3話出会い
朝、目が覚めた。
神様からもらった食料を朝食として食べ、寝具を消し、身じたく済ませ結界を解いた。
「よし、今日も頑張るとするか。っとその前に」
そして僕はコンパス座の力でアイテムボックスから入門書を取り出した。
これ、最初の最初でしか活用してないし、昨日の夜アイテムボックスから食料出すまですっかり忘れていた。
つい昨日のことなのに、でも昨日は色々あったからしょうがない。
それに入門書は魔法の使い方などの基礎的なことしか書いていなかった。
「新しい星座、ぶっつけ本番で使っても多分どうにかなりそうだけど、ある程度頭の中でイメージするために使い方を覚えたり、もっと工夫しなきゃな」
けど入門書が光っていた。
まるで昨日までとは違うよ、と言っているようだ。
ふと開いてみると、
「前に書いていたことと全然違う」
さっきも言ったけれども昨日までは基本的なことだったのに、この入門書には今のところ入手している星座の使い方や応用が書いてあった。
だからなのか結構白紙のページがあり、前回よりも分厚くなっていた。
まだ四分の一ないくらいなので記入されているページより白紙のページの方が多く、記入された内容は今持っている星座レベルによって使える範囲のことをしるしていた。
最初のページから読むと、現状天体魔法は違う星座だと同時に三つまでしか使用できないことや二つの星座を合わせて応用したりすることができると書いてあった。
つまり
「昨日、僕が最大いくつまで使えるか試したことは、無駄だったってことか」
それは置いといて、読み進めていくと羅針盤座と六分儀座を複合すると、マップだけじゃなくて、現在の魔物の位置なども表示してくれるということが分かった。
この本はどの星座と星座を複合するとどういう結果地なるか、少しだが書いてくれている。
とりあえず、試してみることにした。
羅針盤座のマップに六分儀座の探知を合わせてみた。
すると、マップに点在する赤い点が表示された。
これが魔物の表示だと察した。
それからマップをスライドさせていくと、青い点20ほどが赤い点に囲まれてあることがわかった。
その青い点がなんなのかタップし、表示すると人間と書いていた。
「早く、助けないと」
ここかはだいたい1kmくらい離れていることがわかった。
僕が着くまでぜんめつだけはしないでくれ。
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今から15分ほど前。
「やっと夏休みに入って自分の領に帰れるな」
彼女の名はエレン・ウィル・ハート。
王都の学院に通っており、学院が夏休みに入ったので王都から自分の親が治めている領地に向かって帰っているところだ。
「そうですね。三ヶ月ぶりですから。ところでエレン様は夏休み中何をなされるのですか」
彼女はサーシャ・クロノス。
エレンに仕える騎士でエレンと同じく王都の学院に通っている。
「サーシャはいっつも長期休暇に入るとその質問をするな」
頬を膨らませながら少し呆れているように彼女が言った。
「また、魔法についての研究をするのですか?」
サーシャは冷静に返した。
「当たり前だろ。私にとって魔法について学ぶことは自分のためなんだから」
「確かにそうかもしれませんがエレン様は貴族の次女、それにただの貴族ではなく四大貴族の内の一つハート家の方です。そんなに魔法ばかりに力を入れるのではなく、もっとご自分の立場についてお考え下さい。それに言葉遣いも。」
「公式の場ではちゃんとした受け答えをするし、やるべきことは全てこなしているぞ」
「そうですが、わかりました。ですが、十日後に王都でパーティーがあるのでお忘れなく」
「分かっている」
馬車が止まった。
馬車の出入り口が勢いよく開き焦った様子の少し身なりの良い兵士が現れた。
「どうした」
何となく状況を察したようにサーシャが聞く。
「大変です、オーガ、オークに囲まれました」
「何体ですか?」
「オーガが15体にオーク20体ほどです。我々は二十名、捌き切れません。サーシャ殿お力添え願います」
「わかりました。エレン様は馬車で待機していて下さい」
「ダメに決まっているだろう。私も戦おう。私は守られっぱなしは嫌なのだ。それにお前達に守られてばかりでは私に仕えられる資格はない」
この言葉には心にくるものがあった。
「エレン様は頑固者ですから、仕える身にもなって下さい」
サーシャはこれは説得できないと思いその言葉には力がなかった。
「わかりました。我々兵士が円のように陣形をとりますのでエレン様は円の中で援護をお願いします。それからこの中ではサーシャ殿が一番お強いので特攻をお願いします」
「了解」
皆馬車から降り配置についた。
囲まれていると言っても魔物との距離そこそこあったが皆の準備が出来てからオーガ、オーク共にエレン達に向かって走り出した。
サーシャは陣形を飛び出しまず数が多いオークを狩っていった。
オークの手には棍棒が握られており、棍棒で殴ろうとするが、サーシャはそれを華麗に避けながら手にある細剣で薙ぎ払っていく。
「造作もない」
一方エレンの方はガチガチに守っているがオーガの攻撃が兵士達の防御を削っていく。
「なんて威力だ。持ちそうにない」
「頑張れ、自分を奮い立たせるんだ」
「爆発」
エレンがその間に魔法を放ち倒していくが一体ずつでしか倒せられない。
現状まだ5体しか倒せていない。
そのからあれよあれよと兵士が倒されていき防御が突破されてしまった。
「エレン様!」
ちょうどこちらを見ていたサーシャがエレンの下まで走ってくるが間に合わない。
と、その時
「えっと、大丈夫ですか?」
黒髪の男がオーガの攻撃を刀一本、片手で受け止めていた。
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まさか1kmを走って三分で着くとは思わなかった。
それになんかやられてる感じだったし女の子が攻撃されてたから条件反射で出てきたのはいいけど、今までの相手とは大きさからして全然違う。
皮膚が青色でこの巨体オーガってやつだろうか。
考えるのは後だ。
まずは目の前の敵を倒さないと。
「えっと、大丈夫ですか?」
「あっ…ああ、すまない」
じゃあ行きますか。
まず受け止めているオーガを雪丸で薙ぎ払った。
倒されたオーガの切り口から氷柱のように尖った氷が飛び出していた。
そして近くにいた四体のオーガも雪丸で切ると切り口から同じようなことが起きた。
それからもう二体のオーガを魚座の水の力を使い
「水球」
水の球3mほどのを二つ出し二体のオーガを包んだ。
そして雪丸を振り、その剣圧が冷気に変わりオーガを包んだ水の球を凍らせた。
そして残りの三体は乙女座の力で身動きが取れないようにする。
「植物操作」
近くの木の枝を操りオーガを捉え、山羊座の力で倒す。
「着火」
木の枝からに闇の炎を流してどんどんオーガに向かい進み数秒後にオーガは丸焦げになった。
新しい魔法を使えて色々収穫があったな。
でも、さすが雪丸の威力が凄まじかった。
なんせ刀を振った剣圧で物を凍らすことができるんだから。
「おい、そこのお前剣を捨てろ」
「えっ」
あれー助けたつもりだけど敵対心を持たれてしまった。
「あの、僕は貴方達が魔物に襲われているのがわかったので、助けに来たんです」
ここは大人しく言うことを聞こう。
僕、悪いことしてないのに。
「サーシャいいだ。こいつは私を…いや、私達を助けてくれたんだ。そんな態度では失礼というものだ」
「ですが、……わかりました」
「で、お前はここで何しているんだ?見る限り村人だろう。おまえ」
なんて答えよう、出来るだけ誤魔化しやすいものを回答しよう。
「えっと、そうです。田舎の村からこの先の街まで行こうと思い、ここを通りました」
「村人ならばエレン様に膝をつきなさい」
ひょっとしてこの人、貴族様なのだろうか。
確かに近くにある馬車もとても豪華だし頷ける。
「別に気にしてない。それより行き先が同じだな。なら助けてくれたお礼も兼ねて一緒に行くぞ。聞きたいこともあるしな」
聞きたいことってなんだろう、それにこの人綺麗な顔してるくせに喋り方が少し男っぽい。
「いいのですか?」
「ああ、さぁ早く乗れ」
そして僕はその馬車に乗り街に向かうこととなった。
歩かなくて済むからここはラッキーなのだろうか。