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正しい力の使い方【5】

正月ボケかわかりませんが、投稿し忘れていたようなので投稿します!

すみませんでした!










 夜。夕食は船内のレストランで取った。同じテーブルに座ったローレンが尋ねた。


「あった?」

「今のところ見つかってないね。僕の勘だと、無い」


 アサギがきっぱりと答えた。ローレンが「アサギがそう言うのなら、無いんだろうね」と結論付ける。みんな、アサギの直感を認めているのだ。

「……では、狂言と言うことか?」

「狂言と言うか……時間稼ぎをしているのだと思う」

 ローレンが神妙に言った。彼女のふざけたテンションの高さがないので、調子が狂う。


「時間稼ぎ……何のためですか?」


 クリスティーナがそっと尋ねた。ローレンの蒼玉の瞳が眼鏡のガラス越しにクリスティーナを見つめる。クリスティーナはちょっとびくりとしたがじっとローレンを見つめ返した。

「探し物をする時間が欲しいんだ」

「ああ、それで積荷」

 アサギは何やら納得したようでうなずいた。ロデリックとクリスティーナは顔を見合わせて首をかしげる。

「つまり、この脅迫を行った人物は、この船の積み荷の中に欲しいものがあるんだ」

「えっと……泥棒ってこと?」

「まあ、そう言うことかな」

 クリスティーナの問いにアサギが簡単に答えた。泥棒と言うか、怪盗と言うか。


「で、積荷は見れたの?」


 アサギがローレンに尋ねた。ローレンなら非合法の手段でも使って簡単に目録を見ることができただろう。実際に、したらしい。

「不審な積荷は見当たらなかった。まあ、私なら目録には載せないし、期待してなかったけど」

「……」

 さらりとローレンが言った。確かに、狙われるようなやばいものは目録に載せないかもしれない。と言うことは。

「手作業で探すのか?」

「それもやむを得ないと思ったんだけどね」

「ってことは、探さなくて済んだの?」

 ロデリックが首をかしげて尋ねると、ローレンは片方の唇の端を吊り上げると言う器用な笑い方をした。どことなくシニカルな笑い方だ。

「有名な世界的企業グループのお嬢様と知り合った」

「……その顔でたぶらかしてきたのか?」

 思わずそう言ったロデリックに、ローレンはテーブルの下で蹴りを食らわせてきた。ロデリックとローレンは向かい合わせに座っているのである。ブーツの先が当たったので痛い。

「ちょ、お前、どういうブーツ履いてんだ」

「普通のブーツだけど」

 絶対に安全用の板か何かが入っているような痛さだったのだが。ロデリックは脛を撫でると気を取り直して言った。


「悪かったって。で、そのお嬢様がどうしたんだ」

「そのお嬢様、というか会長であるその父親は、積荷として商品を乗せて商談に行く途中なのだそうだ」

「わざわざなんで豪華客船に? 普通に商船でいいじゃないですか」


 クリスティーナがなかなか辛辣なツッコミを入れる。正直、ロデリックもそう思うけど。


「この船で行った方が話題になるからだそうだ。営業も大変だな」


 完全に棒読みだった。

「まあ、それは置いておいて。そのお嬢様の家はさすがに上流階級と言うか、船内に高価なものを持ちこんでいるわけで」

「積荷ではなく、私物として持ち込んだ方が問題だった、と言うこと?」

「たぶんね」

 またローレンとアサギの間で話が進んでいる。ロデリックは「つまり?」と先を促す。

「商品として持ち込んでいるものではなくて、そのお嬢様たちが私物として持ち込んでいるものが狙われているんじゃないかってことだよ」

「ああ~」

 ロデリックとクリスティーナの声がかぶった。なるほど。理解した。それに至ったローレンの思考回路は不明であるが、納得できるものがある。

「まあ、これも確定情報じゃなくて予測だから、他の可能性も考えないといけないけど」

「ほかの可能性?」

「……ただの愉快犯とか」

「それ一番最悪」

 まあ、怪盗かはともかく、何かが狙われていて、陸にシルバーウイングを近づけたくないと言うのは確かだろう。時間はあるようでない。


「この船で何かが起ころうとしているのは確かだから」


 アサギはそう言うと、デザートのタルトを平らげた。成長期のアサギはやたらとよく食べる。見た目に寄らず大食漢のクリスティーナには劣るが、あの体のどこに数々の料理が入っていくのか……。

 大人組、と言ってもハリソンやフェイ、オスカーも含まれているが、最初からいるメンバーも似たような話をしていたらしい。四人部屋の二等船室に放り込まれたロデリックは、ハリソンとオスカーからその話を聞いた。ちなみに、人数が増えたために四人部屋に移ってきたわけではなく、初めから四人部屋だったらしい。そこにロデリックとアサギが追加されたのだ。


 女子は二人部屋を二つ使っているらしい。もともとフェイとシャーリーで一つの部屋だったのだが、戦闘力の問題でローレンとクリスティーナはそれぞれシャーリー、フェイと同室となったらしい。確かにどう考えてもローレンとクリスティーナの二人一緒では戦力過剰である。

 今ここには男どもしかいない。ちょうどいいので聞いてみた。


「なあ。何か、ローレン変じゃないか」


 アサギは表情を変えなかったが、ハリソンは顔をしかめている。その反応から、ロデリックは自分の勘が外れていないことを確信した。

「別に、あいつ、いつも変でしょ」

「いや、そう言うことじゃなくて」

 オスカーのツッコミは納得できるが、そう言うことではなくて。

「まあ、父親を殺してるからな、あれは」

「さすがに感じるものがあったのかもね」

 ハリソンもアサギも言っていることはひどいが、その表情を見ると心配しているのだろうな、と思った。


 普通に会話もできるし、頭も通常のように回っている。戦闘の方は、病み上がりなので不明だが、たぶん、戦えと言えばいつものように戦うだろう。

 しかし、まだ半年の付き合いのロデリックですらわかるくらい、彼女の様子はおかしい。

「……大丈夫なのか?」

「さあ?」

 アサギが首をかしげる。オスカーがハリソンを見た。

「ハリソンはローレンの心、読めないんだっけ」

「……難しいな」

 オスカーの質問にハリソンは冷静に答える。

「ローレンは俺のテレパシーの侵入に気付くからな。表面上の考えくらいは読めると思うが、あいつが何を考えているかまではわからん」

 ハリソンが以前、強靭な意志を持っている相手の心は読みにくい、と言っていたが、そう言うことだろうか。よくわからないけど。単純に相性の問題かもしれないし。


「……でも、前にローレンは洗脳魔法にかかるって言ってなかったか?」


 以前の騒動の時に聞いた話をすると、ハリソンは「洗脳魔法と精神感応魔法は別だからな」と答えた。

「……ま、あいつのことも見てるしかないなぁ。アサギ、ハリソン、見ててやってくれよ」

「万が一暴れたらフランクくらいにしか止められないけどね」

 と、アサギはひねくれたことを言ったが、たぶん、彼はちゃんと見ていてくれるだろうと思った。確かにローレンを止められるのはフランクくらいだが、彼女が敵対するとは思えない。

 と言うわけで、これは保留だ。今は何かが起ころうとしていることへの対処である。まあ、わからないのだが。


 とりあえず、ハリソンとローレンは大企業のお嬢様に引き続き接触するらしい。幸いと言うか、先方がハリソンに好意を抱いているようなので、接触は難しくないだろう、と言うことだった。どうやらハリソンが口説き落としたようだ。

 たぶん、ロデリックたちは後方支援に徹することになるだろうと勝手に思っていたが、どうやらそうでもなかったことが翌日に発覚した。











ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


明日は…忘れないようにします…。


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