それでは、種明かしをしよう
今回の話の最後でナルーの潜伏場所が判明します。
それまでにナルーの居場所を考えてみるのも良いかもしれません。とはいえ、潜伏場所候補がほぼ一つなので、すぐにわかるとは思いますけれどもね。
ギルド二階。
ここは基本的に、ある程度の実力のある『創り者』が呼ばれる場所である。
通常、『創り者』は一階の受付にて、自ら選んで任務を受ける。
これが上級の『創り者』ともなれば、ギルド自体から任務を受けることがあるのだ。その特別な任務は、できるだけ情報を漏らさないように、こうして二階で話し合いが行われる。
三階以降は、会議室や職務室となっている。
ギルドは『創り者』に任務を与えるだけでなく、唯一『創り者』を統制する機関、つまりは国としての役割もある。
それらの役割は、三階以降の仕事であった。
「見た所、祭子さんはいないね」
「はい、仰る通りでございます」
ミロンたちは共に、ギルド二階の廊下に立っていた。ミロンが視認できる範囲の限りでは、祭子の姿は見えない。
「じゃあ、アリア。ぼくは部屋に入るから、きみは外で見張っていて……いや、これじゃあ、駄目なのか」
ナルーがどこに隠れているのかはわからない。
もしも、室内にナルーが潜んでいた場合、ミロンがこっそりと乗っ取られても他の者が気付けないのだ。
そうならない為のペアである。
「やっぱり、一緒に行こう」
「かしこまりました」
メイド服がヒラリと優雅に舞い、前に出た。ミロンの代わりにドアノブに手をかけると、そのまま引いた。
しかし、ドアは開かなかった。
鍵が掛かっていたのだ。
「申し訳ございません、御主人様。鍵が掛かっているようです。これは開きませんね」
「いや、任せて」
ミロンは前に出ると、魔道書を開く。教鞭で石の魔印に触れて魔法を引き出す。そこに『操作』を加えて、石弾を高速で射出する。
「調子が良いかも」
魔法は体内にある魔力量が増せば増す程、その威力を上げる。魔力を増やせば増やす程、威力は向上するのだ。
ミロンは第二ドームから脱出してから暫くして、魔力量が急激に増加している気がした。
まるで、人一人分増えたかのようであった。
ドアを破壊して、ミロンたちは室内へと侵入する。そこは小さな部屋であった。
特に何もない、殺風景な部屋である。
ただ、机と椅子が置かれているだけだ。
「受付室のようですね」
「うん、そうだね」
ナルーが何処に潜んでいるかわからない。ミロンはなるべく壁から離れて、アリアに命じた。
「ごめん、アリア。物陰とか棚の中を調べて。頭が入りそうな場所全部」
「わかりました」
機人はナルーからの乗っ取りを受けない。故に、彼女が捜査すれば、万一はあり得ない。
と、ミロンは判断したのだ。
代わりに、ミロンは魔道書を構えて、周囲を警戒する。いつ、ナルーが飛び掛かってくるかわからない。
また、祭子の身体で奇襲をかけられれば、敗北してしまう。警戒は怠れなかった。
「いませんね」
「ありがとう。じゃあ、次の部屋だね」
ミロンは一切警戒を解かない。
ミロンもプロの眼光を得つつある。越えてきた修羅場の数だけ、彼も成長しているのだ。
「アリア。きみもいつになく真剣だね」
「勿論です」
それからも捜査は順調に進んだ。
あまりにも、順調過ぎた。
仲間たちは未だに祭子に遭遇していない。仮に遭遇していたならば、それと同時にできるだけ大きな物音を立てる筈だ。
それが一切ない。
また、捜査開始から既にかなりの時間が経過している。
「お気を付けください」
「うん、見えてるよ」
ミロンは地面に転がっている機人を踏まないように注意を受けた。
きちんと警戒しているミロンには、無用の警戒だったが、気遣いはありがたい。
(でも、妙だな)
ふと、ミロンの頭に違和感が過った。
普段ならばあり得ないものを見たかのような、些細な違和感。
けれども、今は敵地である。
些細な違和感が命取りにも、救いにもなる。
「ねえ、アリア。ナルーはどうして、機人の動きを止めているのかな?」
「扱い切れなかったのでしょうか」
「それはないと思う。このギルド内の機人たちは祭子さんに服従してるからね。彼女の身体があれば、命令はできるよ」
やはり、何かがおかしい。
ミロンは違和感の正体を探っていく。ゆっくりと、何がおかしかったのかを思考する。
そして、気が付いた。
気が付いて、しまったのだ。
「そういうことか」
「どうかなさいましたか?」
「……ああ、ナルーの居場所がわかったよ」
「はあ!? ……そ、それは誠でございましょうか」
「うん」
ミロンは魔道書を構えて、地面に魔法をぶつけた。巨大な音が発生する。
この音を合図として、他の仲間たちも駆け付けてくるだろう。
「で、御主人様。本当に、わかったのでございますか?」
「どうかな。間違ってる可能性はあるよ」
ミロンは自分が考えていることが可能かどうかを考える。もしも、可能なのだとしたら、非常に拙い。
このままだと、ミロンはナルーにやられてしまうだろう。
そうならない為に、ミロンは嘘を告げる。
「おそらく、ナルーはギルドの外にいるんだ。だから、探しても見つからない。ここから出る為には、地面を掘るしかない」
嘘である。
それに、ミロンは知っていた。
彼は数回、地面から敵に襲われている。つまりは、敵は地面からもやってくる。
であれば、当然『高嶺の荊』は地面にも設置されているだろう。
地下を掘るなど、あり得ない。
だが、言っておく必要があった。
「なるほど。そうでございますね」
「じゃあ、みんなが来るまで待とうか」
やがて、全員が揃った。
そして、全員が全員とも、何事だという顔をしている。
ミロンは顔に笑みを作ってから、全員に自身の推理を告げることにした。
いや、それは推理などという高尚なモノではない。ナルーの潜伏場所は、ナルー自身が何度も告げてきていたのだ。
ミロンはそれに気が付かなかった。
これは推理などではなく、気付きである。
「みんな、ナルーの潜伏場所がわかった。今から戦闘になるから、気を付けてね」
「戦闘? ナルーは外にいるのではないのでございますか?」
彼女の問いに、ミロンは答えることにした。
だが、その前に、ミロンたちはホールへと向かった。そして、広いホールに辿り着くと、全員にバラバラに立つように命令する。
近くにいると、一掃される可能性があるからだ。
「じゃあ、種明かしをしようか。ナルー、きみはそこにいる!」
そう言って、ミロンが指差したのはメイド服を着た少女であった。




