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二人の気持ちは空で繋がり




「エリー、起きて!ああ、大丈夫かしらこの子!ねぇ、エリー!目を開けて!」


誰かの慌てる声を聞いたエリーは、夢の中から素早く現実に戻った。



「う・・・お母様・・・?ここは―――」



「エリー!まあ、あなた見て!この子ったら!」


母はエリーを抱き起こした。夫人はラベンダーのいい香りがした。


エリーは暫く目をパチパチさせて、頭を叩き起こし、すぐに夫人とその後ろでオロオロしている父を見て謝った。


「ご、御免なさい!!私ミーフェと一緒に果樹園を散歩してたんだけど、急に雨が降ってきて急いでここに駆け込んで・・・!ってあーー!王様は!?王様はどこ!?」


「王様?ヨーアンならさっき私達のもとに来てエリーとミーフェの場所を教えてくれたよ。もしかして、会ったのかい?」


公爵はエリーに訪ねた。


エリーは、少し顔を赤らめて頷いた。


「うん。ここってね、王様の隠れ家なんだって。だから、私達がここに駆け込んだら、王様がやってきて、助けてくれたのよ」


「何だって!?ここがヨーアンの隠れ家!?こんな所で過ごせるのか・・・!」


公爵は感心したように小屋を眺めた。


「で、エリー大丈夫!?」


夫人がエリーの体をはたきながら尋ねた。


エリーは自分の顔をペタペタと触って確かめた。


「うん、私は平気。そういえばミーフェは―――?」


「ここにいるわ。さっき起きてあのお魚食べてたんだけど、あれもまた美味しくって!」


ミーフェはエリーの元にやってきてちょこんと座った。


「うん、あれ凄く美味しかったわよね。」


エリーはミーフェに請合った。



「じゃあ、そろそろ屋敷に帰るか?バスルームで熱〜い湯に浸かったらどうだろう?」


公爵は寒そうに肩を震わせてエリーとミーフェに提案した。二人は素直に頷いた。

















「ぶっちゃけエリーは王様のこと、好きなの?」


ミーフェはそう言いながらバスローブを着て、エリーの部屋の大きなベッドに横たわった。


「え!?ミーフェ、あなた本当にぶっちゃけね・・・」


エリーは侍女に出してもらったミントティーを危うく吐き出しそうになった。部屋を出ようとしていた侍女も立ち止まって、くるりと回ってエリーのほうに戻ってきた。


「お嬢様、誠に申し訳ありません。茶菓子を、出し忘れていたもので。」


これが言い訳だ。エリーはその侍女と親しかったので、辛うじて「分かったわ、すぐに取ってきてね、セト。」とだけ言った。


侍女はお辞儀をすると、すぐさま部屋を出て急いで茶菓子を取りに言った。


きっと心の中では早く話が聞きたくて仕方が無いに違いない。




エリーはため息をついた。


「・・・自分でも、よく分からないの。そりゃあ結婚すれば、相手のことがだんだん見えてきて、好きか嫌いかハッキリするんだろうけど、今はまだあんまり親しくもないしね。」


「そっか、エリーは・・・・・」


ミーフェは侍女が戻ってきたのを見計らって叫んだ。


「いつかは王様を好きになるってことね!」


「うぎゃあぁぁ!何でそうなるのよ!?嫌いになるかもしれないじゃない!」


エリーは顔を真っ赤にして叫んだが、ミーフェと侍女が横目でニヤリと笑っているのを見ると、これは諦めるしかない・・・と思わざるをえなかったのだった。


侍女が持ってきたスコーンを一つ摘み上げてベッドで食べ始めたミーフェは、エリーが立ち上がって窓際に行き、窓の外を見つめる姿に思わず動かしていた手を止めた。



エリーは宝石のように輝く花畑を見つめ、一人呟いた。



「・・・好きも嫌いも、どちらも同じなのね・・・」




「?」


遠くで聞き耳を立てていた侍女とミーフェは顔を見合わせて、首をかしげた。



「エリー?どしたの?」


ミーフェが声をかけてみる。



エリーはその声に驚いて振り返った。




や、やば・・・私人前で独り言、言っちゃった・・・!




「ななな、なんでもない!!私!きっと!きっとー・・・空耳よ!ねえセト!?」


「え・・・あの、そのー、私はてっきりエリーお嬢様の声かと?」


「うわー!違うわよ。絶対違うから!!あら、あと三分で午後の授業始まるわ!勉強道具は何処かしら?ミーフェ、行くわよ。セト、明日社交パーティーだからドレス選んどいて!」


エリーは一方的に会話を終わらせて、片手に勉強道具、もう一方でミーフェを引きずって、走り去った。




侍女は暫く黙り込んだ後、クスクス笑い出しながら茶器を片付け始めた。











「ヨーアン王、いつもいつも城を抜け出されては困ります!王としての自覚をもっとお持ちくだされ!」


王の側近・ネフルアードは、王のムスッとした顔を睨みつけて説教した。


「しかし、私は仕事もきちんとやっているだろう?なのに何故怒られなければならん!?」


王も負けじと反論する。まあ実はそうなのだ。


「じゃあ何故決まってパーティーや宴のときに抜け出すのです?」


ネフルアードはきつく問いただす。


「それは私が行きたくないからだ!どうだ、一番筋が通ってるだろう?」


ヨーアンはキラーンと自信ありげに側近を見下ろした。ヨーアンは背が高かった。


そしてその言葉で側近はあきれ果てて、もう宜しいとばかりに肩をすくめた。


「あなたは未来の王妃様と顔を合わせたのでしょう?ならば」


側近は王の書斎にドンと書類の山を積み上げて、くるりと背を向けた。


「少しは人と顔を合わせてくださいね。あなたは、とてもいい王様なのですから。じゃ、その書類よろしく御願いしますよ」


それだけを一気に言いえると、ネルフアードは王の仕事部屋を後にした。




ヨーアンはそろそろ夕暮れ時になる、薄い茜色をした空を見た。



なんだか、姫はいい人だったな・・・面白かったし。



「・・・・人、か。そういわれたって、どうすればいいのか・・・」



ヨーアンは、大きな欠伸をして、いつもより早く夕食の準備を言いつけた。




少し今までのことを振り返って見ようと思い、前の話を読んでいたら今回の話はなんだか調整みたいな感じになってしまいました・・・。

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