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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
弑虐の王はかく語りき
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遂に、彼は疑いを掛ける

 今回の事件を解決するのに於いて、キーパーソンとなるのはアリアであった。


 理由は単純なもので、彼女が機人オートだからである。機人オートは幾ら普通の『創り者』に見えるといっても、基本的には量産品である。


 型番、というものが存在するのだ。

 要約すると、アリアとまったく同じ見た目の機人オートも沢山いるのだ。


 故に、アリアはメイド服を少し変えるだけで、誰も見抜けない変装ができる。


 また、機人オートは基本的には嘘を吐かない。情報収集時には、ある程度の信用が約束されている。


 ネリーが盗んだ依頼書も合わせれば、より情報が得やすくなる。


 ということで、現在はアリアが単独で情報収集に奔走していた。捜査、ということで情報はすんなりと入手できた。


 結果としては、ミロンたちは『壊れ者』だと認識されていることがわかった。

 第二ドームの崩壊はこちらにも情報として入ってきているようだが、どうやらそれを招いたのがミロンたちであるとされているのだ。


 門番を何らかの方法で騙し、見事第三ドームに押し入った敵であると思われているようなのだ。


 暴論である。


 しかし、第三ドームはそれを信じるしかなかった。如何に突飛な話であろうと、である。


 ギルドがそう決定したのならば、疑う理由などない。住民たちの方は、祭子が裏で手を引いているなんて思いもしないだろう。


「んーんーんー」


 ミロンたちの背後では、身体を鎖でグルグルに巻かれた男がいた。口には猿轡を咬まされ、身動き一つ取ることができない。


 ミロンたちは潜伏先として、この拘束された『創り者』の自宅を選んだのである。

 また、この家の機人オートたちに、ミロンたちに従うように命令させた。そうしないと壊すと脅したのである。


 機人オートたちは実によく働いてくれていた。


「また、新たな失踪者が出たようです」

「もう隠れて三日目だけど、二件目だね」


 ミロンたちを追う混乱に乗じて、失踪者が増えている。

 これはミロンたちの思うところではない。


「デックスさん」


 と、ミロンは鎖で拘束されている男の元に近寄った。


「ぼくたちが本当に壊れているのならば、とっくの昔に貴方を壊しています。ここまでわかりますよね?」

「んー!」


 拘束された男、デックスは首を縦に頷かせた。


 ミロンは微笑み、デックスの猿轡を外してやる。直後、デックスの唾液がミロンの頬にかかる。


「死ね死ね死ね! 今死ね、すぐ死ね。圧倒的早さで死んじまえ! どうして俺が拘束されなきゃいけねぇんだ!」

「アリア」


 アリアの拳が、デックスの顔の真横を通り過ぎた。床に拳がめり込んでいた。


 デックスの顔色が刹那の内に青くなる。


「ぼくたちは貴方を壊したくありません。けれども、邪魔をするなら容赦しません」

「……じょ、冗談ですよー。『創り者』ジョーク」


 ミロンは内心で苦笑を浮かべた。

 しかし、演技は崩すことなく、デックスの耳元に唇を近付ける。


「では、ぼくのアリアと一緒に、外に出て情報を貰って来てください。少しでも抵抗したり、逃げようとすれば、先程の拳が貴方の腸を引き出します」

「ひ、ひぃ! で、でも、どうして俺が情報を収集しないと……」

「貴方が姿を現さなかったら、また失踪者が出たのかと家宅捜査を受けてしまいますからね」


 デックスとしてはそちらの方が好都合だろうが、それは彼の都合であった。


「てゆーか、あんたらは失踪者を捜してるのか?」

「はい」

「本当に……敵じゃあないんだな!?」


 デックスとて、馬鹿ではないのだろう。

 ミロンたちの行動は、敵対しているにしては不自然過ぎるのだ。勿論、脅しなどもふんだんに使っている。


 けれども、もしデックスが同じ状況でも、同じことをするだろう。


「今の所、第一の失踪者以外は、全員かなり容姿が可愛かったり美しいです。ネリーやツェツィーリヤには及ばないけれど」

「おい、ミロンてめえ! 今、何で俺を含めやがった!?」


 ツェツィーリヤの喚きをミロンは無視した。


「誘拐犯は噂になるレベルの容姿の『創り者』ばかり攫っています」

「第一の失踪者は?」

「第一の失踪者さんは異業種です。頭部しかない……」

「ああ! あいつか。知ってるぜ。何度か組んだこともある」

「本当ですか。彼女だけ失踪者の特徴にマッチしていなかったので、気になっていたんです」


 第一の失踪者であるナルー・ベアルカ。彼女は頭部だけの『創り者』である。


「まあ、あいつは特殊だしな」


 第三ドームでは、任務に就く『創り者』が少ない。技術職のドームだからだ。


 故に、ナルーが戦闘員であったのならば、同じ戦闘員であるデックスと組んだ経験があるのもおかしくはない。


 しかし、頭部しかないのに、どう任務に就いたのだろうか。サポーターは無理だとして、であれば魔法使いだろうか。


 ミロンがそう推理していると、デックスが口を開いた。


「あんまり他人の情報を渡すのは嫌だが、見つける為なら仕方がねえ」

「ありがとうございます」

「ナルーは神々の死体(ホラーチャーム)持ちだ。能力名は『試着する他人の人生(ルーナ・ゲヒルン)』だ。その能力は、他者に乗り移ること」


 その事実を耳にして、ミロンは耳を疑った。

 ふと、頭の中でパズルのピースが繋がったような気がしたのだ。


「失踪した『創り者』は一切の痕跡を残していない。また、争った形跡なども皆無。誘拐にしては手口が鮮やか過ぎた。でも、その能力なら……」


 おそらく、ナルーの能力は有名である。

 そもそも神々の死体(ホラーチャーム)は貴重なのだ。

 そこまで特殊な力ならば、このドーム内のどの戦闘員に訊いてもわかっただろう。


 だが、誰も仲間が誘拐犯だとは考えない。第一の失踪者が怪しいとは思わない。


 けれども、あくまで直感ではあるのだが、ミロンはナルーこそが怪しいのではないかと、疑いをかけ始めていた。

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