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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
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一人とエレノア

 エレノアは一人、敵と戦闘を行っていた。


 彼女の能力の前では、多くの雑魚は雑魚とすらならない。エレノアは周囲の敵の生命力を奪い、糧とする。


 それ故に、エレノアは敵が増えれば増えるほど、強くなっていくのであった。


 但し、勿論、例外もある。


 生命力を奪っても神々の死体(ホラーチャーム)持ちは止まらない。


 魔力源が二つある、とでも言うのだろうか。パーツの持ち主と神。


 二種類の魔力と生命力が、エレノアの能力を阻害する。


 能力持ちからは、生命力が遠隔で奪えないのだ。

 また、生命力を奪っている最中は、それ以外の行動ができない。


 能力持ちは、嫌でも素の力で相対せねばならない。


「欲しい! 欲しい! 欲しい!」


「煩いっすね。あたしは、ミロンさんくらいの草食系男子の方が好みなんすけど」


 ゴーグルで瞳を覆い隠し、目の前の『壊れ者』と向き合う。

 手には、光の輪が生まれていた。


 生命力を攻撃力へと変換したのである。


「三人分、ってところっすかね」


「欲しい、女が、欲しい!」


 目の前の敵の容姿は、実に平凡であった。生まれてすぐに壊れたタイプではないのだろう。


 エレノアは溜息を吐くと、地を蹴った。敵の間合いがどの程度かわからないので、先制攻撃で息の根を止めに行ったのだ。


 生命力を使用して強化された脚力は、あっという間にエレノアを敵の元へと運び込んだ。


 そして、エレノアが舞う。


 腕を広げながら、その場でくるりと回転したのだ。

 腕に嵌められた光の輪が僅かに広がり、エレノアの攻撃範囲を押し上げた。


 チャクラム、という投擲武器がある。

 刃の付いた、円板型の武器だ。


 エレノアの光輪は、それと類似していた。一つ、違う点があるとすれば、


「残念っす」


 威力だ。

 すーっうと、エレノアの光輪が『壊れ者』の肌を軽く撫でる。

 まったく力の入っていない、実に優美な動き。けれども、その一撃は、必殺の一撃であった。


『壊れ者』の腕が綺麗に両断されていた。

 腕が、落ちたのだ。


「欲しがりさん。あたしがあんたに、痛みを上げるっすよ」


 続いて、エレノアは足を振り上げる。無論、その足にも、光の輪が嵌められている。輪が『壊れ者』の頬に掠った。


 それだけで、『壊れ者』の顔面に亀裂が生じた。


 だが、顔面を真っ二つに斬り裂かれても尚、敵は動きを止めない。

 これこそが『壊れ者』の強さである。


『壊れ者』の手が、エレノアに触れた。

 そして神々の死体(ホラーチャーム)が起動した。


 二人同時に、である。


『壊れ者』は全身を光の輪により刻まれて、エレノアは敵の能力によって老化(・・)させられていた。


 目を剥き、エレノアは背後へと飛び退く。生憎と鏡を所持する程の女子力を持ち合わせていなかったので、確認はできない。


 だが、顔を触り、理解した。


「あたしの……美肌が」


 僅かに、乾いているような気がした。

 微かに、皺があるような気がした。


 最も年齢がダイレクトに現れるのは、目尻だという。そこに指を当てると、普段よりも皮膚が薄い。


「あああああああああ!」


 エレノアは頭を抱え、そして、戦地だというのにその場で膝を抱えた。


「油断したっす、油断したっす! まさか

 敵がテクス系だとは……ぅぅ。ミロンさんに嫌われちゃうっす。ただでさえ、あたしは顔良くないのに」


 エレノアは涙目で、うるうると瞳を湿らせる。


 一方で、身体を刻まれた『壊れ者』は、まだ動いていた。

 皮一枚、繋がっているかどうかも怪しい肉体が、エレノアを更に老化させようと迫ってくる。


「老け顔。もうあたしは……生きてる価値が。あれ? そっか」


 と、エレノアは立ち上がり、自分に対して光の輪を使用した。首が飛び、肉体がどんどん細切れになっていく。


 その様子を『壊れ者』は見ていた。いや、見ることしかできなかったのだ。


 圧倒されていた訳ではない。普通の『壊れ者』は、そのような思考を持たない。

 その身体は、花火の『天人の喝采(ルベル・アルム)』による電撃で停止していただけである。


 花火は現在も、定期的に能力を放ち、『創り者』をサポートしていた。

 アルルの相手をしながら。


 やがて。

 自ら切断した筈のエレノアの頭が生え変わった。


「あたし、回復できるんでした」


 新たに生え変わった頭は、元通り、若いままであった。一度切り落とし、頭の加齢をなかったことにしたのだ。


 そして、元通りに回復した。


「焦ったっす。壊れるところでしたよ。ということで……消えてください」


 十人分の生命力を総動員して、エレノアは腕の光を巨大化させた。

 それは一瞬だった。


 エレノアの光が巨大化したかと思うと、その直後には『壊れ者』の残骸が風に流されていたのだ。


「最初からこうしとけば良かったんすよ。まったく、雑魚相手に生命を三十も消耗しちゃったっすわ」


 さて、とエレノアがゴーグルを外す。

 それから顎に手を当てて、ゆっくりと思考する。


「意識のある『壊れ者』は馬鹿じゃないっす。だとすれば、この襲撃には勝てる自信があったということ」


 エレノアは知っている。

 一度組んだからこそ、理解している。


 霧島花火は数では殺せない、と。


「敵には花火さんを殺す算段がある。もしくは、花火さんクラスの敵が複数いると考えるべきっすね」


 花火と肩を並べる敵の存在など、常識ではあり得ない。けれども、ここはそういう想定の元に動く。


「だとすれば、門から逃げるのは愚策っすか。敵が張っていない訳がない。であれば……」


 エレノアは壁を駆け上がり、第二ドームから逃げ去ることを決意した。


「ミロンさんたち、大丈夫っすかね」


 ふと、手の平に痛みを感じた。見てみると、そこには自身の爪が突き立っていた。

 血が滴っている。


「わかってるっすよ、あたし」


 本当は、命を懸けてでも、ミロンたちを救出に行きたい。ミロンたちの姿を是が非でも確認したい。


 このままではミロンたちを失ってしまいそうで、壊れそうな程に怖いのだ。

 だけれども、助けには行けない。


 何故ならば、エレノアには彼らの居場所がわからないからだ。


捕食の業(リリア・マーゲン)

 生命力を操る能力。


 度々この力には救われてきたが、今は探知系の能力が欲しくて堪らなかった。


「あたしに今できることは、生き残って、次こそはミロンさんたちの隣で、彼らを守ること」


 仲間を守れなかった。

 次こそは、守る。と、エレノアはそれだけを心の支えに、逃走を開始した。

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