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俺TUEEEのに無力です  作者:
バトラーの見る夢/中編
27/82

ナウル伯ボルグ

 ナウル伯ボルグという男がいる。彼は『場合』によっては竜安寺家や『私』と縁が深くなる。()()()()()()『私』は彼と縁がなかった。この武闘会で彼のことを初めて見た。彼に関する情報は色々とあるが、それらはいずれも私の感性からすると外道に分類されるものであった。ただ、今現在まで彼は暗殺者ギルド等によって粛清されていない。それはこの世界の常識、少なくとも統治者からすると問題がないという範疇ということなのである。


 ナウル伯は爵位の格は名門からは程遠かった。しかしボルグ様の祖父である先々代と父である先代ナウル伯が領地の大規模開発に取り掛かったおかげでかなり豊かな土地として花開いた。魔法力の多寡を至上とする文化においても豊かさというのは魔法力と血統に次ぎ、爵位とともに三番目には意味があるものである。かくしてナウル伯は貧しい田舎貴族から豊かな田舎貴族へとなっていた。

 父から豊かな土地と爵位を受け継いだボルグ様は名誉を欲した。しかしこの世界で貴族として栄誉に浴そうと思ったら、圧倒的に高い魔力を持って生まれるか、バトラーに挑戦してこれを倒すか、蛮族を打ち破るくらいしかなかった。彼が後を継いだ時にはバトラーは存在しなかった。丁度執事の穴が開かれている時だったのだ。蛮族の討伐も困難であった。ほとんどの蛮族は滅ぼされ、もはや蛮族と言えば北方の蛮族を指す状態となっていたのである。この北方の蛮族は王国最大の貴族であり『武』を代表する九伯家と百年以上紛争を続ける戦闘集団であった。いくら豊かになったとはいえども九伯家でも倒せぬ相手を自分たちが倒せると思うほどにボルグ様は愚かではない。しかも北方の蛮族は九伯家----正確にはその一部である北方辺境伯----の問題であり他家は手を出せなかった。ボルグ様の名誉欲が満たされる方法はなかったのである。


 野心家であったボルグ様の祖父は魔法力豊かな名門の流れを組む女性を自分や息子の嫁に迎えていた。そのおかげでボルグ様は家格に不釣り合いな魔法力をもって生まれた。とはいえ、所詮は“家格に不釣り合い”なだけであり、それだけで名声を得られるようなものではなかった。しかし並みの貴族を蹴散らすには十分すぎるほどであった。そこで彼が目を付けたのが武闘会であった。武闘会は従来のナウル伯からしてもかなり格が落ちる役不足の大会であったが、ボルグ様にとってはそれでも構わなかった。当初はここで圧勝することで新生ナウル伯の実力を見せつけるつもりだったようだ。しかし、ここで彼の生来からの嗜虐性に拍車がかかることとなる。領民ならばいくらむごたらしく殺そうとも咎める者はいない。しかし、如何に下層とはいえ、相手が貴族に連なる者となるとそうはいかない。上層貴族から「ナウル伯ごとき」が調子に乗っていると思われかねないのである。平民への虐待に飽きていたボルグ様にとって武闘会は天祐ともいえるものだった。ここでは参加した貴族階級の者をいくら嬲り殺しにしても問題はなかったのである。

 ボルグ様がこの事実に気が付いたのは初めて参加した大会終了後であり、大会そのものは恙なく終了した。問題は彼が参加した二回目以降の大会で起こった。前回圧倒的な実力差で優勝したボルグ様の連続出場に参加者たちは暗澹たる気持ちになったことだろう。だが彼らが本当に暗澹たる気持ちとなるのはその後だった。早々に降参できた者は幸福だったろう。喉を潰され降参できなくなった者は悲惨であった。公衆の面前で生きたまま解体されたのである。観衆達にも嫌悪感を示す者が多い残虐行為であったが、だからと言ってルールなどに変更はなかった。大会の後援者である王や上級貴族たちにとっては下層の貴族の命や尊厳など平民と大差のないものであり、自分たちが決めたルール内であればどうなろうと興味がないのである。


 ボルグ様の暴走は続き、大会の開催が危ぶまれるほどになった。そこで彼はあえて一度不参加とし引退したように見せかけてその次の大会で残虐ショーを再開した。そして今回の大会では参加しないと見せかけ、締め切り寸前に滑り込み登録を済ませたのだった。

 参加者の絶望に満ちた表情と怨嗟の声を楽しもうと思っていたはずのボルグ様を周囲は失笑で迎えた。彼はこの時点ではバトラーの肩書を持つ者と実力十分のスチュワート、さらには北方の雄までもが参加していることを知らなかったのである。

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