バトラー対ボルグ
休み明けの一戦目は準々決勝であり、相手はボルグ様だった。
脅威ではないものの、ゆっくりと触って反撃というわけにはいかない相手であった。なにしろ彼のサーベル捌きは中々のものであり、容易に懐に入れない。
だからというわけではないのだが、その試合に私は武器を持ち込んだ。『棒』である。一見なんの変哲もない棒であるが、私の血を混ぜてナノマシンを含有させた特別製である。
「俺の実力を示せるいい機会だ……」
対峙したボルグ様は不敵に笑った。
私としては実力を示させる気などなかったので、開始早々『棒』に磁力を付与して投げつけた。
強力な磁性を帯びた『棒』はボルグ様の持つサーベルへと一直線で向かう。
ボルグ様はそれをかわそうと右に跳ねるが『棒』はそれに追随して曲がる。ボルグ様が後ろに下がれば直進し、蛇行しようとも棒は意思を持つかのようにボルグ様を追い続けた。
ボルグ様はやがて観念したのか、サーベルで『棒』を弾いた。魔法力を帯びたサーベルの一撃に『ただの棒』が耐えられるはずもなく粉々に砕け散った。いや、砕ける様にしていたというべきだろう。
あまりにもあっけなく『意志ある棒』を打ち砕いたボルグ様は哄笑と共に宣言した。
「どんな技かと思いきやこの程度か! バトラーもたいしたことないな!」
幸いにもボルグ様に関するデータは時空コンピュータに蓄積されている。従ってどの程度までなら死なないのかも判明している。それならば話は早い。
私はボルグ様に背を向けた。これから起こる出来事はあまり見たくないのだ。しかし夢の中では嫌というほど見せられる光景であった。夢では私の見た景色とは関係なく、ナノマシンの集めた情報が伝わってくるのである。
「なんだ? 背を向け----」
その時ボルグ様を閃光が襲った。『棒』が砕けると同時に散らばったナノマシンが放電を起こしたのである。
ボルグ様は中途半端な攻撃では降参はしない。そのことは時空コンピュータに残っている記録から明らかだった。そのため死なない程度----とはいえ、因果も込めて一週間は意識不明になる程度----の大怪我をしてもらうことにしたのだった。
このことが後に大きな悲劇を生むことになるのだが、当時の私は肉と脂の焼けた独特の焦げ臭さにこそ嫌悪感や罪悪感を抱いたものの、この勝負自体にはさしたる感慨もなく、ナノマシンの散布も終わり準決勝や決勝への準備は整ったと考えていたのである。




