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花の芽は天へと架ける




この物語は、ヴィアナ王国という洋風の国を中心とした異世界の物語です。楽しんでいただけたら嬉しいです。




※多少修正を致しました。読んでくださった方、御免なさい。

あるところに、美しく聡明でそれはそれは心の優しい少女がおりました。


毎日毎日、休むことなくるくると働く彼女は町の中でも有名であり、少女の父は王城で働く騎士団長とあって、婚約や結婚話は毎日のように飛び込み半ば取り合い状態になっていたといいます。


しかし、これはあくまで他人から見た様子。


彼女から見れば、けしていいものではなかったのです。






「あ!!エリーちゃんだぜ」


「ほんとだ!おーい、エリーちゃーん!!」


青年二人が顔を輝かせ手を振る先には、井戸で水を汲む一人の少女の姿があった。

エリーと呼ばれた少女は、水で満たされた桶を置くと咄嗟に笑顔を取り繕った。


「こんにちは、マークさんに、カインさん。本日はいいお天気ですね」


「そうそう、ほんっといー天気だなっ!!まるで俺とエリーちゃんの関係を祝福するかのようだぜ!」


「ちがうぞマーク!きょうのお天道様おてんとさまは僕とエリーちゃんの事を祝ってるんだ!それに、お前とエリーちゃんとの関係ってなんだよ!今日のお天道様は友達以下の関係を祝福してるって事かよ!」


「な、な、なんだと〜ぉ!!」


エリーはため息をついた。いつもこうなるから会いたくないのだ、男とは。


「あ、わたし用事があるので失礼させていただきます。」


エリーはぺこりとお辞儀し、桶に手をかけた。

しかしエリーのファンクラブにまで入っているマークとカインは、その機会を見逃さなかった。


「僕、その桶家まで運ぶよ!」


「俺も人肌ぬぐぜ!まかしとけーい!」


エリーはにっこり笑うと、桶を二人に渡した。

ふふ、男は力仕事にこそ当てはまるわ。


「じゃあ、お言葉にあまえて・・・」


二人のガッツポーズは傍からみてもまるわかりであった。






「ただいま、エリー。今日はいい天気だったな。」


あの桶の水が使われたスープの火加減をみながらエリーはとびきりの笑顔をみせた。


「父様!今日は早いのね、もしかしていいお天気だから?」


エリーが唯一慕う父、ジェイガン・マリヴェナは威勢よくわらった。


「はっはっはっ!残念だがいい天気ぐらいでは仕事は終わらんのだよ、実は・・・」


エリーはスープを深皿につぎ始めた。


「あ!もしかして昇格するとか?ねえ、食事の時に聞かせて!」


うきうきと昇格のことについて話し始める娘を見つめる父の顔が少しだけ曇っていることにエリーは気がつかなかった。






「よーし?」


エリーはスープをスプーンですくいながら父の言葉を聞き返した。

父はロールパンを千切りながら頷く。


「そう、養子だ。実は・・・上流貴族のグルニエール公爵の一人娘が亡くなってな・・・。公爵夫人は今すぐにでも美しく教養を兼ね備えた娘が欲しいと」


「それが、私?」


ジェイガンは顔を引き締める。


「いや、まだ決まったわけじゃないが・・・それに行くかどうかはエリーが決めることだ」


どうする、というような目つきで見つめる父の目には、まだ迷いがあるようだった。

そしてエリーの輝くような瞳にも。


「・・・一晩だけ・・・一晩だけ考えさせて。」


エリーはそれだけ呟いた。






「私にとっての今の生活は、とても幸せだとおもうわ。」


そう、心の中のエリーが呟く。


「でも・・・養子になっていままでの生活よりもっと、もっと幸せになれたら・・・」


もう一人の自分が言う。


この生まれ育った地、自分に明るく接してくれる人、そして優しい父様。


付きまとっていたあの青年たちでさえも、今では愛おしく感じる。


そのすべてに別れを告げる勇気が、自分にはあるだろうか。


エリーは真夜中のベッドからゆっくりと起き上がり、窓辺に映る月を見つめた。


しばらくして、エリーはゆっくりと目をとじた。



もう彼女に、迷いはなかった。






小鳥が鳴き出し、朝日が昇り始める夜明けと共に、エリーの最後の家事が始まる。


エリーは鶏卵を釜戸の熱いフライパンに四つ割りいれた。


「父様、おはよう!今日もいいお天気ね」


エリーはフライパンの卵を見ながら言った。


「おはよう、エリー。・・・で、決めたか?」


父はさりげなく言ったつもりだったが、エリーにはすぐわかった。


「・・・私、養子にもらってもらうわ父様。みんなと離れるのはすっごく悲しいけれど、養子になれば父様は公爵様に力をかりて出世できるし、私も・・・きっと幸せな生活や、結婚ができると思うもの。」


「本当にいいのか?」


その一言の中から父の気持ちが痛いほど感じ取れた。

しかし、父の心配そうな表情にも、エリーは動かなかった。

 


もう、決めた事なのだ。 自分はもう<道>を選んだ―――あとは道をたどって突き進むしかないのだ。




エリーはいつも父に見せるとびきりの笑顔で言った。


「私、もう決めたの。たまにここにも遊びにきたいわ、いい?」


父、ジェイガンは娘の笑顔を見て、深い笑みをうかべた。


「あぁ、いつでも待っているよ、エリー。」





―――そして、時は過ぎ行く。二人の思いを引き裂くように、ヴィアナ王国の運命さだめが重くのしかかるかのように―――

















 


 

私はこのヴィアナの花がデビュー作品なので、まだまだ直す所がたくさんあると思います。そのようなものがありましたら、意見をお聞かせください!

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