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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
弑虐の王はかく語りき
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これから、動機が語られ始める

「きみを仮に、偽アリアと呼ぶことにするよ」


 ミロンはメイド服を着た少女に対して、そう告げた。それに反発するのは、当然、偽アリア自身である。


「お待ち下さい、御主人様。私がどうして偽物だと?」

「偽アリア。アリアの一人称は『私』じゃなくて『自分』なのさ」

「……私も、このような深刻な場においては、一人称くらいは改めます」


 偽アリアは一瞬言葉に詰まったものの、納得できる回答を返してきた。

 ミロンはそのことにまずは頷く。


「第二に、だ。ねえ、偽アリア。試しに、ネリーの名前を呼んでみて?」

「ネリー様が一体、今どう関係しているのでございますか?」


 偽アリアの言葉を耳にして、その場にいた者ほぼ全員が目を見開いた。


「普通に呼んだわね」


 ネリーの言う通りであった。

 アリアは普段、ミロン意外の『創り者』の名を呼ぶとき、独特な呼び方をする。


 悪意が込められているというか。

 小さな副音声のようなと言うべきか。


 ともかく、アリアはミロン以外の名は吐き捨てるように呼ぶのだ。それがない。


「私も、時には普通に名を呼ぶことがございます」

「おそらく、きみはぼくたちの仲間に機人オートがいるというところまでしか調査できてなかったんだね」


 ミロンはこのドームに来てから、多くの機人オートを見てきた。

 そして、知った。

 普通の機人オートは、皆同じような性格なのだと。


 一人称は私。主人に盲目的で、忠実。基本的には、丁寧な口調。

 なるほど。なりすましやすいだろう。


「御主人様。もしも、仮にそのような部分だけで、私を……自分を犯人と仰っているのならば、残念ながらそれは間違えでございます」

「確かにな。ミロン。お前の意見は面白いが、確定と言うほどでもねえ」


 それに、とツェツィーリヤは言う。

 ナルーが化けてるかどうかは頭を潰せばわかるが、機人オートであるアリアは頭部を破壊すると修理しなくてはいけない。


『創り者』ならば、簡単に治せるがアリアはそうもいかない。

 確かめる術はない。


 と、ツェツィーリヤはきっぱりと宣告した。


「あやふやな理論では、アリアは疑えねえ」

「うん。これからだよ」


 ミロンの発表会は続く。

 他に、偽アリアが起こした、通常のアリアではあり得ないことをあげていく。


「ぼくと偽アリアは調査中、鍵の掛かった部屋に遭遇したんだ。鍵が掛かっているのを見つけたのは偽アリア。機人オートという設定だからね。主人にドアを開けさせなかったんだろう」

「それの何がおかしいのでございましょうか?」

「偽アリアはドアノブ(・・・・)を捻って(・・・・)ドアを引いて(・・・・・・)開けられなかったんだ(・・・・・・・・・・)よ」


 ミロンの言葉に込められた意味を理解して、ネリーが髪に火を灯した。それは臨戦態勢を意味する。

 ネリーは、ミロンの言を信じたのだ。


 それに首を傾げるのは、偽アリアと助けられたばかりの失踪者、そしてエレノアであった。


 エレノアが一歩前に出て、説明を求める。


「だからどうしたんすか? 鍵が掛かってるなら、普通はドアは開かなくて正解っすよね?」

「ぼくらの場合ね。でも、アリアは違う」


 ミロンは思い出す。

 初めてアリアに出会ったときのことを。

 彼女はドアノブを握力で握り潰していた。


「アリアがドアノブを握れる筈がないし、ましてやドアを引いて壊せない訳がない」

「あっ! 確かに、そうっすね」


 アリアは力の制御ができない。

 ドアは引けば必ず壊れる。それには鍵が掛かっていようと違いはない。


「仮に、だ。アリアが力の制御にその時だけ成功したとしよう。でもね、鍵が掛かってるとわかってから、ぼくは魔法を使ってドアを破壊したんだ」

「アリアの性格ならば、兄様にやらせずに、自分でドアを破壊するわね」


 ミロンの意見に、ネリーが補足を加える。


「待てよ、ミロン。確かに、お前の言う通りだ。だがよ、お前は忘れちゃいねえよな?」

「ナルーが機人オートには乗り移れないってこと?」

「そうだ」


 ミロンは順を追って説明することにした。

 まずは、アリアが偽アリアと入れ替わったときのことについてだ。


 ミロンたちはギルドに乗り込んだと同時に、罠に嵌められたと理解した。

 そして、まだ出口がある可能性を信じて、一度三チームに分かれた。ネリーとツェツィーリヤ、ミロンとエレノア。最後に、アリアが一人。


 それから、全員で別々に出口を探した。この時、アリアは『高嶺の荊(ガルム・アルム)』の範囲を変えられて、外に出されたのだ。

 そして、偽アリアと入れ替わった。


「タイミングはそこしかねえな。で、どうやって変装したんだよ?」

「簡単さ。最初に、祭子さんに乗り移る」


 そして、アリアと同じタイプの機人オートの首を削ぐ。

 それからその機人オートの中身を首の断面から奪っていく。そして、残った皮、というよりも装甲を被る。


「頭は?」

「現状から見て、自由に顔を変えられると見るべきだね」


 地面に幾つもの機能停止した機人オートが転がっていたのは、ミロンたちにアリアと同種の機人オートがいることを意識させない為。

 それと、もしもアリアと同種の機人オートの残骸が発見された場合の保険だろう。


 また、他の機人オートと間違えて襲われない為なのかもしれない。


「お待ち下さい、御主人様。首の断面から入って、機人オートの装甲を被るのは、流石に無理があるのでは?」

「ぼくたちは『創り者』だ。一旦バラして、機人オートの中に詰める。その後に肉を与えて、戻った瞬間に頭をもう一度奪えば良い」


 ミロンの説明に対して、その場の全員が押し黙った。その中で、ミロンだけが言葉を続ける。


「ぼくとペアを組んだのは、偽アリア……ナルーが女の子しか狙わないという盲点を突きたかったんだよね」


 まずはミロンを乗っ取り、そしてネリーを狙う予定だったのだろう。

 その為にナルーは、ネリーと実力的に劣る失踪者の一人を組ませたのだ。


「そして、ナルー。きみの動機はおそらく……」

「ああ。バレちゃった」


 と、ナルーがボソリと呟いた。

 ナルーはけたたましく、笑い声を発し出す。狂ったような笑い声を上げ始める。


「ああ! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い! 私は何て……気持ち悪い!」


 そして、ナルーが動機を語り始める。

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