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4話気に入られました



「さぁ、早く乗れ」


エレンが馬車に乗れと勧めてきた。

だがサーシャが、


「エレン様、街に向かう前に兵士達の怪我の手当てをしませんと」


ああ、そうだった。

このお嬢様みたいな人のキャラが強すぎて兵士達のこと忘れていた。


「よければ僕が回復魔法で治しましょうか?」


落ち着いているように聞こえているが、内心では少しホッとしていた。

それは今までより上位の魔物で、数も今まで相手してきたよりもずっと多かったからだ。


それを計算に入れると奇跡のような状況だが、それを覆してしまうほどの神様からもらった力がすごいと再確認した。



「そうか、それは助かる」


「いえ、困った時はお互いさまですよ」


そう言って僕は怪我をしている兵士達全員に蛇遣い座の回復魔法をかけていった。

まだ僕にはいっぺんに治すことができず、重傷者から順に治していった。


「すまねぇな、兄ちゃん」


「お役に立てて何よりです」


周りの状況を見てみると、戦闘に集中していたから気づかなかったが相当切羽詰まっていたことが見てとれる。


今回の戦闘で兵士三人が亡くなってしまった。

囲まれていた状況で三人なんてついていた方だけど

やはり、全員を助けられなかったことが悔しかった。


「三人死んでしまったか」


エレンは辛そうにそう呟いた。


「運ぶこともできませんし、亡くなった方々は埋めて遺留品だけでも遺族に届けましょう」


サーシャも落ち着いているように見えるが、声が少し悲しそうだ。


「僕がアイテムボックスに入れて運びましょうか、せめて遺族にだけでも最後にあわせてあげたいですし」


僕が亡くなった方を見るのは祖父が亡くなった時以来で初めてではないがまるで交通事故にでもあった亡骸で、骨は折れ、出血は酷く、人間としての原形をとどめていなかった。


この世界ではあり得ることだと自分に言い聞かせ、次はこうなるまいかと胸に誓った。


でも、これではあまりにも悲しいので傷を治した。

これで眠っているように見えるので安心しておくれると思う。


「何から何までまですまないな。準備もできたようだし行くとしよう」


表情はポーカーフェイスのままだが彼女の目から優しさを感じた。


そして僕たちは、街に向かうために馬車に乗った。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「えっと」


なんだこの質問しづらい空気。

もともと凛と母さんくらいしか話したことないくらい

女性とは接点がないのにそんな僕にとってこの状況はハードだ。


「あー、自己紹介がまだだったな。私はエレン・ウィル・ハート、これから行く街の領主の娘だ。よろしくな」


この重たい空気に口火を切ったのは両腕を組み、男のような喋り方をしながら上から目線で話して来る少女だった。

だがその上から目線の態度は不思議と鼻に付くようなことはなかった。

少女はブロンドの髪を腰のあたりまで伸ばし、目は赤に光が差したような色をしていてとても魅力的な容姿をしている。


お嬢様みたいな人じゃなくてお嬢様だった。

それなら上から目線も納得かな。


「僕はユウト・ホシノと言います。よろしくお願いします」


無難な挨拶をした。

後から質問されて辻褄が合わなくなると困るからだ。


「私の隣にいるこいつは」


エレンが自己紹介を進める。


「サーシャ・クロノスです」


サーシャは素っ気無く答えた。


サーシャはポニーテールの茶髪で目元が少しつり上がっており、とてもスタイルが良くスラッとしている。


「先程は本当に助けてくれてありがとう。それに兵士達の亡骸まで運んでもらって。きちんとしたお礼がしい」


彼女達は頭を下げた。


「大丈夫ですよ、困った時はお互い様です」


「そう行ってもらえると助かる。 街に着いたら私の屋敷に招待しよう」


エレンがそう言うが、この誘いを受けるべきだろうか。

けど、僕には貴族の作法なんて知らないし、でもこの世界のお金なんて持ってないから足掛かりとして少しは欲しいところだけど、恩着せがましいと思われたらやだからなぁ。

よし、お金は自分でどうにかしよう。


「すみま………」


「ユウト殿、まさかエレン様の招待を断ろうだなんて思っていませんよね」


こ、怖い。

顔は笑っているけど、絶対怒っているのがわかる。


「謹んでお受けいたします」


「そうか、それは良かった」


話題を変えよう。

ふと彼女達の来ている服が目に入った。



「そ、その格好お二人は学生なのですか?」


よく見れば二人とも豪華だが同じ服装で、うまく言えないけど日本の学校の制服とデザインが似ているところがある。

制服は黒と赤が基調となっている。


二人ともスタイルが良くてなんだか見とれてしまいそうだ。


「これか、これは王都の学院の制服だ」

エレンは何を当たり前のことを、とでも言うような物言いだった。


なるほど、この世界にも学校というものは存在するのか。

それにお嬢様のエレンが行くようなところだ、とでも有名なところなのだろう。


「もういいだろ、さあ本題に入ろう」

エレンは目をワクワクさせながら話し始める。


「今度は私の質問だ。おまえ固有魔法が使えるだろう。それも最低でも2つ」


エレンはずっと我慢していたことを投げかけてきた。


さっきの戦闘でバレちゃったのかな。


「ん、2つ?」

あれ?僕が神様からもらった魔法は一つなのに。


「違うのか?でも植物を操ったり、紫色の炎を出したり、二つとも固有魔法でないと説明がつかないぞ」


んー、この人達は信用できそうだけど貴族なんだよなぁ。


誤魔化してもいろいろ詮索されそうだし正直に言うか。


はぁ、あとあと面倒になったら逃げるか。




「僕は、エレン様が思っているとおり固有魔法が使えますけど、一つだけですよ」


「そんなバカな。じゃあどういう魔法なんだ、教えろ」


エレンは身を乗り出し食いつくように聞いてきた。

その顔は探究欲にに満ち溢れた顔だ。

正直怖い。


「天体魔法って言います」


「どういった魔法なんだ」


「僕にもまだ分からないところが沢山あるので説明のしようがありません」


この世界にも星座はあると思うけどそれは絶対に僕の世界のものとは違う。

だから説明すると食い違いが出るかもしれないし、下手すると別の世界の人間だとバレてしまう恐れがある。

それに、神様が言っていたように固有魔法は特別でその性質を知るのに苦労するものもある。


「そうか、確かに固有魔法でも分かりやすいものもあれば分かりづらいものもある。おまえは後者だったというわけか。その割にはなかなか使いこなしているように見えたぞ」


エレンは小首を傾げ僕の表情を見ながら小悪魔のように意地悪そうに聞いてきた。


「色々実験してみたんですよ」


なかなか鋭い。


そしてエレンは途中までは機嫌よく聞いていたが突然顔を曇らせた。


「なぁ、おまえ敬語はやめろ。さっきまで我慢して聞いていたがおまえに敬語で話されるとなんか嫌なんだ。そして私のことをこれからエレンと呼べ」


照れくさそうにそうエレンがそう言い切ると、


「それはいけません。平民が貴族に礼を尽くすのは当然です」

サーシャが突然会話に入ってきた。

僕達の話ちゃんと聞いてたんだ。


ポーカーフェイスの顔が崩れ、その顔はとても怒っているようだとわかる。


「そんなの公式の場だけでいい。それに私はこいつを気に入っている。異論は認めない」


サーシャが言った反論をそう言い放ち突っぱねた。


ご、強情だなぁ。

それに勝手に気に入れられてるようだ。


「……わかりました。ですが、この男のどこを気に入れられたのですか?」


「そんなのこいつの固有魔法に興味があるからに決まっているだろう。それにこいつの実力がどのくらいなのかもっと見てみたい」


エレンがわくわく顔でそう言うと、サーシャも折れたようだ。


「なぁ、ユウト。さっきの戦闘で使ったていた武器は魔剣か聖剣の類か?」


エレンは目を輝かせながら聞いてきた。


またまた質問ぜめ。

息つく暇もない。


「僕にもよくわかりません」


「そうか」

僕の答えを聞いてのテンションの下がりようがすごい。

「ならさっきの剣を見せてくれ」


「いいけど、エレンが触って大丈夫かなぁ」


ちょっと不安になってきたので雪丸を出して鑑定してみた。









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