とうとう場所が見つかった
「で、彼女が噂の?」
ミロンは女装をした上で、第三ドーム内を歩いていた。隣にはデックス、そしてアリアがいる。
デックスは冷や汗を流しながらも、首を縦に振るった。
「ああ。確か、ナルーが可愛いって言ってた奴の一人だ」
ミロンたちの捜査は、現在ナルーの人となりを中心に進められていた。
ミロンはナルーを容疑者と考えているのだ。
その理由は多々ある。
まず、祭子の行動の滅茶苦茶さである。
ドームを動かしてまで、ミロンたちを壊す理由がないのだ。また、仮に本当にミロンたちを壊したいのならば、ドームの『創り者』を使うよりも、自分で出向いた方が良い。
何故ならば、第三ドームは基本的には技術職のドーム。
最前線である第二ドームで生き抜いてきたネリーたちには、そうそう勝ち目はない。
ミロンたちが邪魔ならば、そもそもドームに入れる必要がない。
幾ら情報が外に流れる可能性があるとはいえ、失踪者を探さねばならない状況で敵を増やす意味がない。
報告されたところで、祭子の壁は誰にも壊せない。内々で全てを解決した後、しらっと壁の解除に応じれば良いのだ。
祭子はそれをせず、敢えて敵を増やした。
その上、最も優先するべき失踪者捜査を中断して、である。
そして、次に現場の状態である。
聞き込みの結果、失踪者は全員機人に言伝を置いていっていた。
つまり、自主的に失踪したのである。
理由もなく。突然。
この不自然な行動に説明をつけるのだとしたら、誰かに操られていたから、などであろう。
室内に争った様子もなかった。
様々な理由の元、ミロンはナルーが怪しいと見たのである。
「デックスさん。他にナルーさんが言っていた人はいますか?」
「いや、わからない。パッと思い出したのが、あいつだったから。あ、そう言えば、ナルーはネリーのことも言ってた」
デックス曰く、ナルーはネリーのことについてもよく口にしていたらしい。
聴いていると、ナルーは余程他者の美しさについて興味があったらしい。
それは嫉妬、なのだろうか。
頭部しかない異業種であるナルー。
それはきっとコンプレックスになっていたのだろう。
異業種といえば、クーマだが、彼も自身の容姿について劣等感を抱いている様子だった。それが女子ともなれば、より顕著であろう。
「早く事件を解決しないとね。ネリーが、ナルーと名前が似ていて苛々するって言ってたし」
一文字違いである。
「さ、後は待つだけだね」
混乱に乗じて、失踪は起きている。
だから、現在はネリーとエレノアに暴れて貰っている。
第三ドームはかなりのパニックに陥っている。
敵が動くのならば、今しかないだろう。
「あの子は非戦闘員だ。だから、多分家から出ない」
隠れながら、家を見張る。
そうしていると、メイド服を着た機人が現れた。そのメイドは何かを風呂敷で包んでいた。
「デックスさん。あの大きさ。ナルーさんと同じ?」
「わからない。だが、あれくらいだった気がする」
ミロンは頷き、様子を伺った。
メイドが家に入っていく。一時間程経っただろうか。
家の中からメイドが出てきた。
その後ろには、家主である少女型の『創り者』もいた。
「多分、やられた」
「おそらく、向かう先はギルドでございますね」
ミロンの考えによると、祭子は既にナルーに支配されている。
ナルーの能力は対象と頭部をぶつけ合うこと。その条件は比較的達成し易い。
六星長といえど、乗っ取りは不可能ではない。
「胸切り女は、祭子の支配ならば簡単だと仰っていましたね」
「だね。正直、花火さんクラスがそんなに簡単に乗っ取られるとは思えないけど。でも、それくらいナルーが厄介なのかも」
ミロンとアリアが真剣に話し合っている中、デックスは小さく失笑した。
「いや、確かに祭子様なら乗っ取られるのもあり得る」
随分と、祭子は信用がないようだ。
メイドとナルーと思われる人物は、まったく気負うことなく、堂々とギルドへと入っていった。
「よし。やっぱりギルドだね」
失踪者はギルド内に隠されている。
そして、何よりもミロンは確信していた。ナルーは誰も壊していない。
「後は、ネリーとエレノアを集めて、ギルドを襲うだけさ。で、失踪者を取り返す」
それでミロンたちの勝利だ。
いや、正確には、ドーム内を味方につけることができるだけだが。
ナルーは乗っ取った対象の能力を使える筈だ。祭子が乗っ取られているのならば、結局は祭子と戦わねばならないのかもしれない。
しかし、自由に能力を使えるとは思えない。もしも使えるのならば、祭子の制御を奪えた時点で好き勝手に振る舞える筈だ。
それをしなかった時点で、ナルーには制限があると推測できる。
ドーム全員を仲間にすれば、十分に勝機が現れてくる。
「次に、ナルーが外に出たときがチャンスだ」
ミロンの口角が吊り上がる。
未知の場所で、未知の敵から、未知の原因で狙われる恐怖。
一つのドームを全て敵に回したという絶望感。
それらを理解しながらも、ミロンは笑う。
それは強者にのみ許された笑みである。
それは強者にのみ許された強みである。
実力はともかくとして、ミロンの精神面は確実に強者のモノへと進化しつつあった。
『あっは』
ミロンの脳内で嘲笑いの声が漏れていた。




