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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
弑虐の王はかく語りき
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と、祭子様は仰った

 霧島きりしま祭子まつりこ

 花火と同じ六星長でありながら、その纏う雰囲気はあまりにも正反対であった。


 花火が貫くような鋭い雰囲気であったのに対して、祭子の持つ雰囲気は覆うような印象である。

 その雰囲気こそ強者のものではないが、六星長だというだけあって、その雰囲気の存在感は強大である。


 彼女は欠伸を大きく一つ、漏らしながら億劫そうに口を開く。


「……ナルーは?」

「ツェツィーリヤが壊したわ」

「……それは残念。勝手に動くから楽だったのに」


 祭子の台詞を耳にして、ミロンは己の耳を疑った。

 彼女は自身の肉体を操られていたというのに、その状態を楽だと表現したのである。


「それよりも祭子。聴いて欲しい話があるのよ」


 ネリーは祭子にそう話し掛ける。だが、祭子は瞳を閉じ、床の上だというのに寝返りを打った。

 話を聞く気はないようだ。


「一応、紹介するわ。彼女は六星長の霧島祭子よ。見ての通り、彼女は基本的には働かないわ」

「違う。働かないんじゃない。働きたくないのだよ。ボクは是が非でも働かぬ」

「その方が駄目なのよ、普通は」


 祭子は本当に眠そうな目で、トロンと周囲を見渡した。そして、とある異変に気が付く。


「あれ。機人(オート)たちは?」

「ナルーに機能停止させられているわ」

「……」


 祭子が小さく口を動かした。それだけであり、声は一切聞こえなかった。


 けれども、その場にいた失踪していた『創り者』が手を挙げた。


「多分、機人(オート)を呼んでこい、と言っているのだと思います」


 言われた通り、ミロンは一旦外へ出て、転がっている機人(オート)を担いだ。ミロンにはそこまで力がない。

 故に難儀したが、苦労して祭子の前に機人(オート)を持ってくることに成功した。


 祭子が寝返りを打つ。

 着物が盛大にはだけ、その病的に白い肌を露出させる。胸元が完全に見えていた。


 ミロンは思わず、そちらへと視線を送ってしまう。

 直後、髪がミロンの頬を打った。


「ふぐ!」


ミロンは頬を頬を打たれた衝撃で、奇妙な悲鳴を出してしまう。


「兄様、余程毒を食らいたいようね」

「そういうフグじゃないやい」


 しかし、男性ならば仕方がないのである。

 祭子もナルーに乗っ取られるだけあって、かなりの美貌をその肉体に宿している。


 それが無防備に、半分裸体を晒しているのだ。見ない訳にもいかない。

 それはツェツィーリヤも同様だったようだが、誰も彼を気にしていない。見た目が完全に女の子だからである。


 彼は顔を真っ赤にしながらも、チラチラと祭子を伺っていた。


「……やん」


 祭子はそう言うのだが、一向に身体を隠そうともしない。面倒なのだろう。


機人(オート)、起動。いつも通りに」


 祭子が掠れるような声で、機人(オート)に命令を出した。直後、機人(オート)は起き上がり、祭子に対して頭を下げた。

 そして、着崩れを直した。


「私は執事型機人(オート)でございます。この度は、祭子様の通訳をさせて頂きます」

「通訳?」


 普通に話せるのに、とミロンは思ったのだが、直後に理解した。


 パクパクと、祭子が開いているかどうか怪しい広さで口を開いたのである。

 それを凝視する執事。


「で、話は? と祭子様が仰っておられます」


 執事は凄かった。

 だが、それと同様に、喋るのが面倒だからと、口パクで会話しようとする祭子も凄かった。


 気圧されないように、ミロンが発言する。


「第二ドームが突破されました。現在は、花火さんが単独で敵を釘付けにしています」

「なら、第二ドームの勝利。わーい。と、祭子様は仰っています」

「えっと、救助とかはしなくても良いのですか? 対策とか……」

「……と祭子様は仰っております」

「何も仰ってないよ!」


 ミロンはその場でジタバタと手足を動かした。ムーっと、ミロンが頬を膨らませる。


 それは無意識の行動であった。

 ミロンは無意識のうちに、ナルーが壊された悲しみを抑える為に、普段以上に明るく振舞っているのだ。


 それを見て、ネリーと祭子が反応した。


「これはかわいい」


 同時に、同じ台詞を告げてきたのである。ミロンはハッとして、頬から空気を抜いた。


「ネリーちゃん。中々愛い男の子を連れて来ましたな」


 祭子が自らの唇を動かして、言葉を語った。

 ネリーは一度頷いてから、話を戻すことにしたようだ。


「貴女から第二ドームを奪還できるわよね? 協力して欲しいの」

「やだ、と祭子様は仰っております」


 祭子は自分自身でそう呟いた。目を逸らし、怠そうに床に顔を埋めた。機人(オート)がよく掃除をしているようで、床には埃一つない。

 だが、それでもあまり褒められた行為ではない。


「待ってよ、ネリー。一度、場所が見つかっているドームなのに、奪還ができるの?」


 例え取り戻したとしても、ずっと敵が攻めてくるのでは意味がない。


「あ! わかったっすよ、あたしわかったっすよ!」


 エレノアが嬉しそうに手を何度も挙げる。

 はい、エレノア。と、ミロンは教鞭でエレノアを指した。


「祭子さんの能力で、第二ドームも覆っちゃえば良いんすよ」

「なるほど」


 確かに、それは悪くない手である。

 問題は、祭子にそれが可能なのかどうかであろう。また、祭子がいなければ、ドームから出入りできない。

しかし、問題点をどうにかできるのならば、第二ドーム奪還は奪還できるだろう。


 ミロンたちが祭子にできるのかどうかを尋ねようと、視線を向けた。

 その視線の先では、祭子が涎を垂らして熟睡していた。


 ミロンは思った。

 確かに、これならナルーでも簡単に乗っ取れるだろうなぁ、と。

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