ガンジュウ 1
「勘違いしないで、義理なんだから!」
「ありがと、義理でも嬉しいな」
クラスメイトで幼馴染ではないものの中学、高校が同じの親しい女子からバレンタインのお菓子を貰った。
「あんな返し方ふつうできないでしょ。かれ、気弱そうな顔してタラシよね」
「二股かけられても気づかなそうやわ」
ひどいいわれ用である。そんなことしない。たぶんしねーと思う。
「おかえり」
「ただいま」
何か視線を感じて後ろを見ても何もない。
部屋でちょっと仮眠しようと目を閉じて、ベッドに飛び乗って眠りを開始する。
なんだか重たい空気に目を開ける。なにかが動いているのだけわかる。
ラノベみたいにかわいい女の子が隣で寝てたりしないもんか、手元のリモコンで部屋の電気をつけてみる。
女の子だ。いる、と目がかちあって、思考が停止した。
「あ」
僕は銃を向けられているのだ。ガチガチに震える少女、ジョークではない本物のチャカ。
「違法魔法薬物を製造した罪で、お前を殺す!」
「待って! 僕は魔法使えないから! 普通の学校のほうに通ってる一般人!」
「嘘、ターゲットの写真と同じ顔なのに、魔法使えないフリ、ムダ」
「魔法が使えるなら君を魔法でなんとかしてるだろ?」
「ああ、うん」
落ち着いて話を聞くスタンスをとる。刺激すると慣れない銃を暴発させられそうだ。
「そんなに疑うなら家を見ていくといい。君は殺し初心者ってとこかな」
「うん」
「君の腕力はしらないけれども、相手が動かないなら銃は両手で構えたほうがいい」
「なんで一般人なのにそんなこと」
「サバゲーが趣味でね」
ひとまず協力者として本物のターゲット探しを手伝うと、丸め込んでおいた。
「あらあら、彼女」
「お兄のクラスメイトの子じゃないよね」
「今日から彼女、低欠ヘルさん」
「……」
◇
「あいつにコロシなんてできんのかねぇ」
「ゴラム、好きな女の心配か?」
「べっつに! 好きじゃねえし!」
「俺はかわいいと思うけどな」
「ベルソイお前……」
「冗談なんだけど、本気にしたんか……やっぱ好きなんか!」
「な、なんだと!?」
「オレは断然、陽海ハルリちゃん!」
「うっせーよ。静かにしな」
「ニベナモク」
「おめーがな! この二日酔いが!」
「で、サイエとジュストは?」
「シュストは昨晩部屋に女といたっぽいな。
先輩とか呼ばれてたし、組織の女はニベナモクかヘルかハルリちゃんだから他所のだろ」
「うわフケツ」
「誤解、誤解! ゲームだよ」
「やーね奥さん」
「最近の若いものは草食ね」
◆
「ふぁあ……よく寝た」
「ほら、ハルリ。ちゃんと制服を着て、早く学園にいかなくちゃ」
「サイエ、私また脱ぎ散らかして寝てた?」
「やれやれ」