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俺TUEEEのに無力です  作者:
竜安寺貴子の章
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伝達式1

 この竜安寺家も花代やベアトリクス(メイド)松尾達(使用人)がそろい、富蔵様から資産を譲り受け貴族らしい体裁が整った。それから程なくして、お嬢様にマサラ子爵叙任の伝達が決まった。

 子爵程度、まして“成り上がり”の竜安寺家の分家とあっては王から直々に爵位を授かることはない。竜安寺家の当主である権蔵様でさえ王への拝謁は叶わないのだ。本来なら私が手を回し、できるだけ好ましい『使者』を用意するべきなのだが、それは叶わなかった。委細は権蔵様の手配によるものだ。なにしろ私が仕える前から進めていた話だ。残念ながら仕方がない話だった。

 


 伝達式の場所は王都にある権蔵様の屋敷の予定だ。富蔵様の屋敷に逗留しているときに何度か前を通ったが実に『九伯家(竜安寺)の血にふさわしくない』質実剛健とした実用度を重視した屋敷だった。


 使者は『ノバ伯メアリー』。これは王都で既に噂となっており、私自身も知っていた。彼女は『公爵』の娘だ。私が子供の頃にも会ったことがある。胸の大きさが印象に残ってる少女だ。もっとも、今はまだ小さな子供だろう。

 権蔵様が『公爵の娘』を使者に引っ張り出せたことは驚きに値することだった。成り上がりの貴族に対して小さな爵位を与える為に出てくるような格ではないからだ。権蔵様には『公爵』と北方戦争以来関係があるとはいえ、破格の扱いだった。

 あるいは、デューク・コロネル(公爵)様ならば私が貴子様に仕えることも予見して受けたのかもしれない。しかし、これで『借り』を返したとは言わないだろう。なんでも『祖を同じくする者は助けねばならない』らしいので、その一環なのだろうか? なんにしても、あの方に関しては考えるだけ無駄だろう。



 そして、当日がやって来た。馬車にはお嬢様と私、それに加えてベアトリクスを同行させた。


「あれがお父様の屋敷……」


 お嬢様が馬車から見えた()()な屋敷に呟いた。その()()さに見合わずに先ほどから派手な馬車が次々とやって来ている。

 一部の馬車は屋敷に留まらず、主人を卸すと屋敷から出て行く。広大な屋敷をもってしても収まり切れない来客があり、下級扱いの貴族は馬車を留め置くことが認められなかったのだろう。

 権蔵様が多くの貴族を招待していることは有名な話だった。格違いの貴族にまで招待状を出した為に一部では物笑いとなっていた。『成金の成り上がり貴族の娘』の叙任に足を運ぶのは小銭が欲しい下級の貧乏貴族しかいないと思われていたのだ。しかし、現実には多くの客が来客することとなった。

 (バトラー)が仕えることが知られてお嬢様が一躍有名になったのが端緒だった。(バトラー)を見てみたい、バトラーが仕えると決めた少女を見てみたいという好奇心を刺激したのだろう。

 しかしなによりも『公爵の娘(メアリー様)』の影響が大きいだろう。彼女自身の叙任は宮廷に参内することはなく、叙任式もないままに『公爵』様が内々に済ませた。そのため、公式の場に現れるのは今回が初めてだった。お嬢様の伝達式は同時にメアリー様の初のお披露目でもあったのだ。

 最大貴族である『公爵家』の娘の初仕事とあれば駆けつけない貴族はいない。式の主役を奪われた様で面白くないが、お嬢様と『公爵家』の間に縁が出来るのは歓迎すべきことだった。

 

 馬車は屋敷の玄関に停まった。先に降りた私は豪奢なドレスに身を包んだお嬢様の手を取った。手はわずかに震えていた。


「なにごとも初めが大事でございます」


「いらぬ心配です」


 お嬢様は私の囁きを引きつった表情で一笑に付した。


「お待ちしておりました」


 馬車を出迎えた人物を見て花代を置いてきた判断に間違いはなかったと安堵した。


「本日はおめでとうございます。私はこちらで家令を務めさせて頂いているスチュワートと申します。今後はお見知りおきを」


 竜安寺家を仇敵と狙い続ける彼は真実誠実で心から祝している笑顔だった。そして私を気にする様子もなく続ける。


「当主がお待ちです。ご案内いたします」


 静かに先導するスチュワートにやや大股のお嬢様が続いた。

 そして親子の対面はスチュワート同席のもと、勤めて儀礼的、他人行儀に済まされた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! [一言] スチュアートが登場して、この後どのように展開していくのかワクワクします。 次の更新を楽しみにしています。
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