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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
弑虐の王はかく語りき
76/113

では、敢えて立ち向かおう

申し訳ありません。

既に修正しましたが、先程まで他作品のキャラクター設定を公開していました。


今後このようなミスがないように、精一杯注意します。

「『命ノ灯(アラハ・ハール)!」

「行って! 『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)!」


 ネリーの髪が炎を纏い、周辺をデタラメに乱舞する。それに怯み、距離を取った『創り者』との間に、ミロンが岩の壁を作り出した。


「兄様、捕まって」


 ミロンはネリーに抱き着く。

 それと同時に、ネリーが動き始めた。髪が建物に触れて、ネリーの肉体をミロンごと持ち上げる。


 幾つもの家を足場に、髪が高速で振り乱される。


 あっという間に、ミロンたちは第三ドームの『創り者』たちの元から離脱した。


「はぁはぁ」

「ネリー、大丈夫?」

「ええ」


 神々の死体(ホラーチャーム)を連続使用した所為で、ネリーは疲弊していた。

 髪に炎を灯したままだと、家を焼いてしまう。故に、移動の際には髪から炎だけを消していたのだ。


 それはネリーに多大な負担を掛ける。


「それにしても、アリアは何をやったんだろう?」


 ミロンたちは襲われていた。

 アリアが何かをやらかして、第三ドームに敵として認識されたようなのだ。


「それよりも、兄様。依頼書」

「うん。おかしいよね」


 ミロンたちは依頼書を改めて確認する。何処にも不備はない、ように思えた。

 だが、それは根本的に違う。


「まさか、依頼書の書式が違うなんてね」


 そう。

 この依頼書は偽物であった。


 どうやら第三ドームでは、数日前から依頼書の書式が変えられていたようなのだ。

 普通、そのようなことはあり得ないという。


 しかし、変わってしまった事実は変えられない。


 ミロンたちの依頼書は偽物であった。

 つまり、ミロンたちはギルドに嵌められたのだ。


「失踪事件に、ギルドが関わっている?」

「でも、ならどうして私たちを追い詰めるの?」

「わからない」


 ギルドが失踪事件に関わっていて、その濡れ衣をミロンたちに被せようとしているのだろうか。

 いや、それはおかしい。


 ミロンたちはまだこのドームに来たばかりである。犯行のしようがない。


 ギルドに怨みを買うようなこともやっていない筈だ。今ミロンたちを狙うよりも、先に失踪事件を片付けるべきである。


「まったく、訳がわからないよ」

「集合しようにも、集合場所に辿り着けそうにないわね」


 現在、第三ドーム全ての『創り者』から狙われている。無数の機人オートにも襲われた。


 このドームには、幸いなことにも戦闘向けの『創り者』は少ない。

 技術職が多いからだ。


 だが、戦闘員もゼロではない。


「ぼくとツェツィーリヤが組まなくて良かった」


 ミロンは経験不足、ツェツィーリヤはサポートがメインである。組んでいたら危なかった。


「私の言った通りね」


 ネリーがえへんと胸を張る。


「で、ぼくたちはどう動く?」

「……わからないわ」


『ギルドに行こうよ』


 ミロンの脳内に、痛痒が走る。脳内に直接、振動が走ったようであった。

 ミロンらしき者の声である。


『ギルドが怪しいと、僕は思うね。行ってみたらどうかな? 面白いことになってるかも。あっは』

「どうして、急にきみが……」

『一度、完全に身体を使ったからね。僕も出て来やすくなったんだよ。これからよろしくねー』


 左目に、痛みが走る。

 頭が割れそうに痛む。身体中に、虫唾が走る。意識が遠くなっていく。


『おっと。今のきみには、まだ負担が大きいかな。まあ、用があったら呼んで? じゃあね』


 声が唐突に止む。

 それと同時に、ミロンを襲っていた痛みが消滅した。


「兄様?」

「ああ、大丈夫」


 言葉とは裏腹に、ミロンは額に汗を浮かべ、倒れ込むように近くの壁に身を預けていた。息遣いも荒い。


 そのようなミロンを見て、ネリーは堪え切れずといったように囁く。


「兄様、何かエロい」

「はあ!?」

「何かエロティックね」

「聴こえなかった訳じゃないよ!」


眼鏡がずれてしまう程の勢いで、ミロンが声を荒らげた。

ミロンの反応を見て、ネリーは納得気に頷く。そして、どうでも良い持論を並べ始める。


「顔を赤くして、息遣いも荒い。これはもう狙っているとしか思えないわ」

「ネリー……どうしてきみはそんなに残念なの?」


 危機的な状況だというのに、ミロンたちは実に気楽な調子であった。


 しかし、それはあくまで虚勢に過ぎない。『創り者』がメンタルを崩すということは、死と同義なのだ。無理にでも、気を楽にする必要があった。


「あいつの言う通りにするしかないか」

「あいつ?」

「うん。ぼくの中にいるもう一人」


ネリーは、ミロンの中にいるもう一人を見ている。ミロンが説明せずとも、言葉の意味がわかったようだ。


「危険よ」

「でも、そうするしかないよ。取り敢えず、ギルドが敵ということは確定だろうからね。今、ぼくたちにわかっていることはそれだけだ」


 ミロンはギルドへ侵入する話をネリーに打ち明けた。


「侵入したところで、どうにかなるとは思えないわ」

「祭子さんが出て来たら負けは確定だよね」


 だが、このまま戦い続ければ、疲弊していくだけである。余裕のあるうちに、本部を偵察する。


「行かないと追い詰められるだけさ」


 無論、戦うつもりはない。

 あくまでも、偵察に抑える。


「せめて、ぼくたちが追われている理由だけでも見つけてこよう。ネリーがいれば、ギルド内も、祭子さん以外は敵じゃないよね?」

「ええ。私は戦闘専門だもの」


 ミロンたちの方針が、取り敢えずは決まった。今はどのような小さな情報でも良かった。


 第三ドームからは出られない。祭子の防御壁は、守られる側としては最高なのだろう。

 けれども、閉じ込められたミロンたちにとっては地獄のようなものであった。


 追われるままでは、いつか負ける。

 攻めなければならない。


 ミロンたちは攻めに出ることにした。

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