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正しい力の使い方【7】










 とりあえず、発見したのは酔っぱらいばかりだった。たまに浮ついた恋人もいたりしたが。


「あ」


 アサギがしゃがみ込み、消火器の後ろから小型の何かを引っ張り出した。

「何それ」

「小型爆弾」

「……」

 この無造作に物騒な感じ、何とかならないのだろうか。

「でも、小さいからそんなに大きい爆発にならないんじゃないか」

「……まあ、これはそうだけど、爆発の大きさは爆弾本体の大きさと比例しないから」

 何やら難しく言われた気がするが、言いたいことはわかる。小さくても威力が大きいことがある、と言うことだろう。


 しかし、この爆弾はそんなに大きな爆発にはならないそうだ。そう言うものをいくつか発見した。途中で、別行動をしていた女性陣と合流する。


「……シャーリーは?」


 クリスティーナ、フェイと一緒に送り出したはずのシャーリーがいない。女性陣だけで行かせるのはどうかと思ったのだが、一応警備隊もいるし、戦力的にもその方が良いと判断したのだ。

 だが、最年長、シャーリーはどこへ行った。いや、フェイが二十代前半くらいに見えるから、十代半ばのクリスティーナがふらふらしていても警備隊に声をかけられたりしないだろうけど。


「なんかバーに入って行ったわよ」


 と、フェイ。いや、意味が分からない。


「ローレンが酒の種類を調べてくれとか言ってたからかな」


 アサギが首を傾げて言った。シャーリーはローレンに「おかしい」と言われるほどの変人なので、たまに行動が理解できない。まあ、考えがあるのだろうと言うことで放っておくことにした。

「何かあった?」

「爆弾を見つけた」

 アサギがビニール袋に入れた小型の爆弾をふる。フェイとクリスティーナがざっと身を引いた。

「危なくない!?」

「大丈夫。コードを切ってあるから爆発しないよ」

 アサギが冷静に言った。どこに行っても、この男は冷静である。可愛い顔をしているのに……関係ないか。

「パーティーの方はどうなってるのかしらねー」

 フェイが間延びした声で言う。行きたかったのだろうか、と思ったが、すでに出席したことがあるらしい。フェイはもういい、と言っていた。


「興味はあるけど、一回経験したからそれでいいわ」


 さばさばとしている。それがフェイらしい。

「何かあっても、局長もいるしフランクもローレンもいるし」

 アサギもあっさりしている。ロデリックが思わず苦笑を浮かべた時、船内が騒がしくなった。思わずそちらに目をやる。フェイが「ローレンかしら」などとつぶやいた。彼女はローレンをなんだと思っているのだろう。ロデリックも同じことを思ったけど。

「まあ、あっちはあっちで何とかするでしょ。僕らは今の騒動で怪しい動きをするやつを捕まえなければならない」

 アサギが冷静に言った。クリスティーナがうなずく。

「わかってるわ」

 こういうことは、おそらく、テレパシー能力を持つハリソンの方が向いているのだろう。しかし、彼は会場の中にいる。ないものを求めても仕方がない。


 注意深く、薄暗い甲板を観察する。フェイがロデリックの服の袖を引っ張った。

「ねえ、あいつ」

 フェイが船の端から手を伸ばしている青年を示した。その手には、何やら光るものが……。

「確保ッ」

 アサギが小さく、しかし鋭く叫んだ。クリスティーナとロデリックがだっと駆け出す。二人に気付いた青年が「ひっ」と息をのむ間にクリスティーナが彼を捕まえる。ロデリックは手すりに飛び乗ってその放たれた光に向かって手を伸ばした。

 そのまま追おうとしたのだが。

「ロデリック、いいよ、もう。もう遅い」

「……そうか」

 ロデリックの念動力サイコキネシスがあれば、海上だろうが追うことは可能だった。しかし、アサギの判断を信じる。


 その足元では、フェイがクリスティーナが捕らえた男に尋問している。

「何のつもりなの、あんた! 何をしたの!!」

「し、知らない! 頼まれただけだ!」

「じゃあ誰に頼まれたのよ!」

「わ、わからない、だっ」

「そんなバカな話、あるわけないでしょ」

 フェイが青年をヒールで踏む。青年は「あっ」と声をあげた。

「フェイ、いいよ。どうせハリソンが尋問すれば、すぐにわかる」

「それもそうね」

 フェイはアサギの言葉にうなずくと、ぐりぐりしていた足をのけた。青年は何故か悲しそうにそのヒールを追った。一部始終を目撃したロデリックはちょっと引いてしまったが、誰も気づいていないようなので黙っておく。


「クリス。そいつ立たせて。もうすぐフランクたちも出てくるだろうから、先に局長の部屋に行っていよう」

「うん」


 クリスティーナがうなずき、造作もなく青年を立たせる。ロデリックと同じくらいの背丈がある青年であるが、クリスティーナは軽々と持ち上げていた。なんだかショックだった。

 アサギの指示通りに局長の使っている一等船室に入った。鍵は同室のフランクが持っているものと、二つになるが、フランクが持っていたものは現在、アサギが預かっているのである。変な意味ではなく、何かあった時はこの部屋で集合、となっていたためだ。他は二等船室なので、ちょっと狭いのである。


「む、来ていたか」


 船室の扉が開いてフランクが顔を出した。勝手にコーヒーを入れて飲んでいたアサギが「お邪魔してます」と棒読みで言った。

「何かあったか……というか、彼は誰だ」

「船の外に情報を送ろうとしていたので、連れてきました」

 アサギがフランクのあとから入ってきたオーガスタスに端的に答えた。と言うか、情報を送ろうとしていた、と言うのは初耳である。

「でもアサギ。その情報があの光なのなら、情報送られちゃったんじゃないの……?」

 クリスティーナの指摘に、アサギは彼女を見ると、「それもそうだね」とうなずいた。あれが情報だったのか……。


「というかハリソンは? 用があるのだけど」


 フェイが入ってきたメンツを見て首をかしげた。最後に入ってきたのはオスカーで、彼がドアを閉めた。しかし、二人ほど人数が足りない。


「ハリソンはローレンの着替えに付き合ってるけど」


 中身はともかく、ローレンの外見は超絶美女であるので念のため同行させたらしい。しかし、今、ロデリックたちはハリソンに、正確にはハリソンのテレパシー能力に用がある。

 しばらく待っていると、ハリソンとローレンが戻ってきた。化粧はほぼそのままだが、ローレンはウィッグをはずし、普段着に戻っていた。カットソーにスラックスである。ハリソンのスーツは自前らしく、ジャケットとネクタイだけ外していた。

「ハリソン!」

「おあっ?」

 ハリソンが妙な声をあげた。たぶん、フェイに呼ばれたからだろう。彼女が普段、声を荒げてハリソンを呼ぶことはない。

「こいつのこと、わかる!?」

 フェイがびしっと青年を指す。ハリソンは「誰だこいつ」と眉をひそめた。

「怪しいやつだよ」

「いや、意味わかんねぇよ」

 アサギのざっくりし過ぎた説明にハリソンが苦言を呈する。と言うわけで、ざっくり状況の確認に入った。


 まず、パーティー会場での騒ぎは、人ごみに乗じてアメリアがつけていたエメラルドの首飾りを奪おうとした人間がいたことから始まった。実際に知らぬ間になくなっており、それで騒ぎになったのだ。

 そこでローレンと一緒にいたアメリアに近づいてきた人間を全員記憶していたオスカーと、精神感応能力者テレパスハリソンによる捜索が始まった。

 そして、犯人を無事に見つけ、警備隊に引き渡し、五人はそのまま撤収してきたらしい。

 アサギがこちらのことも簡単に話す。ハリソンは「ふーん」と相槌を打つと言った。

「ま、いいぜ。尋問してやる」

 アサギやローレンに比べて常識的に見えるハリソンも、やっぱり発言が物騒だった。









ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


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