では、敢えて立ち向かおう
申し訳ありません。
既に修正しましたが、先程まで他作品のキャラクター設定を公開していました。
今後このようなミスがないように、精一杯注意します。
「『命ノ灯!」
「行って! 『喚起!」
ネリーの髪が炎を纏い、周辺をデタラメに乱舞する。それに怯み、距離を取った『創り者』との間に、ミロンが岩の壁を作り出した。
「兄様、捕まって」
ミロンはネリーに抱き着く。
それと同時に、ネリーが動き始めた。髪が建物に触れて、ネリーの肉体をミロンごと持ち上げる。
幾つもの家を足場に、髪が高速で振り乱される。
あっという間に、ミロンたちは第三ドームの『創り者』たちの元から離脱した。
「はぁはぁ」
「ネリー、大丈夫?」
「ええ」
神々の死体を連続使用した所為で、ネリーは疲弊していた。
髪に炎を灯したままだと、家を焼いてしまう。故に、移動の際には髪から炎だけを消していたのだ。
それはネリーに多大な負担を掛ける。
「それにしても、アリアは何をやったんだろう?」
ミロンたちは襲われていた。
アリアが何かをやらかして、第三ドームに敵として認識されたようなのだ。
「それよりも、兄様。依頼書」
「うん。おかしいよね」
ミロンたちは依頼書を改めて確認する。何処にも不備はない、ように思えた。
だが、それは根本的に違う。
「まさか、依頼書の書式が違うなんてね」
そう。
この依頼書は偽物であった。
どうやら第三ドームでは、数日前から依頼書の書式が変えられていたようなのだ。
普通、そのようなことはあり得ないという。
しかし、変わってしまった事実は変えられない。
ミロンたちの依頼書は偽物であった。
つまり、ミロンたちはギルドに嵌められたのだ。
「失踪事件に、ギルドが関わっている?」
「でも、ならどうして私たちを追い詰めるの?」
「わからない」
ギルドが失踪事件に関わっていて、その濡れ衣をミロンたちに被せようとしているのだろうか。
いや、それはおかしい。
ミロンたちはまだこのドームに来たばかりである。犯行のしようがない。
ギルドに怨みを買うようなこともやっていない筈だ。今ミロンたちを狙うよりも、先に失踪事件を片付けるべきである。
「まったく、訳がわからないよ」
「集合しようにも、集合場所に辿り着けそうにないわね」
現在、第三ドーム全ての『創り者』から狙われている。無数の機人にも襲われた。
このドームには、幸いなことにも戦闘向けの『創り者』は少ない。
技術職が多いからだ。
だが、戦闘員もゼロではない。
「ぼくとツェツィーリヤが組まなくて良かった」
ミロンは経験不足、ツェツィーリヤはサポートがメインである。組んでいたら危なかった。
「私の言った通りね」
ネリーがえへんと胸を張る。
「で、ぼくたちはどう動く?」
「……わからないわ」
『ギルドに行こうよ』
ミロンの脳内に、痛痒が走る。脳内に直接、振動が走ったようであった。
ミロンらしき者の声である。
『ギルドが怪しいと、僕は思うね。行ってみたらどうかな? 面白いことになってるかも。あっは』
「どうして、急にきみが……」
『一度、完全に身体を使ったからね。僕も出て来やすくなったんだよ。これからよろしくねー』
左目に、痛みが走る。
頭が割れそうに痛む。身体中に、虫唾が走る。意識が遠くなっていく。
『おっと。今のきみには、まだ負担が大きいかな。まあ、用があったら呼んで? じゃあね』
声が唐突に止む。
それと同時に、ミロンを襲っていた痛みが消滅した。
「兄様?」
「ああ、大丈夫」
言葉とは裏腹に、ミロンは額に汗を浮かべ、倒れ込むように近くの壁に身を預けていた。息遣いも荒い。
そのようなミロンを見て、ネリーは堪え切れずといったように囁く。
「兄様、何かエロい」
「はあ!?」
「何かエロティックね」
「聴こえなかった訳じゃないよ!」
眼鏡がずれてしまう程の勢いで、ミロンが声を荒らげた。
ミロンの反応を見て、ネリーは納得気に頷く。そして、どうでも良い持論を並べ始める。
「顔を赤くして、息遣いも荒い。これはもう狙っているとしか思えないわ」
「ネリー……どうしてきみはそんなに残念なの?」
危機的な状況だというのに、ミロンたちは実に気楽な調子であった。
しかし、それはあくまで虚勢に過ぎない。『創り者』がメンタルを崩すということは、死と同義なのだ。無理にでも、気を楽にする必要があった。
「あいつの言う通りにするしかないか」
「あいつ?」
「うん。ぼくの中にいるもう一人」
ネリーは、ミロンの中にいるもう一人を見ている。ミロンが説明せずとも、言葉の意味がわかったようだ。
「危険よ」
「でも、そうするしかないよ。取り敢えず、ギルドが敵ということは確定だろうからね。今、ぼくたちにわかっていることはそれだけだ」
ミロンはギルドへ侵入する話をネリーに打ち明けた。
「侵入したところで、どうにかなるとは思えないわ」
「祭子さんが出て来たら負けは確定だよね」
だが、このまま戦い続ければ、疲弊していくだけである。余裕のあるうちに、本部を偵察する。
「行かないと追い詰められるだけさ」
無論、戦うつもりはない。
あくまでも、偵察に抑える。
「せめて、ぼくたちが追われている理由だけでも見つけてこよう。ネリーがいれば、ギルド内も、祭子さん以外は敵じゃないよね?」
「ええ。私は戦闘専門だもの」
ミロンたちの方針が、取り敢えずは決まった。今はどのような小さな情報でも良かった。
第三ドームからは出られない。祭子の防御壁は、守られる側としては最高なのだろう。
けれども、閉じ込められたミロンたちにとっては地獄のようなものであった。
追われるままでは、いつか負ける。
攻めなければならない。
ミロンたちは攻めに出ることにした。




