今、彼らは強さを求める
祭子はネリーチームに弱いと言った。
それはある意味で、ミロンにとっても納得できる話であった。
いや、納得するしかない言葉であった。
ミロン自身は弱いとしか言いようがないのだ。だが、一方でミロンには納得できない部分もあった。
ミロンが弱いのは認めよう。
しかし、ネリーチームが弱いとは思えないのだった。
故に、ミロンは抗議の言葉を口にする。
「ぼくが弱いのは認めます。でも、ネリーチームが弱いとは、ぼくは思えません」
「……いや、弱いよ?」
何を言っているのだ、という呆れた顔を作って祭子はあっさりとした反論を返してくる。まるで当然のことを言ったかのように。
「例えば、ボクが本気で戦えば、ネリーチームは一分持たずに壊滅するよ。と、祭子様は仰っています」
ミロンたちは一度祭子に勝っている。ネリーチームには、祭子と相性の良いツェツィーリヤがいるからだ。
そう、言葉を続けようとしたミロンだったが、ネリーによって止められた。
「残念だけど、祭子の言っていることは事実よ」
「え?」
「個人の実力、連携。全てを加味して、私たちは弱いの」
それはあまりにも意外な台詞のように思われた。今までネリーチームは勝ってきた。
花火などにこそ勝利は収められなかったものの、実力的にはそこそこであるという自負があった。
「弱い者を連れて行ったら、ボクの手間が増えるかも。でも、殲滅に戦力は欲しいし。楽したいし、と祭子様は仰りたいようでございます」
今回、祭子は何も言っていない。執事の機人が勝手に喋っていた。
だが、祭子はうんうんと頷きを返す。
「面倒だけど、最終的な手間を考えるなら……」
祭子が憂鬱そうに、枕を抱き締めた。その表情は全てを諦めているかのようであった。
「一週間上げよう。その間に、修行をしようか」
修行。
ミロンは今まで碌に修行などしてこなかった。そろそろ必要なのかもしれない。
「とはいえ、ボクが教えられるのは神々の死体の使い方だけ。他の子自分で頑張ってね」
それだけ言うと、祭子はパタリと寝息を立て始めた。
その日はこれで一旦、解散することになった。
祭子はいつの間にか高嶺の荊を解除していたようで、アリアが外からやってくる。
「御主人様! ご無事でございますか! 何事が。申し訳ありません。自分がうっかりしていたばかりに!」
「いや、良いよ。寧ろ、きみのお陰でナルーを見つけられたようなものだしね」
「しかし……自分はまた」
アリアは深く頭を下げたままである。頭を上げようという素振りは見えない。
ミロンは微笑み、アリアの頭を撫でてやる。
ハッとして、アリアが頭を上げた。
「今日から一週間の時間を貰った。その間に、強くなろう」
今のアリアに優しい言葉をかけても、無駄である。ただ優しいだけが優しさではないと、ミロンは学んだのだ。
アリアは深刻な様子で、しっかりと承諾した。
「じゃあよ、気を取り直して、褒美の話をしようぜ」
今まで黙っていたツェツィーリヤが、明るい声音で提案する。
「褒美って、何が貰えるんすか?」
同じく、今まで黙り込んでいたエレノアも話し出す。
褒美とは何を指すのだろうか。
「通常は武器やアイテムだな。場合によっては、機人だったりするが」
と、ツェツィーリヤはアリアを見る。
「一応、うちにはアリアがいるしな」
「うちではございません。自分は御主人様だけの機人でございます」
「すまない」
アリアがツェツィーリヤを睨む。
ミロンは間に入るようにして、話題を続ける。
「で、武器って何が貰えるの?」
「基本はオーダーメイド武器だ。そいつに一番あった武器になるよ。今のうちに注文しておくか?」
そこでミロンは悩む。
ミロンには、武器が必要なのかどうか。
彼には魔道書がある。教鞭がなければ、魔法を扱えない。
そのようなミロンが武器を持つ必要はあるのだろうか。
答えは単純だ。
ある。
ミロンは近接戦闘の大切さを感じている。アルルのときには、即興で近接戦闘を挑み、敗北してしまった。
近接でも戦える方法が必要だ。
それに、そろそろ教鞭から離れる必要があるだろう。
いつまでも補助輪に頼っている暇はない。
「武器って、何を選べば良いんだろう?」
「『創り者』必須アイテムはナイフやワイヤーとかだな。だが、どっちも褒美で貰うようなもんじゃねえ。自分で考えねえと、いつか後悔するぜ」
魔法使いだから杖とかだろうか。
ミロンは悩み始める。
そのようなミロンの悩みを他所に、ツェツィーリヤが手を挙げた。
「すまないが、俺はこれから一週間は別行動をさせて貰う」
ツェツィーリヤには、既に自分の問題点が見えているようだ。それを改善する方法も、見えているようである。
「一週間後、また会おうぜ」
ツェツィーリヤが背を向けて、何処かへと行ってしまう。
それを見届けてから、今度はネリーが言う。
「私とエレノアは祭子に師事をするわ。申し訳ないけれども、兄様とエレノアは……」
ミロンとアリアは他のメンバーとは違う戦闘タイプである。強くなる方法など、教えることができないのだろう。
それはミロンにもわかっている。だから頷く。
一週間でどこまで強くなることができるのだろうか。
ミロンの胸には、不安と期待感が押し寄せて来るのだった。




