーはセトが入れたハーブティーを飲みながら、窓の外に映る景色を見た。


遠くに、緑に囲まれた王城が見える。




私、もう公爵令嬢じゃなくなるんだ・・・




エリーは、不思議な気持ちで、その風景を眺めていた。





その時、騎兵隊の叫ぶ声を聞いた。


「何者だ!」


「バリン!!!」



騎兵隊のその声と、エリーの横の窓が割れたのが同時だった。




自分の左腕に深く矢が刺さっていることが分かったときには、もうエリーは倒れこんでいた。




頭の意識が朦朧とする中、エリーはガラスの破片の向こうに、馬に乗った黒い人影を見たような気がした。





ミーフェが馬車から飛び降りて、その黒い影に向かっていくところを最後に、エリーは瞼を閉じた。











いきなり倒れました。


もしや、ネタ切れ!?もうネタがないのか自分!!

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