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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
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陵辱と変異

 百人分の生命力を使用して、エレノアは攻撃を開始する。


 それは斬撃の嵐であった。

 エレノアの肉体からは無数の光の輪が飛び立ち、アルル目掛けて煌めいた。


 一つの獲物に無数の光が群がる様は、まるで鳥葬のようであった。


 だが、アルルには一切通じない。

 彼の肉体に光が触れるだけで、エレノアの攻撃は無効化されてしまう。


「なら」


 エレノアが攻撃の手法を変更する。

 光をただ強めたのだ。


 増やされた光量は、アルルから視力を奪い去った。焚かれたフラッシュにより、アルルが怯む。


 その隙を逃さずに、エレノアはアルルの足元にいるミロンを滅茶苦茶に斬り刻んだ。


 アルルに踏まれていた部分と切り離された頭部が、目を覚ます。


「兄様!」


 ネリーの髪が伸び、ミロンの肉体を掴む。そして、彼の肉体をエレノアの前に置いた。


「『捕食の業(リリア・マーゲン)』!」


 エレノアがその場にしゃがみ込み、優しくミロンの頭部に触れる。そして、彼の肉体を瞬く間に回復させてしまう。


 ふらり、とエレノアが立ち上がった。


「許さないっすよ。あたしはこれでも、仲間意識が強いんす」


『創り者』の心は弱い。

 群れなければ、あっさりとその自我は崩壊してしまう。故に、彼らは他者に依存する。

 その依存心は、あまりにも強い。


「そんなあたしに、よくもミロンさんを傷付けさせたな!」


 幾ら助ける為とはいえ、エレノアはミロンの肉体をズタズタに引き裂いた。

 それを行わせたアルルに対して、エレノアは怒りを覚えずには居られない。


 それに対して、アルルは呆れたように表情を歪める。


「随分勝手だな。お前が勝手に斬り裂いたというのに」


「勝手じゃない『創り者』がいるんすか?」


 エレノアは怒っていた。けれども、プロとして冷静な部分も存在している。

 我武者羅に攻撃しても、勝ち目はない。敵の能力とは、そういうタイプのものだ。であれば、どうするか。


 やることは変わらない。持久戦に持ち込む。


 と、そう決意を新たにしたときであった。

 エレノアの背後から、ネリーの悲痛とも言える叫びが奏でられた。


「エレノア! 兄様が……起きないわ」


「そんな、馬鹿な!?」


 慌てて振り返ろうとしたところ、前方でアルルが吠えた。

 ナイフを片手に、眼を見張る程の速度で駆け始めた。エレノアが足止めのつもりで閃光を瞬かせるが、一切が防がれることすらもない。


 エレノアは前に出るしかなくなった。光の輪を手に収束させて、アルルへと襲い掛かる。


 光の輪による攻撃は、けれども無効化される。

 エレノア目掛けて、アルルの手が伸ばされる。


「くっ!」


 触れられれば終わる。故に、エレノアは必死にその手を避ける。

 だが、距離を取ることはできない。

 そのようなことをすれば、後ろのミロンたちに攻撃が及んでしまう。


 その場で、首の動きだけで攻撃をかわし、流れるような動作で右手の光輪を振るう。


 敵はやはり防御もしない。

 舌打ちを漏らしながら、エレノアは攻防に意識を割く。敵の攻撃を避け、注目を引きつける為だけに攻撃を返す。


 目にも留まらぬ高速の攻防が行われる。

 エレノアは生命力によって、自身の肉体を強化して、時には『操作(スポールト・ザカース)』を併用して、回避と攻撃を行う。


 他方で、アルルは回避を行わずに、一方的に攻撃を繰り返す。


 単純な格闘では、エレノアの方が優れていた。だが、やがて、その時は訪れた。


「見切ったぞ」


 アルルの指が、微かにエレノアに触れた。それだけで能力が発動され、エレノアは命を奪われる。


 アルルはただの死体となったエレノアの肉体に、素早くナイフを入れる。

 エレノアの肉体は無抵抗で、斬り刻まれた。


「やめなさい」


 ミロンの身体を必死に揺すっていたネリーであったが、流石に見過ごせずに髪を振るう。

 けれども、その全てが無効化されてしまう。


 エレノアは簡単のは壊れない。

 最後の一欠片になろうとも、生命力を消費すれば元通りである。


 ネリーもそれを知っているからこそ、エレノアに任せていたのだ。

 だが、限度はある。


 エレノアの肉体がバラバラに刻まれてしまう。


 直後、アルルが跳ぶ。

 跳躍によって、一息でネリーの元にやってくる。ネリーは髪の壁を作るが、魔力供給を断たれてしまう。


「兄様。起きて」


 ミロンを抱えながら、ネリーは背後へと跳躍した。

 後ろに飛びつつも、髪での攻撃は止めない。


 無数の鞭がしなり、アルルの肉体を打ち付ける。


「無駄だ!」


 髪の猛攻を凌ぎ、アルルが現れる。

 そして、とうとうその指がネリーへと触れてしまう。


 ネリーが崩れ落ち、抱えられていたミロンがゴロゴロと地面を転がる。

 命を奪われたネリーは、心配することもなく、安らかに瞳を閉じていた。


 アルルがナイフをネリーへと入れていく。

 ネリーの艶やかな髪が引き裂かれ、毛穴一つ見えることのない肌が割かれていく。


「見えるぞ。ネリー・ナイトラウ。やはり、美しいな。神々の死体(ホラーチャーム)を奪う前に、遊びたかったよ。だが、俺はネクロフィリアじゃねぇ」


 と言いつつも、アルルのナイフはネリーの服を斬り裂いた。

 胸元の衣服が斬り裂かれ、下着が見える。


 アルルは構わず、そのブラに手を掛けると、力尽くで引き千切った。


「俺はお前たちを救ってやるんだ。これくらいの報酬があっても、構わないよなあ!?」


 アルルの眼球がギョロリと動き、下半身へと目が行った。


 何が行われようとしているのかは、言うまでもない。


「ちっ。鬱陶しいな」


 アルルの眼前に、電撃が舞った。

 無効化できるが、目障りであった。何よりも、この電撃は、未だに花火が生きており、尚且つ仲間への援護を行う余裕があることを意味している。


「見損なったぞ。まだ倒せてないのか、先輩方。大したことないな」


 そう言って、アルルはネリーのスカートへと手を掛けた。


 この時、アルルは十分に警戒していた。

 エレノアが回復できるのはわかっている。今回復して、攻撃を仕掛けて来ないのは、アルルが油断していないからだ。


 ネリーの肉体を弄び、一瞬でも気を抜けばエレノアは容赦なく襲い掛かってくることだろう。


 けれども、そこまでであった。

 アルルは、ミロンが眼中になかった。


 故に、彼は見逃した。

 ミロンの指が、小さく痙攣したことを。

 ミロンの髪が徐々に伸びていることを。

 白の混じった金髪が、漆黒に汚れていくことを。


 彼の瞳の光がドス黒い血液のように爛々と輝き出したことを。


 そして、彼の唇が三日月のように、醜く裂かれたことを。

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